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第一章
15見舞い
しおりを挟む学校を三日休むことになったが既に体調は良くて、ゆっくりした時間を過ごしていた。
「綺麗ね」
「はい、こちらはクレッセント家から」
「は?」
何でクレッセント家からお見舞いの品が届くの?
「こちらは…」
「殿下…」
王家の紋章が入った手紙に花束とお菓子だ。
「頭が痛いわ」
「お嬢様、大丈夫ですか」
「大丈夫よ」
婚約が白紙になった事は既に広まっているだろう。
そうなれば私は無関係になるのだけどクラスが同じなので全く関わる事はない。
そうよ、私は関わる事はない。
きっと社交辞令何だからと言い聞かせるも。
「私にお客様?」
「はい」
何で私が邸にいる事を知ったのかしら?
予定では三日間病院で入院すると学園に報告している。
退院が少し早くなった情報は一部の人しか知らないのだけど。
「クレインざばぁ!」
「ひぃ!」
泣きながら飛びついて来たのはキャンベルさんだった。
「すいまない、キャサリン嬢」
「フィルベルト様」
泣きながらぐちゃぐちゃでしがみ付く彼女。
「これはどういう事でしょう」
「君があの後病院に運ばれずっと泣いて病院で籠城し始めて…」
「籠城」
何やってんのぉ!
ヒロインでしょ?
籠城って。
前々前世でそんなイベントはあったかしら?
「わだじがぁ…魔力上手ぐ…えっぐ」
「ようするに、君をちゃんと光魔法で守れず顔に傷を作り、尚且つ学園で晒し物になった事に責任を感じているらしい」
この状況で何で解るのかしら?
読心術でも習得しているのかと思ってしまうけどそんなスキルはないはずだわ。
「あんまり泣くので、このままでは魔力を暴走させかねない…勢い余ってジュレイド侯爵令嬢に殴り込無勢いだったんだ」
「だって…えっぐ」
「キャンベルさん」
頭が痛い。
乙女ゲームのヒロインが鼻水を流すって、千年の恋も冷めてしまうわ。
「そこにお座りなさい!お座りよ!」
「おっ…お嬢様。犬ではないんですよ?」
「この際はっきり調教…いいえ、教育が必要だわ」
頭が痛い。
これも悪夢だと思いたいけど、そう言ってられないわ。
「貴女、授業をサボったのですか」
「授業が終わってからです」
「馬車でですか?」
「歩いて…」
ああ、眩暈がするわ。
何でこうも誤差があるのかしら?
前世では王太子殿下と恋に落ちたんじゃないの?
シナリオでは真面目で一生懸命な愛されるヒロインだったはず。
とりあえず軌道修正をしなくてはならない。
そう意気込んだ私だったけどこの時既にゲームでもなく前世でもないヒロインとなっているのに気づかなかった。
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