上 下
19 / 136
第一章

16ヒロイン失格

しおりを挟む



何所の世界に鼻水を誑して騒ぐヒロインがいるだろうか。
別に二十四時間ヒロインで色とは岩間いけど少しは周りの目を気にする事が出来ないのか。


「えっぐ、えっぐ…」

「いい加減泣き止んでくださる?私は一応病人なんですが」

「じびばぜっ…どうやって食べていいか解りません」


折角見舞いに来たのだからと両親は快く彼女を招き、お茶をする事になったのだけど。

「手で食べればいいのよ」

「こんな具が沢山のサンドイッチ食べた事ありません。外していいですか?」

「頭が痛いわ」


そうだ。
この世界の平民はいわば中世のヨーロッパ時代と考えるとパンは簡単なもの。
しかもサンドイッチは具はほとんど入っていないし。


「パンが…」

「そんな強く握るから」

「そうか、平民は黒パンだからな」

固いパンしか口にする事はない。
下級貴族でもパンは胡桃が入った満腹感のあるパンが多い。

彼等にとって食事はお腹が膨れるのが第一で味なんて二の次なのだから。


前々前世ではこう言ったサンドイッチは普通に食べていたけど。
ゲームではヒロインはマナーに関してはどうしていたのだろうか?

前世ではマナーに関して咎められていたわね。


もしかして教えてくれた人がいなかったとか。
高位貴族に囲まれていたのは、彼女自身も何も知らなくて、マナーを教える為に厳選された人材を傍につけていたとしたら?


「キャンベルさん、サンドイッチはフォークとナイフを使えば多少形が崩れても問題ありません」

「え?」

「特に外でこういったアフタヌーンティーを食べる時は周りの目もあるから気になさい」


このままだと色んな意味でも問題だわ。
マナーが悪ければSクラスにいる事も難しくなるし、何より光の魔力を持つ彼女の立場が悪くなれば王家に恥をかかせることになる。


「女性ならばマナーは覚えていて損はありません。貴女が王都に残らないのであっても、今後役に立つでしょう」

「はっ…はい」


…っていうか何で私がヒロインにマナー指導をしているの?
私にとって彼女は敵なのでは?


後の祭りだけど。


「くっ…くくっ!」

「何です?」


さっきから私をじっと見ながら笑っていらっしゃる。


「いや、楽しくてな」

「何をどうしたら楽しいのです」


楽しいって、何をどう見たら楽しいのか。


「思えばキャサリン嬢は最初から世話好きだったな」

「好きなわけではありません」


彼女に声をかけたのは成り行きだし、後はクラスメイトとしての社交辞令だっただけなのに。


しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 だが夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する

紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。 私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。 その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。 完結済み。毎日00:00に更新予定です。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。

coco
恋愛
我儘だけど、皆に愛される天使の様に愛らしい妹。 そんな彼女に、ついに婚約者まで奪われてしまった私は、神に祈りを捧げた─。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

お前のせいで不幸になったと姉が乗り込んできました、ご自分から彼を奪っておいて何なの?

coco
恋愛
お前のせいで不幸になった、責任取りなさいと、姉が押しかけてきました。 ご自分から彼を奪っておいて、一体何なの─?

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです

珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。 令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。

処理中です...