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184指名手配犯~エセルバートside③
しおりを挟む僕の周りを囲むのは強面の男達だった。
「女子供を家の中に入れろ!指名手配犯のエセルバートだ」
「は?」
「エセルバート・カスティージョだ!」
僕の家名は随分前に捨てたはずだ。
なのに何故の僕の家名を知っているんだ!
「よぉ、エセルバート。俺の顔を覚えているか?」
「誰だ?」
大柄の男が僕を睨みつけ殺意を向けていたが僕は身に覚えがまるでなかった。
「覚えていないか?そうだよな」
「ぐぁ!」
いきなり僕の胸倉を掴み、身長差から僕の足は浮いた。
何で初対面の僕に胸倉を掴み殴りつけた。
「俺だ。お前に恋人を奪われたビョンルンだよ」
「あっが…」
「お前が強引な真似をしてテレアと結婚して財産事持ち逃げしたおかげでテレアはあの後自殺したんだよ!お前の所為で!」
記憶になかったが、テレアという名前を聞いて思い出す。
しかし、僕は強引な真似をした覚えはない。
彼女だって望んでいたはずだ。
「酒に酔わせ、無理矢理あんな真似を…お前の所為で商会は潰れた。その後心無い噂で晒し物にあったんだよ!この詐欺師が!」
「兄さん!」
「近づくんじゃない!この男は妻を虐待し、姪を殺そうとして病院送りにしたとか。生後三か月の姪を焼き殺したんだって言うじゃないか」
違う。
焼き殺していないし、故意的じゃない。
虐待だってしていないのに何でそんな噂が下町まで出回っていたんだ!
「母親と姉は例の感染病の元凶と聞くよ。罪人となっても反省の色がないとか」
「何処までも最低な連中なんだ!ここで殺した方が良くないか?」
今ここで逃げないと確実に殺される。
「お前の所為でどれだけの人が…いやお前達家族の所為で数えきれない人間が傷ついたか思い知れ!」
違う違う!
悪いのはメリッサと母上だ。
男と寝て梅毒を感染させたのはアイツで、僕はここまで恨まれるような事は。
「あぁぁぁぁ!」
「逃がすな!」
嫌だ。
絶対こんな所で死にたくない。
僕は咄嗟に砂を掴んで男に目に投げた。
「うぁ!」
「兄さ…きゃあ!」
「来るな!一歩でも近づけば!」
その男の妹を人質に取り、ナイフを突きつける。
「この外道が!」
「何処まで最低な男なんだ」
僕が助かる為には仕方ない。
最初に僕を襲ったのはこの男だ。
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「兄さん!ダメよ…」
「黙れ!」
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傍にいた連中は怯えたのか馬を用意したので僕はその女を突き飛ばし馬に飛び乗った。
馬鹿な連中だ。
所詮は平民で小心者に過ぎないと笑いながらこの町から出て行った。
とにかく王都から離れなくては。
そうすればなんとかなるはずだと思っていた。
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