義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ

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174逃亡の果て~エセルバートside②

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知り合いだと解り安堵する孤児院の院長。
ここで援助を断ち切られれば今までの苦労のが水の泡になる。


だがもう大丈夫だ。


「命令だジョイル!今すぐ援助を…いや援助を増やせ!お前の収入なら問題ないだろ」


そうだ。
僕がこんなに苦労しているのだから。
援助ではなく今後は僕の仕事を手伝わせよう。


聞けば相当の大富豪だと聞いている。


頷くはずだと思った。


なのに――。


「これは恐喝ですか。院長、随分な友人を持たれましたな…この事はきっちり組合にも保護協会にも報告させていただきます。勿論貴方の事に関しても」


「何を言っている!」

「明らかな不正だけでなく最近噂になっているのですよ」


蔑んだ目、同時に憐れむような目を向けられる。
何故僕がそんな目を向けられなくてはならないんだ!



「不正の疑いのある孤児院に援助を打ち切ろうとしたらガラの悪い男に脅されたと。第三者の関係ない男に口を挟まれるのは気分の良い物ではありませんな。しかし私は武力で抑え込む事は好みません」


「ジョイル様!」

「この男は執行人から逃げた犯罪者…過去に数多の罪を犯した罪人ですぞ。罪人と付き合いのある慈善事業家だったとは」

「無礼だぞジョイル!貴様は何様だ」

僕はお前の主だろう?
今は違うと言えど十数年以上も世話をさせてやったのに。


その恩を返さないお言うのか!


「今すぐ取り消せ!過去の事は寛大な心で水に流してやると言っているんだ」

「それは被害者が加害者に言う言葉であり、加害者が被害者に言う言葉ではありませんな」


「何だと!」


これではまるでジョイルが被害者で僕が加害者だと言っているようではありませんか。


「ジョイル様…」

「残念です。ここまで人を見る目がなかったとは。この男はエセルバート・カスティージョです」

「なっ…あの極悪非道の重罪人ですか!」


誰がだ!
僕は極悪人になった覚えはない!


「既に貴方に何を言っても無駄ですな」

「待て!援助を…寄付を!」


「何処までも見下げ果てたのか。私はこんな男を育てる為に時間を無駄にしたのか…」


まるでゴミを見るような目だった。
この僕にそんな目を。


「ですが、アリア様にお会いできたことは神のご慈悲でした」

「何だと!」


「あの方は私の女神様です。今こうして堂々とお日様の下を歩き、この老いぼれを慕ってくださる。あれ程素晴らしい方はいないでしょう?そして旦那様も」


「…めろ」


「もう住む世界が違うのです」


「…や…め」


「あの方は」



「止めろ!」


僕の中で何かが音と立てて壊れた気がした。


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