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175逃亡の果て~エセルバートside③
しおりを挟む頭に血が上った僕は感情を抑えられなかった。
全てがおかしくなったのはあの女の所為だ。
それまで僕は完璧だったのに、貴族から平民に成り下がってしまった。
僕は何お悪くないのに。
一生懸命に頑張っていたんだ。
「ふざけるな!」
「ぐっ!」
「あの女の所為で僕は全てを失ったんだ!あの女は悪魔だ!疫病神だ」
お前は僕の使用人だったはずだ。
僕の世話係だった癖にあの女に騙されて!
「貴様は僕の使用人だろう!あの女に利用されてここまで馬鹿に去り下がったのか」
「私は貴方に仕えたのではありません。貴方は…貴方達かカスティージョは没落するべくしてああなったのです」
違う!
違う違う!
カスティージョ家が没落したのはあの女の。
アリアの所為だ。
「黙れ!」
僕はその場置かれていた畑道具を掴みジョイルを殴った。
「エセルバートさん!」
「きゃあああ!」
手にこびりつく血に、地面に倒れるジョイル。
「ジョイル様ぁ!」
その場に人が集まって来る。
「きゃああ!誰か!」
「ジョイル様‥なんて事を」
従者らしき男が僕を睨みつける。
「急いで警備を…院長!これはどういうことです」
「神父様…これは」
「ジョイル様になんて事を!最初からそのつもりだったのですか。私も一緒に始末すると」
「誤解です私は…この男がいきなりジョイル様を脅迫して金を出せと」
「なっ…僕に罪を擦り付ける気か!」
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「違う!僕は…」
この場をもみ消さないと。
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「はっ…はい」
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「何だって」
仲間が騒ぎを聞きつけて馬車で向かって来る。
「逃げるぞ!」
「だが…僕は!」
ここで逃げたら僕が悪いみたいじゃないか。
血を出しているが、たいした傷じゃない。
元々ジョイルは持病を持っていて、殴られた所為じゃない。
だから問題ないはずだ。
けれど僕の考えは甘かった。
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