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20健気な奥様~ジョイルside①
しおりを挟む由緒正しき家柄であるカスティージョ。
しかしそれは過去の栄光でしかない事を大奥様は理解されていない。
既にカスティージョ家は傾いている。
にもかかわらず贅沢な暮らしを辞められず自尊心の強すぎる大奥様とメリッサ様に私はどれだけ悩まされたか。
大旦那様も言葉を重ねる事を諦められ私達はどうしたものかと悩んでいいる最中、天使が舞い降りて来れられた。
それが奥様だった。
身分はそれ程高くはなくとも貴族として立派な考えを持ち領主としての自覚を持つ方だった。
大奥様がアリア様に目をつけたのは身分がそれ程高くないが、お金になる土地を多く持っている事や自分の言いなりになる嫁が欲しかったのだろう。
下手に身分が高ければ実家が出て来る。
私はこの縁談に迷いを感じた。
跡継ぎのエセルバート様は良く言えば優しいが悪いえば優柔不断。
あのお二人に強く出れず決断力が欠けており、勢いがない。
しかし私はアリア様に初めて会った時に根拠はなかったがこの方ならなばカスティージョ家を変えてくださると思った。
だが甘かった。
自尊心が高い大奥様は事あるごとにアリア様につらく当たり、カスティージョ家に出入りするギルドや商人はアリア様に好感を持つと嫉妬心でこれ見よがしに作法を指摘し、お茶会や舞踏会では雑用を言いつけ招待客からも使用人のように扱われる日々に私は申し訳なくなった。
大奥様に何度も申し上げても聞いてくださらず、家令でありながら申し訳なかった。
「ジョイル、どうしたんですか?」
「アリア様…」
結婚しても尚も冷遇されるアリア様に申し訳なくて、自分の非力が情けなかった。
なのにアリア様は――…
「ジョイル、私の所為で怒られたんですね」
「違います!」
「私が不甲斐ないからジョイルもジョナも責められてごめんなさい」
何一つ悪くないというのに、ご自分を責め。
大奥様とメリッサ様から理不尽な扱いを受けても泣き言も言われない。
「アリア様はお辛くないのですか…こんな」
責めてくれた方が楽になれると思った。
罵倒を浴びせてくれれば。
「嫁であるのだから当然です。お姑様に仕えるのは皆同じです」
「アリア様」
私はなんて浅はかなのだろうか。
少しでも楽な方に逃げようとした自分が恥ずかしかった。
「私が一人前になったらジョイルも楽をさせてあげます。それで娘さんやお孫さんをお邸に呼んでもっと楽をしてもらいますから!」
「ありがとうございます」
覚えてくださっていたのか。
私が娘夫婦と孫を気にかけている事を。
「そうだ、ジョイルのお孫さんに肌着を作ったんです。後、フルーツを実家に頼んで送って貰えるようにお願いしたんです。きっと娘さんも元気になりますよ」
泣きたくなった。
ここまで気遣ってくださる主人がおられるだろうか。
優しいアリア様。
だからこそ私は…
あの二人が許せなかった。
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