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21健気な奥様~ジョイルside②
しおりを挟むアリア様が王都に不慣れなの知っていてわざと馬鹿にして、メリッサ様は出来の悪い義姉だと面白おかしく言いふらす日々に私は何もできなかった。
せめてこれ以上噂が広がらないようにすることと。
領地代行をしていたのでマナーは最低限しか学べなかったと告げて悪意をこれ以上増やさないように奔走した。
使用人である私には限界があったある日。
「アリア様に家庭教師をですか?」
「ええ、マナーがまるでできていないからマダムリゼにお願いして」
メリッサ様の思惑は解っている。
国一番の厳しい事で有名な彼女を呼んで更にアリア様を傷つける魂胆なのだろう。
メリッサ様の方が優れている教えて自信を無くさせるつもりだろうが、私はマダムリゼにあらかじめアリア様の事をお伝えした。
「成程、そう言う事ですか」
「マダムリゼ、若奥様は…」
「ですが私は特別扱いはたしませんわ」
「えっ…」
「どんな生徒も平等に接するのがポリシーです」
その言葉に不安を抱くも、マダムリゼはアリア様に対しても厳しかったが愛情を持って接してくださった。
同時に…
「メリッサ様、何ですその歩き方は。背筋をお伸ばして」
「えっ…きゃあ!」
「アリア様は三日で取得しました。貴女様は十年以上マナーレッスンを受けているのですからできて当然ですわ」
同じようにマナーレッスンを受けるも、アリア様は必死でくらいつき一度失敗しても次のレッスンには完璧にこなしていた。
対するメリッサ様はどうだろうか。
やる気がない事でマダムリゼは呆れていた。
「アリア様は、ちゃんとできていますわよ」
「くっ…」
普段のマナーレッスンの先生はメリッサ様に甘い言葉ばかり吐いて、厳しい事は言わなかった。
だからだろう。
どんな身分の令嬢でも平等に接するマダムリゼが気に入らなかったのか。
「マダムリゼ、領地に帰られるとは…」
「申し訳ありません」
もしやメリッサ様と大奥様が何かしたのか。
「お力になれず申し訳ありません」
「そんな…」
「ですが、ご安心くださいませ。アリア様は素晴らしい奥方になります。そう確信がありますわ」
マダムリゼは人を見る確かな目を持っておられる。
「ジョイル様、大事にしてくださいませ。あの方はそんじょそこらの奥様とは違います。遠くない未来…あの方は大変身をするでしょう」
「はい…はい」
「近くで拝見できないのが残念ですわ」
王宮家庭教師を務め数多の令嬢を淑女に育て上げた彼女の言葉は信頼できる。
だが…
私が巻き込まなければ王都を去る事もなかったというのに。
せめてもの償いとして私は彼女の実家に援助をした。
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ならば負債を抱えた借金をせめてと思ったのだが、不幸が数珠つなぎに続いてしまった。
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その窮地を救われたのがアリア様だった。
何所で噂を聞きつけたのか解らないが無償で大量の薬草を寄付したのだ。
そのおかげでマダムリゼとその家族は救われたが、アリア様はその功績にまるで気づかなかった。
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