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第四章幸福と不幸は紙一重

8.敵は外に

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その頃カスメリア島では、重いため息を付くアーデルハイドが困り果てていた。


「困ったわね」

「どうしたんだハイジ」

大好きなゴーヤジュースもあまり飲んでいない程深刻と見えた。


「手紙が今月も何通も来ているのだけど」

「ん?オルランド王国からか?」

「ええ…」

ただの手紙ならまだいいが、差出人は貴族だった。


「オルランド王国のジェンガ伯爵?あの典型的な男尊女卑の男爵上がりの馬鹿貴族か?」

「ええ、その馬鹿貴族からの手紙…内容は最悪よ」


手紙を見せるとフレディーは即座に破り捨てる。

「この馬鹿伯爵、お前を何だと思ってんだ!」

「内容は最低よね?最初は私のご機嫌取りをしながらも私の事業の批難と無駄。そんなお金があるならオルランド王国に寄付をして有意義に使えですって?」

「何様だ」


差し出された手紙には、アーデルハイドが平民上がりに過ぎないのに傲慢にも女が事業をして、領主でもないのに偉そうにしている事への批判と、医師の筆頭が女性では頼りないのにで、オルランド王国の男性医師を筆頭と迎えることの助言と、オルランド王国への寄付を頼みたいと書かれていた。


「何でお前がオルランド王国の馬鹿に寄付をしないとダメなんだ!オルランド王国の女王と祖父さんは懇意な関係であるが、俺達には国同士の関りはないだろうが!」

「ええ、私個人としてもジェリー陛下には敬意を持っているわ。美しく聡明で素晴らしい人ですもの。けど貴族派の狸共は別よ…正直ぶん殴りたいわ」


「ガウ!」

「わぁ!いたのか!」

お茶を運びながら鳴き声を上げるちいに驚く。

「あら?もう起きたの?」

「ガウ!」

「ありがとう。蜂蜜を持ってきてくれたのね」


蜂蜜入りの紅茶を入れてくれたちいにお礼を言うアーデルハイドは口直しに飲むと心が癒された。


「とにかく、こんな無茶な要求を飲むことはできないわ」

「ああ…ん?もう一通あるぞ」

「どうせ似たような手紙でしょ?」


一応確認した方が良いと思ったのだが…


ビリビリ!!


「えっ?フレディー?」

「ただの悪戯だったぞ。心配するな」

「そっ、そう?」

「それより最近働き詰めだっただろ?今日ぐらいはゆっくり休め。明日は休日だしな」

手紙の山をすべて燃やしながら、アーデルハイドを気遣いながら休ませた。


「ガウ…」

「チー、オルランドの馬鹿達がハイジを愛人にしようとしているそうだ」

「グルル…」

「そうだ。なんという屈辱だ。俺の嫁さんを何だと思っているんだ。許せない」

「ガウ!」


普段は喧嘩ばかりしている二人だがアーデルハイドに敵意を向ける者や傷つける者に関しては協力していた。


「島の警備を強化するか…なんか嫌な予感がするし」

「ギャウ!」

「ああ、嫌な予感がするんだ…ものすごく」

神レベルの感性を持つ、フレディーは危険な風を感じていたのだった。


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