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第二章南の島開拓
17.原因
しおりを挟むこうなった原因はグフタスとアイシャにあることを本人達は知る由もない。
きっかけは所有している鉱山からいくつかの宝石が取れることを知ったグフタスは、以前から旧知の仲である友人に頼み込みギルドを派遣してもらった。
グフタスは最小限の予算で済むようにした準備も真面にせず、現場監督も用意しなかった。
以前からアーデルハイドが計画していた地下鉄の計画をグフタスは乗っ取る形で自分が代わりに責任者となったが、当時、アーデルハイドと共に調査をしていた調査隊は念入りに調査をしてからギルドを派遣すべきだと告げた。
しかし…
「必要ないわ」
「しかし、山では土砂崩れが頻繁に起こります。万一の事が…」
「だから?」
「は?」
アイシャはだからなんなのだと言うのかと突っぱねた。
「ギルドの代わりなんていくらでもいるわ。土木作業で事故なんて普通にあるじゃない?そこで生き埋めになるなんて運がないだけでしょ?これは命令よ…とっととしないさい」
「そんな」
「既に契約は結んであるわ。無能は人間は馬車馬のように何も考えず働けばいいのよ」
身分の低い人間を道具としてしか考えないアイシャ。
それを咎めることなく同意し、罵倒する父親にギルドは言葉を失う。
しかし作業を辞めることも許されず、彼らは重労働を強いられる。
「ちょっと、まだこの作業は進んでいないの!」
「そう申されましても…」
「奴隷の癖に口越えたするんじゃないわよ!」
鞭でギルドを叩きながら、そのまま去っていく。
そんなやり取りを見てギルドやアレスタ商会の職人は憎悪を抱きながらも作業を進めるととんでもない会話が聞こえた。
「無能が口答えするんじゃないわ。本当にお姉様と同じように無能ね…こんな出来損ないを長年雇っているなんて。愚図で出来損ないで才能はないんだから」
好き放題を言うアイシャとその隣で寄り添う男はさらに続ける。
「まったくだ、あんなのが侯爵家の血筋を受け継いでいるとは末代までの恥だ。やはり君こそが選ばれた存在」
「当然ですわ。王家の方々もお喜びのはずですわ…あんな地味で冴えない女なんて追放されて喜んでいるはですもの」
「ああ、島流しにして正解だったな。自害でもしてくれれば楽だったが…国内で死なれても迷惑だ」
下品な笑いをするモーギュストの言葉を聞き、彼等の怒りはこれ以上ないほど強くなった。
噂では妹を苛め断罪された後に、裏では身分が低い貴族令嬢にさんざん嫌がらせをしたり、侯爵家の財産を好きに使ったりしていたという噂が流されていたが、すべてでっち上げだと解るのに時間はかからなかった。
姉を犠牲にして罪悪感の欠片もない人の皮を被った悪魔に嫌悪感を抱いた彼らは、表向きは大人しくしながら二人の悪事を調べていた。
そして事件は起きた。
土木作業をしていた職人が土砂崩れに巻き込まれてしまった。
その所為で地下に閉じ込められ、助けもないまま彼らは生死も解らない状態になったのだった。
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