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第二章南の島開拓

16.小さな綻び

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どこの国でも不作の季節がある。
特に天災の影響で食料が不足た時は、大問題となっていた。


王都では商人に貴族が食料を大量に買い占め、その食料を倍の値段で売ったりすることも少なくない。

他にも隣国で大きな戦争や、はやり病で食料の不足になった時も、これみよがしに食料を見せつけ商売をする悪徳商人も存在する。


今の時期は悪徳商人が動きやすい時期でもあった。
現在イングリッド王国では東北地方で作物の不作が続いていた。

それに輪をかけ、今年は雨が少なかったことや、観光客も少なかったので赤字の一途をだどっていた。

しかし昨年までは不作の時期を見越していたが、その人物が良くなったことで大打撃を受けていた。

あげくの果て、今まで他国とも貿易をしていた領地だったが、いきなり契約を打ち切ると宣告を受けた。


「どういうことだ…我が侯爵家と契約を打ち切りたいとは!」


ランドール侯爵家にて、大量の手紙が送られ。

現在当主代理である、グフタス・ランドールは声を荒げていた。


手紙には、今月で契約を切りたいという商人に、これまでラン―ドール家の特産物で貿易をしていた他国から一切の貿易を絶つ手紙が送られていた。

手紙には、アーデルハイドが当主とならないのであれば契約は打ち切らせてほしいとの手紙が書かれていた。


「馬鹿な…いきなりそんな!」

これまで懇意な関係だった商会がこんなあっさりと裏切るなんてありえないと思ったが、アレスタ商会はアーデルハイドの母が立ち上げ、その後はアーデルハイドが引き継いできた。

レイジが手助けをしていたとは言えど、アーデルハイドが主となって商会を動かしていた。

侯爵家のバックアップがあるから上手くいったに過ぎないと思っていたグフタスだったが、大きな間違いだった。


アーデルハイドは商会とかかわりのあるお得意様には、細やかな気配りを行い。
ドレスを製作する職人達にも気配りを忘れずにいい働きをしてもらうように心がけていたが、グフタスや義母のマイラは彼らを消耗品のように扱っていた。

彼らの間に信頼関係はなく。
何より、アーデルハイドの母が直接スカウトした人材でもある。


アーデルハイドとも親しくしていたし、彼等も娘のように思っていた。

なのに、今回の騒動を聞いて彼らは激怒した。
アーデルハイドの無実を主張しようとするも、相手は侯爵家故に、逆らえば解雇されたり、職人として働けないように脅しをかけられたりもした。

特にアーデルハイドと親しかった者はモーギュストに、睨まれる羽目になりひどい仕打ちを受けたりもした。

アーデルハイドが大切にしていた物を土足で踏み込み踏み荒らす行為を平然とするモーギュストに、強欲で欲しいものはどんな手段も使うアイシャを見て彼らは直ぐに解った。


アーデルハイドは嵌められたのだ。
首謀者はこの二人かもしれないが、両親も加担している。

そう思うと許せなかったが、このまま辞めて泣き寝入りをしたくないので復讐を胸に誓った。


そして現在、古くからの付き合いのある取引先にそれとなく情報を流して契約を打ち切るように動いていたのだった。


「何故だ…何故」

頭を抱えながら不良品の返品を叩きつけられ多額の借金を抱える羽目になったグフタスを職人達は冷めた目で見ていたが、こんなのは序の口だった。


彼らの復讐は今始まったばかりだった。

そしてさらに悪いことは続く。

「旦那様、大変です!西の領地の鉱山で土砂崩れが…!」

「なんだと!」

「土木作業をしていた者達が大けがを負い、火元責任者の旦那様に責任を問うと仰せられてます!」


多額の借金はさらに膨れ上がり、グフタスはさらなる窮地に追い込まれていた。

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