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第二章南の島開拓
4.お届け物
しおりを挟む貴族と違って平民の結婚はとても簡単で手続きもすぐに終わった。
フレディーは既に平民として生きているし、追放の身にったアーデルハイドも貴族籍から抜けている。
「後は後見人と、カルフェオン国の国民である証明だけど」
「男爵に頼めば一日で終わるだろう」
結婚式は島の住民を呼んで派手に行う事になる。
「お祭り好きな男爵が乗らないわけないね…後は、暇人が多いから」
「娯楽が少ない島だからな」
平和過ぎて刺激が足りないので、結婚式等は島の住民が揃ってお祝いをするのが恒例だった。
「結婚式前に報告をしたい方がいます」
「ん?誰だ?」
まず親と妹はないだろうと二人は思った。
一緒になって追放したのだから、野垂れ死んでもいいと思っているだろう。
「学友と王太子殿下に両陛下です」
「「は?」」
二人は一瞬だけ石になった。
「今なんて言ったんだい?」
「正確には両陛下と姪の方と王太子殿下です」
「ちょっと待て、どういう関係だ」
フレディーは焦りだす。
「私の幼馴染が王妃殿下の姪に当たります。王太子殿下とは幼馴染でして」
「王族と懇意だったのか。ならば余計に解らないな」
「その屑婚約者は、自殺願望でもあるのか?」
常識知らずにしても酷すぎる。
王族と懇意な令嬢を侮辱し、勝手に国外追放したとなれば、その家はどうなるか明らかだった。
「でも、両陛下は何もしてくださらなかったのかい?」
「いいえ、王族の皆様は国を開け、宰相様もいらっしゃらなかったのです」
「もしや、それを狙ったのか」
「恐らく」
後は、貴族派にそそのかされたのもある。
王族から信頼のあるアーデルハイドは邪魔な存在だったし、神殿側の穏健派からも支持を貰っていたので排除したかったのは解っていた。
「まぁ、この度の失態で敵対する派閥は共倒れになってくださればいいのですが」
「はは…敵にすると厄介だね」
「ああ」
普段は警戒心が緩く、のんびりしているアーデルハイドを知る二人からすれば驚くのだが。
これでも、社交界で生き抜いてきたのだから当然だった。
「その話はさて置きとして、心配をかけていますし」
「そりゃね…」
「一応手紙は、匿名希望で送ったのですが…乳母と侍女にも知らせてはいるのですけど」
「「え?」」
後から荷物を送って欲しいとも手紙に書いている。
住所も知らせているが、隣国に入る際は海を渡らなくてはいけないので時間もかかる。
旅客船では時間がかかるし、罪人を乗せる専用の船は運搬船を利用しない限りは数日かかってしまうのだった。
「住所って言うけどね…ここは普通の郵便が届くのにかなり時間がかかるんだよ」
「宅配便もカモメ便以外は二週間はかかるぞ」
転移魔法を使うことも可能だが、余程の魔力が強い人間でないと弾かれて海に真っ逆さまだった。
逆に魔力が強く精霊の加護を持つ術者ならば入る事ができるが、そんな人間はほとんどない。
いないのだが‥‥
「あっ、来ました」
「何?」
ふわりと羽が落ちて来る。
「鳥の羽…え?」
「クェ!」
窓から顔を出したのは宅急便の魔鳥・カモメだった。
「ご苦労様です」
「クエ!」
カモメ達は荷物を庭に置く。
「良かった。手紙は届いたみたいね」
「何で鴎便が…」
「私のお友達です。祖国にいたときはペリカンさんとも仲良しだったんです」
魔鳥の中でも体が大きく、カモメよりも早い速度でお届け物を届けてくれる。
通常の郵便よりも早いがお金がかかるし、特にペリカン達は好き嫌いが激しく、嫌った人間の届け物は一切しない程の潔癖症だった。
「昔、領地で罠にかかっているのを助けたんですけど。それ以降仲良くしてくれて」
「もう、何も聞かないでおくよ」
「ああ…」
犬と熊を間違えて拾って育てる程なので、今更考えるだけ無駄と思った。
「えーっと中は…あったわ?私のへそくり通帳!」
「へそくり…」
「後は、生活に必要な衣類もあるわ。流石ばぁやね!」
乳母が気を利かせ、生活に必要な物を厳選して送ってくれた。
「でも、何でドレス?手袋も軍手が良かったんだけど」
「それは受け取ってやりな…乳母の人を心底同情するよ」
きっと、乳母はアーデルハイドがこんな暮らしをしているとは思ってないだろう。
ステラ心底同情した。
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