27 / 111
第二章南の島開拓
4.お届け物
しおりを挟む貴族と違って平民の結婚はとても簡単で手続きもすぐに終わった。
フレディーは既に平民として生きているし、追放の身にったアーデルハイドも貴族籍から抜けている。
「後は後見人と、カルフェオン国の国民である証明だけど」
「男爵に頼めば一日で終わるだろう」
結婚式は島の住民を呼んで派手に行う事になる。
「お祭り好きな男爵が乗らないわけないね…後は、暇人が多いから」
「娯楽が少ない島だからな」
平和過ぎて刺激が足りないので、結婚式等は島の住民が揃ってお祝いをするのが恒例だった。
「結婚式前に報告をしたい方がいます」
「ん?誰だ?」
まず親と妹はないだろうと二人は思った。
一緒になって追放したのだから、野垂れ死んでもいいと思っているだろう。
「学友と王太子殿下に両陛下です」
「「は?」」
二人は一瞬だけ石になった。
「今なんて言ったんだい?」
「正確には両陛下と姪の方と王太子殿下です」
「ちょっと待て、どういう関係だ」
フレディーは焦りだす。
「私の幼馴染が王妃殿下の姪に当たります。王太子殿下とは幼馴染でして」
「王族と懇意だったのか。ならば余計に解らないな」
「その屑婚約者は、自殺願望でもあるのか?」
常識知らずにしても酷すぎる。
王族と懇意な令嬢を侮辱し、勝手に国外追放したとなれば、その家はどうなるか明らかだった。
「でも、両陛下は何もしてくださらなかったのかい?」
「いいえ、王族の皆様は国を開け、宰相様もいらっしゃらなかったのです」
「もしや、それを狙ったのか」
「恐らく」
後は、貴族派にそそのかされたのもある。
王族から信頼のあるアーデルハイドは邪魔な存在だったし、神殿側の穏健派からも支持を貰っていたので排除したかったのは解っていた。
「まぁ、この度の失態で敵対する派閥は共倒れになってくださればいいのですが」
「はは…敵にすると厄介だね」
「ああ」
普段は警戒心が緩く、のんびりしているアーデルハイドを知る二人からすれば驚くのだが。
これでも、社交界で生き抜いてきたのだから当然だった。
「その話はさて置きとして、心配をかけていますし」
「そりゃね…」
「一応手紙は、匿名希望で送ったのですが…乳母と侍女にも知らせてはいるのですけど」
「「え?」」
後から荷物を送って欲しいとも手紙に書いている。
住所も知らせているが、隣国に入る際は海を渡らなくてはいけないので時間もかかる。
旅客船では時間がかかるし、罪人を乗せる専用の船は運搬船を利用しない限りは数日かかってしまうのだった。
「住所って言うけどね…ここは普通の郵便が届くのにかなり時間がかかるんだよ」
「宅配便もカモメ便以外は二週間はかかるぞ」
転移魔法を使うことも可能だが、余程の魔力が強い人間でないと弾かれて海に真っ逆さまだった。
逆に魔力が強く精霊の加護を持つ術者ならば入る事ができるが、そんな人間はほとんどない。
いないのだが‥‥
「あっ、来ました」
「何?」
ふわりと羽が落ちて来る。
「鳥の羽…え?」
「クェ!」
窓から顔を出したのは宅急便の魔鳥・カモメだった。
「ご苦労様です」
「クエ!」
カモメ達は荷物を庭に置く。
「良かった。手紙は届いたみたいね」
「何で鴎便が…」
「私のお友達です。祖国にいたときはペリカンさんとも仲良しだったんです」
魔鳥の中でも体が大きく、カモメよりも早い速度でお届け物を届けてくれる。
通常の郵便よりも早いがお金がかかるし、特にペリカン達は好き嫌いが激しく、嫌った人間の届け物は一切しない程の潔癖症だった。
「昔、領地で罠にかかっているのを助けたんですけど。それ以降仲良くしてくれて」
「もう、何も聞かないでおくよ」
「ああ…」
犬と熊を間違えて拾って育てる程なので、今更考えるだけ無駄と思った。
「えーっと中は…あったわ?私のへそくり通帳!」
「へそくり…」
「後は、生活に必要な衣類もあるわ。流石ばぁやね!」
乳母が気を利かせ、生活に必要な物を厳選して送ってくれた。
「でも、何でドレス?手袋も軍手が良かったんだけど」
「それは受け取ってやりな…乳母の人を心底同情するよ」
きっと、乳母はアーデルハイドがこんな暮らしをしているとは思ってないだろう。
ステラ心底同情した。
78
お気に入りに追加
5,504
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
恋愛
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

【完結】元婚約者の次の婚約者は私の妹だそうです。ところでご存知ないでしょうが、妹は貴方の妹でもありますよ。
葉桜鹿乃
恋愛
あらぬ罪を着せられ婚約破棄を言い渡されたジュリア・スカーレット伯爵令嬢は、ある秘密を抱えていた。
それは、元婚約者モーガンが次の婚約者に望んだジュリアの妹マリアが、モーガンの実の妹でもある、という秘密だ。
本当ならば墓まで持っていくつもりだったが、ジュリアを婚約者にとモーガンの親友である第一王子フィリップが望んでくれた事で、ジュリアは真実を突きつける事を決める。
※エピローグにてひとまず完結ですが、疑問点があがっていた所や、具体的な姉妹に対する差など、サクサク読んでもらうのに削った所を(現在他作を書いているので不定期で)番外編で更新しますので、暫く連載中のままとさせていただきます。よろしくお願いします。
番外編に手が回らないため、一旦完結と致します。
(2021/02/07 02:00)
小説家になろう・カクヨムでも別名義にて連載を始めました。
恋愛及び全体1位ありがとうございます!
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね
ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。
失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
妹ばかり見ている婚約者はもういりません
水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。
自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。
そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。
さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。
◆エールありがとうございます!
◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐
◆なろうにも載せ始めました
◇いいね押してくれた方ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる