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50.次なる暴挙

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しばらくして、両陛下が席を外した後にもう一組客が訪れた。


「失礼します」

「アンジェリカ様?」


「お久しゅうございます。ユーリ様」


俺達の前に現れたのはアンジェリカ・リスリー侯爵令嬢だった。
隣国のオルステア王国の侯爵令嬢に当たり、カディシュの婚約者でもある。


「ご挨拶が遅れて申し訳ございません」

「いや、かまなわい」

まだ正式に発表されていないが彼女はカディシュとの婚約は年明けにも発表される予定だった。


「兄上、ご無沙汰しております」

「カディシュ、元気そうだな」

「はい、兄上が立太子したと聞き、お祝いに行きたかったのですが」

少しムッとした表情をするも、ちゃんとポーカーフェイスができるようになったんだな。


「義姉上、お元気そうで良かった」

「カディシュ様、貫禄がつきましたわね」

「ええ、おかげさまで」

少しばかり表情が強張るカディシュ。
何かあったのか?


「兄上、あの馬鹿姉妹は何なのでしょうか。義姉上の前で申し上げにくいのですが」

「どうかお気になさらないでください」

「どうしたんだ?」


げんなりとした表情のカディシュ。
実家の家業を補佐している所為ではなくあの姉妹が問題か。

「私から説明足します。ステンシル侯爵家の三女の事です」

「ローズマリー嬢?」

「社交場で、カディシュ様に言い寄って来ているのです」

「「は?」」


ローズマリー嬢は婚約者がいただろう?
王妃陛下の甥に当たるアーベル様が婚約者だった気が。


「アーベル様とは婚約破棄になったんです。彼女は他人の不幸をあざ笑うようなことを申しますし、アーベル様には病弱なお姉様がいらっしゃるのはご存じですよね?」

「ああ…」

「その姉君を死にぞこないなどと言って噂を流したのが彼女です」


嘘だろ?
普通、自分の婚約者の姉を公の場で侮辱するか?


「ご自分の姉の悪口も酷く」

「あー…ないな」

「ローズマリー…」


アイリスも庇うつもりはないのか。
眉を顰めていた。


「アーベル様はお優しい方ですから。姉君思いの方で、ブリチア王国の医療発展に心血を注いでおられましたし」

そんな方の前で馬鹿だろ。
馬鹿としかいいよおうがないとも思ったが、婚約破棄なって躍起になっているのか。


「王族との婚約が破談になったので、良い縁談が来なくなったらしいのですが」

「僕に言い寄るなんて正気の沙汰には思えません」

「もしくは責任を取れって事か?」


婚約破棄した俺に罪がある。
だから妹を婚約者にしろとでも言いたいのか。


頭がおかしいのかと思ったが、悪知恵を働かせたのはステンシル侯爵夫人かもしれない。

あの単純で馬鹿なローズマリー令嬢が考えるわけがない。



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