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30.実力主義
しおりを挟むシメリス帝国は完全な実力主義。
生まれですべてを決められている他国と異なり、実力を重視される。
特に騎士の国と呼ばれ、女性が下剋上できる珍しい国でもある。
皇族専属の護衛騎士には多くの女性騎士が存在している。
騎士団の団長も女性が多い。
特に戦場で手柄を立てた者は男女関係なく出世ができる。
手柄とは敵将の首を打ち取るだけではない。
敵国と血を流さず交渉して勝利を収めた者も評価されるのだ。
とは言え、男尊女卑がまったくないわけではないが、剣を振るだけでは帝国の騎士は務まらないのだ。
他国の侵略を許さず、他国の侵略に介入せずいるには力が必要だった。
その為にも騎士団は常に力を締めることを求められる。
そして俺は現在、皇帝陛下より。
東の大陸を制圧するよう命令を受けていた。
「良いか、東の大陸は第二の守りだ。クーデターを起こそうとしてる者達を抑え込め。良いな」
「ハッ!」
東の大陸を制圧する事でシメリス帝国の名を更に知らしめることができる。
成功すれば俺に領地を与えるとの事だが、かなり厳しい条件と言えるだろうが…
「娘達にも困ったものだ。こんな強引な」
「陛下…」
「かわいい孫にこんな危険な仕事をさせるなど…胃が痛い」
厳格な表情をしていたかと思えば、表情が変わる。
「陛下、人前でそのような」
「今は人払いしておる。固い事を言う出ない」
宰相が死んだ目をしているな。
「陛下、そういう問題では」
「何が悲しくて可愛い可愛い孫を死地にい繰り込むのだ。本当に鬼じゃ…悪魔じゃ」
「陛下…」
他国からは暴君と恐れられている俺の祖父だが、本当は優しいお爺さんだ。
そして根っからの苦労人。
「はぁー…あんな危険な地に可愛い孫を向かわせなくてはならんとは」
「陛下、これもすべてはユーリ様に立太子していただく為。力を示して異論を唱える者を黙らせなくては」
「解っているが、他にも方法があるだろうに」
涙目で見るお祖父様。
第三者が見たらドン引きするだろうな。
ギャップが余りにも酷いから。
「ユーリが帝位を継いでくれたらと願っていたが…すまぬな」
「陛下」
「そなたは帝位に興味はないだろうし、貴族籍を除籍してアイリス嬢と生きたかったが…それは難しいのだ。そなたは聖騎士の称号を持ってるが故に狙われるだろう…何より皇后の孫だ」
第二皇女である母上も苦労されたようだが、俺の場合は聖騎士の称号を持っているため隠し続けるのは難しいとの事だ。
「聖騎士の称号を捨てることもできよう。しかし聖騎士の称号を捨てないでほしいというわしの我儘じゃ。そして叶うならわしはそなたに帝位を継いで欲しいのじゃ…爺の我儘を許せ」
俺の立場は思っていたよりもかなり厄介なものだった。
だからこそ、お祖父様なりのやり方で俺を、アイリスを守ろうとしてくれているのだろう。
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