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第一章婚約破棄と国外追放
8.子犬と騎士
しおりを挟む傭兵達をボコボコにしたのは良いが、また他の暗殺者が襲ってこないとは限らない。
「急いで帝国側の方と合流しないと」
もちろん気絶させた傭兵達は縄で縛りつけ放置した。
先を急がなくてはならないのだが、ふと気づく。
男達を殴り飛ばしたせいで、ドレスはかなり汚れてしまったし、裸足だった。
「この格好じゃ、まずいわね」
貴族令嬢に見えないだろうし、エリーゼがシュタイン家の娘だと信じて貰えない。
「うーん」
この際、家族に関してはどうでもいい。
ただ、外交問題になって双方が戦争なんてされては困る。
これでも十数年以上王太子妃になるべく教育を受け、聖女としてあり方を学んできたのだから。
正直に言えば、国と国民に罪はない。
同時に敵国でありながら、幾度なく温情をかけてくれた帝国側にも申し訳ない。
(もし私が逃げ出したなんてことになったら…)
マリンフェスタ帝国の名に傷がつくのではないだろうか?
「やっぱり、どうにかして行くしかないわよね」
「ご主人、どうしたの?」
さっきから独り言をブツブツ言っていたエリーゼにキョトンとする。
「あー、何でもないわ」
考えても答えは出ず、歩くしかなかった。
そんな時だった。
「ワン!」
「へ?」
前方から犬の鳴き声が聞こえる。
「ぶっ!!」
前方から聞こえた犬の鳴き声と一緒に視界が真っ暗になり、モフモフした感覚に襲われた。
「ワンワン!」
「ちょっ…待って」
「ワフ!」
顔にダイブされ、汚れた部分をペロペロと舐められる。
「くすぐったいって!」
じゃれつく犬を引きはがそうとする。
『ご主人!』
「はい?」
アルフと同じように呼ばれてしまった。
しかも、何故かこの犬(仮)もジャーマンシェパードにそっくりだった。
(何でまたシェパード?)
混乱するエリーゼに構わずじゃれつかれ、服は涎まみれになってしまった。
「ロンドン!!」
そこに、一人の青年が走って来る。
「申し訳ありません、お怪我はございませんか」
「はい、大丈夫です」
一向にエリーゼから離れることがない犬を抱き上げ、飼い主だろうと判断する。
恰好からして騎士団の人間であることがすぐに解った。
エリーゼはできるだけ優しい口調で話しかけようとしたのだが…
「リゼ様?」
「はい?」
青年が驚いた表情でエリーゼの愛称を呼んだ。
「あっ…あの」
「どうしてリゼ様が…」
どうして見ず知らずの青年がエリーゼの愛称を知っているのだろうかと思った。
エリーゼを親し気に愛称で呼んでくれる人間は限られた人間しかおらず、目の前の青年に覚えはなかった。
「ワン!」
「えっ…」
双方に見つめ合う中、アルフが鳴き声をあげる。
青年は隣にいるアルフを見てさらに絶句し、瞳を見開く。
「神獣様!!」
その言葉により、エリーゼも言葉を失った。
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