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第一章婚約破棄と国外追放
9.神獣の主
しおりを挟む神話の時代、女神に仕えた獣。
彼等はこの地上に人間が生まれる前から存在し、地上を守っていた。
聖書などでは彼等は精霊として慕われていた。。
千年以上の寿命を持ち、この地上を女神の代わりに預かり見守って来た。
地上にはいくつかの神々の楽園が存在し、人が侵入できない聖なる地とも呼ばれている。
神獣達は、常に人間を見定めている。
その為、神獣はよほどのことがない限り人間に力を貸さない。
―――はずだったのだが。
「フェンリルの神獣様!!」
「えっ…」
現在その神様に頭を下げる青年と開いた口が塞がらないエリーゼ。
「アルフ…貴方神獣様だったの?」
『まぁ、一応』
「一応って何なの!そんなあっさりと!」
これは大問題だった。
白狼は他国では恐れられている。
彼等を統括する立場にあり、神獣の一角を担う神様だった。
精霊の中では高位にも当たるのだから。
(どうしよう、神様の背中に乗ってしまったわ)
知らなかったとは言え、とっても失礼なことをしてしまった。
ここに来るまで背に乗って、モフモフを堪能してしまったことを後悔した。
『ご主人は僕達の主なんだからいいんだよ』
『ご主人!もっとなでなでして!』
ショックを受けるエリーゼにフォローを入れるアルフと空気をまったく呼んでいいないロンドンは頭を撫でて欲しいと甘える。
対して、青年の方は…
「やはり貴方様モフモフ姫巫女様だったのですね!」
(だから、なんなのよ!そのネーミングは!)
モフモフ姫巫女や、モフモフ聖女なんてふざけた職業なんて聞いたこともない。
「所でリゼ様…いいえ、妃殿下」
愛称でエリーゼを呼んでいた青年は急いで訂正する。
「どうかリゼのままで」
「ありがとうございます。私はカイル・クライストと申します。ご挨拶が遅れてしまった無礼と私の精霊の非礼をどうお詫びすれば良いか」
「どうかお気になさらないでください。精霊様のなさったことでございます」
エリーゼの膝にちょこんと座るロンドンは動く気配が全くなかった。
その所為で膝はロンドンの毛がついており、服はベロベロに舐められている。
もし他の貴族令嬢ならば無礼者だと言ってロンドンを始末するかもしれないが、エリーゼは気にしなかった。
もし気にするとすれば一つだけだった。
「クライスト卿、その…少し距離を取っていただけますか」
「申し訳ありません、不快な思いを!」
「いえ、そうではなく」
氷のような瞳を揺らしながら哀し気な目で見つめられると飼い主に怒られ耳を倒す光景を見て罪悪感を感じる。
「その、血だらけですし…」
「血!」
「ちょっ…」
さっきまで捨てられた子犬のような表情は何処に行ったのか、目つきが変わる。
(子犬から警察犬に変わった!!)
カイルの変わり方に驚くも、大人しくせざるを得なかった。
「腕に足にも傷が…殴られたのですか!」
「えっ…」
殴られたのではなく馬車の中で体をぶつけた場所が痣になっているだけだった。
腕や足にも傷があるのは、さっきまで傭兵達をボコボコにしたことで少しだけ怪我をした程度だった。
服にべっとりと血がついているのは、傭兵達の顔を殴った時に浴びた返り血に過ぎない。
「なんということだ!リゼ様は王太子妃であらせられるというのに!!」
「あー…その」
「許せん!」
エリーゼは、怒り狂うカイルをどうすべきか困り果てていた。
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