8 / 21
第一章婚約破棄と国外追放
7.拳で撃退
しおりを挟む時は遡ること数時間前。
森を無事に抜けたエリーゼは再び不運が続いていた。
エリーゼが引き渡される場所に向かうまで道中に、数名の傭兵らしき男に囲まれてしまった。
御者が失敗した時の保険と言った所か、やることが低次元で情けなくなる。
「聞いていた女よりはマシじゃねぇか?」
「堅物の仮面女って聞いていたがな」
「ああ、噂ではかなりの年増らしいが…これだけの器量なら楽しめるな」
エリーゼを取り囲み、この後何をしようとしているかなんて一目瞭然だった。
殺す前の暇つぶしに屈辱を味合わせる気でいるのだろうが、エリーゼは怯えることもない。
(本当に学習能力のない男達)
これでも元王太子妃候補。
暗殺者に命を狙われることは幾度もあった。
本来ならば護衛が数名用意されるのが常識だったが、王宮内では冷遇されていた。
トビアスに不要だと言われ、護衛は一人だけしか許されなかった。
そのお陰で自分の身を守らなくてはならなくなったので、そんじょそこらの兵士に負ける気はしない。
表向きは猫を被っていたが…
「どうした?流石に怖くて声もあげられねぇか?」
下品な笑みを浮かべる男に、どう調教しようか考えていた。
『ご主人、こいつ等を噛み殺していい?』
牙を見せながらエリーゼに話しかける。
「アルフ…不用心に言葉を話したらダメよ」
小声で、アルフに耳打ちするが…
「犬と喋ってるぞ、この女!」
「ギャハハ!王宮では人間の味方がいなくて犬と喋っていたっての本当だったか!!」
どうやら傭兵達にはアルフの言葉は解らないようだった。
『今は、ご主人にしか解らないよ』
「なんだか、どんどん人間離れしていく気がするわ」
別に嫌だと言うわけではない。
王宮にいた時は動物と意思の疎通を図ることができた。
(まぁ、それよりも)
今は目の前で不愉快な視線を向けている男達をどうするか。
『僕に任せて』
キラキラした目で見つめるアルフは、期待に満ちた表情をする。
(体は大人、心は子供ね)
正直、こんな男どもの相手をアルフにさせたくない。
エリーゼにとって犬(正確には狼)は愛すべき我が子のような存在だった。
生前は数多の捨て犬達を立派な警察犬に育てることに身を捧げていた。
それ程にまで犬達に対する愛が深かった。
‥‥なので。
「おい、この狼…フェンリルじゃねぇか?」
「売れば、かなりの金額になるぞ」
「ちょうどいいぜ!」
ブチッ!
何かが切れる音が聞こえた。
(こいつ等ぶっ殺す!)
アルフを殺して売り飛ばす宣言をされた以上、容赦はしない。
「よし、女は生け捕りにしろ」
「狼は殺せ!!」
そろそろ我慢の限界だった。
できれば大人しくししているつもりだったのに。
何故なら、この先で帝国側がいるかもしれない。
ここで問題を起こせば国同士の外交問題に危惧したが、この際堕ちる所まで堕ちてやろうと思った。
これ以上悪くなることもないだろうし、どうせ身代わりにすぎない。
もしかしたら、敵国からも追放されるかもしれない。
その時は冒険家にでもなって生きて行こうと思った。
とりあえず今は目の前のクズ野郎を思いっきりぶん殴ってやろう。
「おい、下を向いて何して…ブホォ!!」
「アルノー!!」
傭兵の一人が吹き飛び木に頭がめり込み、他の傭兵が睨みつけ、胸倉を掴もうとするも、得意の投げ技で投げ飛ばす。
「このクソ女!なにしやがっ…ふご!!」
「ぶっ!!」
残りの一人も千切っては投げ、千切っては投げ無茶苦茶にする。
「なっ…何で」
余りの強さに絶句し、かろうじて意識のある傭兵はビクビクと怯えていた。
「さぁ、誰に何をするって?」
「ああ…」
「ねぇ?教えてくれる?」
これ以上ない程の笑みを浮かべ尋ねるも、とどめの一発をお見舞いして傭兵達は全滅した。
「さぁ、急ごうっと」
『ご主人、かっこいい!!』
後を追いかけるアルフは憧憬の視線を浮かべ尻尾を振っていた。
101
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
『胸の大きさで婚約破棄する王太子を捨てたら、国の方が先に詰みました』
鷹 綾
恋愛
「女性の胸には愛と希望が詰まっている。大きい方がいいに決まっている」
――そう公言し、婚約者であるマルティナを堂々と切り捨てた王太子オスカー。
理由はただ一つ。「理想の女性像に合わない」から。
あまりにも愚かで、あまりにも軽薄。
マルティナは怒りも泣きもせず、静かに身を引くことを選ぶ。
「国内の人間を、これ以上巻き込むべきではありません」
それは諫言であり、同時に――予告だった。
彼女が去った王都では、次第に“判断できる人間”が消えていく。
調整役を失い、声の大きな者に振り回され、国政は静かに、しかし確実に崩壊へ向かっていった。
一方、王都を離れたマルティナは、名も肩書きも出さず、
「誰かに依存しない仕組み」を築き始める。
戻らない。
復縁しない。
選ばれなかった人生を、自分で選び直すために。
これは、
愚かな王太子が壊した国と、
“何も壊さずに離れた令嬢”の物語。
静かで冷静な、痛快ざまぁ×知性派ヒロイン譚。
【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?
綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「エステファニア・サラ・メレンデス――お前との婚約を破棄する」
婚約者であるクラウディオ王太子に、王妃の生誕祝いの夜会で言い渡された私。愛しているわけでもない男に婚約破棄され、断罪されるが……残念ですけど、私と結婚しない王太子殿下に価値はありませんのよ? 何を勘違いしたのか、淫らな恰好の女を伴った元婚約者の暴挙は彼自身へ跳ね返った。
ざまぁ要素あり。溺愛される主人公が無事婚約破棄を乗り越えて幸せを掴むお話。
表紙イラスト:リルドア様(https://coconala.com/users/791723)
【完結】本編63話+外伝11話、2021/01/19
【複数掲載】アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアップ+
2021/12 異世界恋愛小説コンテスト 一次審査通過
2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
四人の令嬢と公爵と
オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」
ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。
人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが……
「おはよう。よく眠れたかな」
「お前すごく可愛いな!!」
「花がよく似合うね」
「どうか今日も共に過ごしてほしい」
彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。
一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。
※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる