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第一章
42肩書故に
しおりを挟む聖女の肩書は重く、人の一生を左右できる程の影響力を持っている。
その意味をテレサは理解していなかった。
「これから貴女は厳しい環境に身を置き、犠牲になったもの、踏みつけた者に詫びながら振り返りなさい」
「王女様…私は踏みつけたつもりは」
「なかったとしても、貴女は複数の令嬢の人生を狂わせ、ソフィアを国から追い出した。下手をすれば彼女は命を断たれていたかもしれないのですよ」
「命を…」
ぞっとするテレサにメティスは更に追い打ちかける。
「気持ちよかったかしら?ソフィアの婚約者に愛され優越感を感じたのでしょう」
「そんな!」
「まったくないとは言いきれないでしょう?」
メティスはこの世に清廉潔白な人間なんているはずがないと思っている。
一部の特殊な人間を覗いては。
「テレサ、貴女は貧しい平民だった。そんな貴女が聖女に選ばれ貴族の仲間入りなって舞い上がっても仕方ありません」
メティスは許せないのは守られる側にいて自分で見ようとしなかったことだ。
自分の幸福の為に泣いている人がいても仕方ないとみて見ぬふりをしたことなのだから。
「ソフィアは長年貴女を立派な聖女にあるべく尽くしたのに貴女は何もしなかった」
「だって…あれは」
「逆らえなかった。自分は悪くない…そうしてソフィアがすべてを奪われ命を断っていたら貴女は完全なる犯罪者。ソフィアだけではありません」
「私は…」
「貴女はこれまで守ってくださった方を裏切ったのです。故に今回の事は大罪です。ご両親の耳にも入っているでしょう」
「そんな!」
テレサは絶句した。
村にも両親の耳にもすべて入っているとは思わなかった。
「三年の修業の後もすぐに村に帰ることは許しません。修道院に入り反省なさい。貴女のしたことがどれだけ酷い事をしたか知る良いきっかけになるでしょう」
メティスの言葉に絶望する。
テレサは解ったようで解っていなかった。
これまでしてきたことがどれ程罪深いか。
「本来なら聖地巡礼をせずに村に帰しても良かった。だけどその場合貴女に敵意を持つ者が村を焼き払うでしょう」
「私は…」
「当然の結果です。貴女が無知であったがゆえに傷ついた者がいる。貴族は権力がある…だからこそ己の身の振り方を考えなくては」
「ぐずっ…」
「泣いてももう誰も助けてくれないでしょう。それを思い知りになさい」
最後に冷たい瞳で見据えながらその場を去った。
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