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第一章
41聖女の処遇
しおりを挟むソフィアが国を出た後。
メティスは、秘密裏に行動を起こしていた。
テレサは聖女には最後の仕事を全うさせるべく聖地巡礼を命じた。
「これより聖女テレサには三年間の聖地巡礼を行っていただきます」
「え?」
「聖女として最後の仕事をしていただきます」
テレサは被害者であるが、加害者でもある。
いかに何も知らなかったと言えど、無知は罪だった。
「貴女は償いをしなくてはなりません」
「償い…」
「そうです。貴女の無知と考えない行動で多くの女性の人生を狂わせました」
何のことかまるで理解していないテレサにメティスは告げた。
「貴女の周りにチョロチョロ動いていた男達は婚約者を裏切りました。貴女への愛を貫くと言い、長きにわたり婚約者を虐げました」
「そんな…」
「言ってみれば貴女は現在王都では婚約者のいる男性と関係を持った悪女ですわ」
容赦のない言葉をポンポンいうメティス。
傍にテレサを支えてくれる人間はおらず泣きそうになるが。
「泣く権利も資格もありません。貴女を守ってくれたソフィアの婚約者を略奪し踏みつけ搾取したのは事実」
「あっ…」
「そんなつもりはなかったなんて言葉は通じなくてよ」
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(((鬼だ!))
味方が誰一人いない状況でわざと言うあたり性格の腹黒さが解るのだ。
「おい、止めなくていいのか?」
「できるのか?」
「無理だ…」
騎士団の騎士達はヒソヒソ話す。
明らかに苛めではないかと思うが、テレサが無知だったせいで起きた事件は多すぎた。
社交界を揺るがす事件となったのだから庇うことはできない。
しかしテレサの立場を考慮するなら思う所はあるのあから。
「王女様…私は」
「貴女は受け身で誰かに依存してばかり。今まではソフィアがいましたわ。でも今後は一人で生きて行かなくてはなりません」
「はっ…はい」
「貴女への信頼はゼロどころかマイナスです」
社交界でテレサをよく思わない人間は多すぎる。
今は頼れる人間が一人にいない状況で即座に聖女を剥奪しても意味がない。
「罪を償いなさい」
「はい…」
「聖女としての最後の仕事です。これより三年間聖地巡礼を命じます」
聖職者の聖地巡礼の旅。
かつて中央神殿の最高責任者が退任した後に行われたと言われている。
勿論道中では歩きで馬車の使用も許されない。
寝泊まりは野宿でとても過酷だった。
現代では行われいない苦行を命じたのだ。
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