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第九章 出戻り貴妃は皇帝陛下に溺愛されます
月見
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奕晨と愛を育みながら、旅程は続き、そして再び首都に帰ってきた。既に10月である。
小青、小梅、そして茉莉が部屋で出迎えてくれた時、本当に嬉しくほっとした気持ちになった。
「陛下が、必ず取り戻すとおっしゃいましたので雲貴妃が帰ってくる日まで整えてお待ちしておりました」
小青はそういうと綺麗に整えられた月華宮を案内してくれる。先に連絡があったのだろう。堯舜の揺籠や部屋も用意されている。人員も増やされ、宮は華やかで明るい。警備も見直したから、安心するようにと陛下にも言われた。
「世継ぎが生まれたから、東の春宮もあける準備もせねばな。まだ堯舜が住むには早いだろうが…」
奕晨の言葉に私は笑い出してしまった。
「まだ歩いてもいないのに、気が早すぎますね!」
でも、未来を沢山考えてもらえるのは幸せなことだ。後宮に戻ってくるのは予定外だったが、堯舜さえ健やかに育つなら問題はない。
堯舜は人見知りもせず、機嫌良く過ごしている。私はやっと安心することができた。
陛下は紫琴宮へ向かう。私は湯浴みをする。なんて快適に整えられているのだろう。このまま、平和に暮らしていけるなんて夢のような話だ。
月が宮を照らす。夜風が吹き抜ける。
小青が温かい茶と月餅を用意してくれている。切り分けた断面が白い蓮の餡に、塩漬けされた家鴨の卵の黄身が入っていて月のようだ。
こんなにゆったりと過ごせる夜はいつぶりか分からないぐらいだ。そこへ奕晨も現れる。
「先触れをくださったら、お出迎えいたしますのに!」
「いや、いい。お通りの規則なんて煩わしいだろう。もうそなたと私はこれで良いのだ」
そう言って、奕晨も月餅を摘む。
小青が温かい茶を淹れる。小梅と茉莉が交代で堯舜を見てくれている。
月夜に照らされて陛下は艶めかしく、美しい。月を見上げる横顔はまるで石像のように完璧な造形だ。ため息がでる。
「何をみているのだ?今更一目惚れでもしたか」
私の視線に気づいた奕晨は悪戯っぽく笑う。私は恥ずかしくなり、頬がサッと赤く染まるのを感じた。
「私も今、そなたに一目惚れしているところだ。気にするな。何度でも恋に落ちよう」
小青は下がっていた。
2人きり、静かな夜だ。
口づけは甘かった。
小青、小梅、そして茉莉が部屋で出迎えてくれた時、本当に嬉しくほっとした気持ちになった。
「陛下が、必ず取り戻すとおっしゃいましたので雲貴妃が帰ってくる日まで整えてお待ちしておりました」
小青はそういうと綺麗に整えられた月華宮を案内してくれる。先に連絡があったのだろう。堯舜の揺籠や部屋も用意されている。人員も増やされ、宮は華やかで明るい。警備も見直したから、安心するようにと陛下にも言われた。
「世継ぎが生まれたから、東の春宮もあける準備もせねばな。まだ堯舜が住むには早いだろうが…」
奕晨の言葉に私は笑い出してしまった。
「まだ歩いてもいないのに、気が早すぎますね!」
でも、未来を沢山考えてもらえるのは幸せなことだ。後宮に戻ってくるのは予定外だったが、堯舜さえ健やかに育つなら問題はない。
堯舜は人見知りもせず、機嫌良く過ごしている。私はやっと安心することができた。
陛下は紫琴宮へ向かう。私は湯浴みをする。なんて快適に整えられているのだろう。このまま、平和に暮らしていけるなんて夢のような話だ。
月が宮を照らす。夜風が吹き抜ける。
小青が温かい茶と月餅を用意してくれている。切り分けた断面が白い蓮の餡に、塩漬けされた家鴨の卵の黄身が入っていて月のようだ。
こんなにゆったりと過ごせる夜はいつぶりか分からないぐらいだ。そこへ奕晨も現れる。
「先触れをくださったら、お出迎えいたしますのに!」
「いや、いい。お通りの規則なんて煩わしいだろう。もうそなたと私はこれで良いのだ」
そう言って、奕晨も月餅を摘む。
小青が温かい茶を淹れる。小梅と茉莉が交代で堯舜を見てくれている。
月夜に照らされて陛下は艶めかしく、美しい。月を見上げる横顔はまるで石像のように完璧な造形だ。ため息がでる。
「何をみているのだ?今更一目惚れでもしたか」
私の視線に気づいた奕晨は悪戯っぽく笑う。私は恥ずかしくなり、頬がサッと赤く染まるのを感じた。
「私も今、そなたに一目惚れしているところだ。気にするな。何度でも恋に落ちよう」
小青は下がっていた。
2人きり、静かな夜だ。
口づけは甘かった。
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