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第九章 出戻り貴妃は皇帝陛下に溺愛されます
旅程
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後宮に出戻ることになった。陛下は今度こそ片時も離れたくないようで、私たちの住む場所には気を遣っている。輿に揺られながら悩んでいるようだった。
賊の侵入を許した月華宮に不安を抱いているらしい。牡丹坊で堯舜を育てることにも不安を抱いてる。
奕世は私と銀蓮しかいないのに、心変わりしたのだ。後宮をかかえる皇帝陛下に、何を期待できるのだろうか。陛下が堯舜を抱いた。私に口づけをくれた。微笑んで和やかに家族のように過ごして行けると思ってしまう。自分を律さなければ勘違いしてしまいそうだ。
奕世がくれた愛の言葉も、情熱的な夜も、誠実を誓った約束も全て夢幻だったんだもの。奕晨の横顔に、面影を見た。奕世が変わらなければ、ずっと奕世の側にいたと思うと悲しかった。悲しく思う自分の心が、皇帝陛下に申し訳なく後ろめたい。こんな気持ちの女は地獄に落ちて然るべきではないか?
陛下は堯舜が泣いても、嫌な顔ひとつぜず、私が乳を含ませるのを愛おしそうに眺める。輝くような美しい微笑み、長いまつ毛、艶やかな髪。皇帝陛下は何もかもが完璧に美しく、こんなに良くしてもらっても、こんな神のような天子が私を愛していることが信じられない。私は身も心も既に汚い。
荒々しく雄々しい奕世を思いだせば、胸が騒いだ。馬を駆る無骨な大きな手が私を抱き上げ、高床の褥へ放る。土と汗と血の匂い。馬乳酒にまみれた口づけ。私も私の身体も奕世に慣れてしまったので、乱雑で嫌がっていたそれすら愛おしかった。思い出せば身体の奥に情愛の火が灯るような錯覚がした。
首都への道のりは長く、休息をとらねばならない。先に馬が走り、陛下のための部屋が領主の館に用意される。もちろん護衛や、馬も休ませなければ先には進めないし、食事の問題だってある。
蔡北を出て、我々は南下し、西の回廊を通って首都へ戻ろうとしている。龔鴑が来襲すること考えられる北側の領土を避けた形だ。
西の回廊は遥か遠くまで交易のために伸びており、道もわかりやすい。西甘寧の街はエキゾチックで異国の香りがする。私たちの宿は領主の城に用意された。
領主も娘を後宮入りさせているとすれば、私の存在は面白くないだろうなと予想できた。しかし、皇帝陛下に御目通りいただける機会など辺境にはそう無い。もちろん礼を尽くしてもてなされる。やはり、後宮入りさせている娘を是非侍女にひきたてて欲しいとの話もあった。子連れの私を召使いが部屋に案内する。
美しい調度品は色彩が豊かで民族風情にあふれている。用意された着替えも絹で折りあげられた民族衣装だ。湯に浸かり召使いの手で、私の身体は隅々まで磨きあげられ、髪も結い上げてもらう。たっぷりと乳を与えた堯舜は揺籠にゆられ、良く眠っている。静かな夕べだ。着替えが済んだら、陛下も部屋に入ってきた。
陛下が近づくと白檀の香りがした。
「鮮やかな色も似合うのだな。脱がすのが勿体無くなるぐらいだ」
「陛下…」
「奕晨と呼んでくれ。仕方ない時以外は、いつも」
吐息が触れ合う距離で、誘うように薄く開いた口唇が私の頬に触れる。身体を硬くする私に気がついた陛下は、「嫌か」と聞いた。
「違います、ただ…」
「私では嫌か」
陛下は悲しみをたたえた瞳で私を見つめる。こんな美しい人を私は何故困らせているのだろう。
「身体を見せるのが恥ずかしいのです、子を産んで変わってしまったから」
本当に、子を産んでから私の身体は変わってしまった。艶やかな白い肌のままとはいかず、ひび割れた部分や相応の変化がある。初めて市井の宿で奕晨と身体を重ねた時とはまるで違う自分をみせるのは怖かった。
「かまわぬ、そなたはそなただ」
何かを確かめるように口づけをし、導かれるようにして舌が絡み合う。私の吐息が漏れ、奕晨の吐息の熱を感じる。触れ合ったまま離れられない。
「雲泪、どのようになっても唯一の人はそなたなのだ。愛している」
奕晨の言葉になぜ、私は奕世を思い出してしまうのだろう。こんなに愛してくれているのに、なぜいつか来る裏切りを想像してしまうのだろう。
奕世の口づけを思い出してしまう、あの指を、匂いを、草原で過ごした夏を。涙が溢れて止まらないけれど、陛下に理由が言えない。悲しませたくない。私なんて打首にされてしかるべきだ。
するりと絹の衣がおちる、鎖骨をなぞる指先が白くて綺麗。私の涙を陛下がぬぐい、そして頬に唇で触れる。
「何故泣く?悲しいのか、怖いか」
「奕晨…私も…愛してる…」
その言葉を絞り出すのが、精一杯だ。陛下が私の涙を拭っても次から次へと涙は溢れた。
「安心したら、涙が止まらないの」
陛下はわらった。2人で絹の高床に向かい、柔らかな絹の布団を私に被せると優しく胸に手を置く。
「長い間、助けに行けなくてすまなかった。もっと早く、すぐに助け出したかったが力が足りなかった。彼の地で辛い想いを沢山させた」
陛下は私を腕の中に、すっぽり包む。
「怖がらなくていい。そなたの傷が癒えるまで、いくらでも待つ。きっと身体だけでなく、心もまだ深く傷ついているのだろう」
闇に白檀の香りだけが浮かぶ。その中に包まれてとくとくと脈打つ陛下の生きている音が私の心をおちつかせた。私はおずおずと、陛下に切り出した。
「奕晨。待たなくていい…今私を抱いてほしいの。そして全てを忘れさせてほしい」
陛下は長く深いため息をついたあと、決心したかのように舌で私の歯列をこじ開ける。生き物のように舌が入ってくる。唾液が混じり合い、熱を分け吐息まで飲み込むような深い口づけ。脇腹を優しく撫でる手とは裏腹に、陛下自身は火傷しそうなほど熱く昂ぶっていた。触れた肌が熱い。
無意識に逃れようとする私の腰を捕まえる。なるべく声を抑えながら、私は背中を何度も大きくしならせて迎えいれた。
奕晨だけを見つめる。何も思いださずに、目の前にいる奕晨だけを感じ、受け入れ、与えられる愛を享受する。
私たちは愛を囁き合い、それに没入した。
賊の侵入を許した月華宮に不安を抱いているらしい。牡丹坊で堯舜を育てることにも不安を抱いてる。
奕世は私と銀蓮しかいないのに、心変わりしたのだ。後宮をかかえる皇帝陛下に、何を期待できるのだろうか。陛下が堯舜を抱いた。私に口づけをくれた。微笑んで和やかに家族のように過ごして行けると思ってしまう。自分を律さなければ勘違いしてしまいそうだ。
奕世がくれた愛の言葉も、情熱的な夜も、誠実を誓った約束も全て夢幻だったんだもの。奕晨の横顔に、面影を見た。奕世が変わらなければ、ずっと奕世の側にいたと思うと悲しかった。悲しく思う自分の心が、皇帝陛下に申し訳なく後ろめたい。こんな気持ちの女は地獄に落ちて然るべきではないか?
陛下は堯舜が泣いても、嫌な顔ひとつぜず、私が乳を含ませるのを愛おしそうに眺める。輝くような美しい微笑み、長いまつ毛、艶やかな髪。皇帝陛下は何もかもが完璧に美しく、こんなに良くしてもらっても、こんな神のような天子が私を愛していることが信じられない。私は身も心も既に汚い。
荒々しく雄々しい奕世を思いだせば、胸が騒いだ。馬を駆る無骨な大きな手が私を抱き上げ、高床の褥へ放る。土と汗と血の匂い。馬乳酒にまみれた口づけ。私も私の身体も奕世に慣れてしまったので、乱雑で嫌がっていたそれすら愛おしかった。思い出せば身体の奥に情愛の火が灯るような錯覚がした。
首都への道のりは長く、休息をとらねばならない。先に馬が走り、陛下のための部屋が領主の館に用意される。もちろん護衛や、馬も休ませなければ先には進めないし、食事の問題だってある。
蔡北を出て、我々は南下し、西の回廊を通って首都へ戻ろうとしている。龔鴑が来襲すること考えられる北側の領土を避けた形だ。
西の回廊は遥か遠くまで交易のために伸びており、道もわかりやすい。西甘寧の街はエキゾチックで異国の香りがする。私たちの宿は領主の城に用意された。
領主も娘を後宮入りさせているとすれば、私の存在は面白くないだろうなと予想できた。しかし、皇帝陛下に御目通りいただける機会など辺境にはそう無い。もちろん礼を尽くしてもてなされる。やはり、後宮入りさせている娘を是非侍女にひきたてて欲しいとの話もあった。子連れの私を召使いが部屋に案内する。
美しい調度品は色彩が豊かで民族風情にあふれている。用意された着替えも絹で折りあげられた民族衣装だ。湯に浸かり召使いの手で、私の身体は隅々まで磨きあげられ、髪も結い上げてもらう。たっぷりと乳を与えた堯舜は揺籠にゆられ、良く眠っている。静かな夕べだ。着替えが済んだら、陛下も部屋に入ってきた。
陛下が近づくと白檀の香りがした。
「鮮やかな色も似合うのだな。脱がすのが勿体無くなるぐらいだ」
「陛下…」
「奕晨と呼んでくれ。仕方ない時以外は、いつも」
吐息が触れ合う距離で、誘うように薄く開いた口唇が私の頬に触れる。身体を硬くする私に気がついた陛下は、「嫌か」と聞いた。
「違います、ただ…」
「私では嫌か」
陛下は悲しみをたたえた瞳で私を見つめる。こんな美しい人を私は何故困らせているのだろう。
「身体を見せるのが恥ずかしいのです、子を産んで変わってしまったから」
本当に、子を産んでから私の身体は変わってしまった。艶やかな白い肌のままとはいかず、ひび割れた部分や相応の変化がある。初めて市井の宿で奕晨と身体を重ねた時とはまるで違う自分をみせるのは怖かった。
「かまわぬ、そなたはそなただ」
何かを確かめるように口づけをし、導かれるようにして舌が絡み合う。私の吐息が漏れ、奕晨の吐息の熱を感じる。触れ合ったまま離れられない。
「雲泪、どのようになっても唯一の人はそなたなのだ。愛している」
奕晨の言葉になぜ、私は奕世を思い出してしまうのだろう。こんなに愛してくれているのに、なぜいつか来る裏切りを想像してしまうのだろう。
奕世の口づけを思い出してしまう、あの指を、匂いを、草原で過ごした夏を。涙が溢れて止まらないけれど、陛下に理由が言えない。悲しませたくない。私なんて打首にされてしかるべきだ。
するりと絹の衣がおちる、鎖骨をなぞる指先が白くて綺麗。私の涙を陛下がぬぐい、そして頬に唇で触れる。
「何故泣く?悲しいのか、怖いか」
「奕晨…私も…愛してる…」
その言葉を絞り出すのが、精一杯だ。陛下が私の涙を拭っても次から次へと涙は溢れた。
「安心したら、涙が止まらないの」
陛下はわらった。2人で絹の高床に向かい、柔らかな絹の布団を私に被せると優しく胸に手を置く。
「長い間、助けに行けなくてすまなかった。もっと早く、すぐに助け出したかったが力が足りなかった。彼の地で辛い想いを沢山させた」
陛下は私を腕の中に、すっぽり包む。
「怖がらなくていい。そなたの傷が癒えるまで、いくらでも待つ。きっと身体だけでなく、心もまだ深く傷ついているのだろう」
闇に白檀の香りだけが浮かぶ。その中に包まれてとくとくと脈打つ陛下の生きている音が私の心をおちつかせた。私はおずおずと、陛下に切り出した。
「奕晨。待たなくていい…今私を抱いてほしいの。そして全てを忘れさせてほしい」
陛下は長く深いため息をついたあと、決心したかのように舌で私の歯列をこじ開ける。生き物のように舌が入ってくる。唾液が混じり合い、熱を分け吐息まで飲み込むような深い口づけ。脇腹を優しく撫でる手とは裏腹に、陛下自身は火傷しそうなほど熱く昂ぶっていた。触れた肌が熱い。
無意識に逃れようとする私の腰を捕まえる。なるべく声を抑えながら、私は背中を何度も大きくしならせて迎えいれた。
奕晨だけを見つめる。何も思いださずに、目の前にいる奕晨だけを感じ、受け入れ、与えられる愛を享受する。
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