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第六章 月華星亮

寵愛

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作戦会議が必要だった。

本来月華宮ユエファゴンは次の天子が育つ場所である。皇貴妃ファングイフェイが世継ぎを育て、若き皇帝が即位したなら、皇太后が住み続けることもある。

本来であれば、後宮の権力の中枢にもなる得る。宦官と外戚が入り乱れる欲望の巣。しかし月華宮ユエファゴンには現在4人しか人がいない。私と小青シャオチン小梅シャオメイ、それから唯一の宦官にお久しぶりの王望天ワンワンテンである。

「すごーいじゃない‼︎想像以上よ、一月もたたないうちにこの国の中枢も中枢に上り詰めたわね」
「こんな広い宮殿をもらっても維持に困るだけじゃない…」

牡丹坊ムータンファンですら掃除が心配だったのに、いくら影がいるとはいえ宮殿まで増えると小青シャオチンが心配だった。

「好きな宮女を増やせばいいわ!今、銀貴妃イングイフェイから宮女が寵愛を奪ったって大騒ぎよ。雲貴妃ユングイフェイに仕えたい宮女はたくさんいるわよー!欲しい子はいないの?」
私の頭に浮かぶのは茉莉モオリーただひとりである。それを伝えると、王望天ワンワンテンは外の宦官に茉莉モオリーを呼びに行かせた。

「こんなことになってごめんね、小梅シャオメイ
「いえ、こんな身分不相応なお話をいただいて、本当に私で務まるのか…」
「大丈夫、雲貴妃ユングイフェイが務まるのが私の方が不安なくらいだから…そうね。小梅シャオメイには尚食をお願いするわ。小青シャオチンは今まで通りに銀貴妃イングイフェイの尚宮と、雲貴妃イングイフェイの尚宮を兼務でお願いするわ」
流石の小青シャオチンも青ざめている。
貴妃グイフェイふたりの尚宮を兼務なんて聞いたことありません…」
「大丈夫、貴妃グイフェイふたりを兼務するよりマシだわ」
私は慰めにならない慰めで力無く声をかける。

「なんでよー‼︎ここが後宮を上り詰めた頂点。年頃の女子が一度は夢みる陛下の寵妃の宮なのに、なんで辛気臭い顔してるのよォォ」

小青シャオチンも青ざめた顔でつぶやいた。
貴妃グイフェイ同志は仲を違えていることにいたしましょう。それが自然です。私は内緒で、こちらを兼務いたしますので、普段は牡丹坊ムータンファン銀貴妃イングイフェイがいるふりをして過ごします…行事などには皇帝陛下のご気分でどちらかの貴妃グイフェイを選んでいただきましてお支度をいたしますので…」
「それで、少なくとも三嬪サンビンの問題は解決だわ」
突然、能天気に王望天ワンワンテンが言い出した。なぜと問いかける私に、得意げに王望天ワンワンテンは答える。
「だって、虎と龍が争ってる時にチャチャをいれるネズミがいると思う?」

争う…?私と、私が?

「なんなら、全ての妃嬪たちを派閥に入れちゃえばいいわ。銀貴妃イングイフェイ派か。雲貴妃ユングイフェイ派か。そしたら、きっと平和よ」

雲泪ユンレイ!あ、いや雲貴妃ユングイフェイになったんだね、ごめんよ。本当に心配していたんだよー!」

呼ばれた茉莉モオリーが抱きしめてくる。ふわふわの胸に包まれる。私もギュッと抱きしめかえす。
「来てくれて、ありがとう」
「もちろんだよ、雲貴妃ユングイフェイのためなら一所懸命にお仕えさせていただくよ」

結局、作戦会議は尚服が1人増えたところで終わった。今夜陛下は月華宮ユエファゴンにお通りになるため、早急に準備が必要になる。今日のところは宦官たちを立ち入らせるしかなかった。

私は奕晨イーチェンを想った。市井の宿で、簡素な寝床で、私たちはただ奕晨イーチェン雲泪ユンレイだった。昨日の夜を想った。

皇帝陛下の寵愛はいらない。しがらみなく、ただ二人で自由に生きていければいいのに。
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