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第二十四話 ヒロインの余裕②
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私が本棚の陰から姿を晒すと、怯えたような演技でこちらを窺っていたミリシアが、不意に眉をひそめた。
ミリシアはじっと私の顔を見つめたあと、思い出したようにあぁと声を漏らし、急に横柄な態度で腰に手をやる。
「何だ。誰かと思えば悪役令嬢の取り巻きじゃないの。あんた相手なら猫かぶる必要もないか。そのうちツブすし」
「いっそ清々しいほどの二重人格!」
私が顔を引きつらせていると、セレーヌがぽんと手を叩いて話しかけてきた。
「あら。一之瀬奏さんでゃないですか。どうですか? あたらしい人生を満喫されていますか?」
「その節はどうも。ぼちぼちやってるわ」
「それは良かったです。せっかく手に入れた第二の人生。とことん楽しんでくださいね」
そんな私たちのやりとりに、ミリシアが目を瞠って会話に入ってくる。
「何それ!? あんたも転生してきたわけ!?」
「まあ、そういうことになるかな」
「冗談じゃないわ。あたしだけ攻略法を知ってると思ってたのに……って、それじゃ攻略キャラが特殊スキル扱えてるのあんたのせい!?」
「いやそういうわけでは……」
……ないとも言い難いなぁ。
よくわかんないけど、ブラドたちは私の目の前でスキル使えるようになってたし。
私が言いよどんでいると、それを肯定のサインと受け取ったらしい。ミリシアは敵意をむき出しにして私を睨みつけてきた。
(うーん。参ったなぁ。できれば協力関係を築きたいんだけど)
私は助けを求めるようにセレーヌへと視線をやった。しかしセレーヌは我関せずといった様子で言う。
「異世界で同郷の人間と出会えたのです。お互い積もる話もあるでしょうし、わたしはこれで失礼しますね」
「えっ、ちょっと待ってよ。私もセレーヌに聞きたいことが……」
「すみませんがプレイヤーとマッチングしたので。最終日ですしランク回さないと」
「FPSゲームの合間にこっち来てない!? なんかこの世界の扱い雑なんだけど!」
私の不平を無視し、セレーヌがこの場からかき消えた。後に残るのは居心地の悪い沈黙だけだ。
さてどうしたものかと様子をうかがっていると、ミリシアが機先を制するように口を開く。
「あんたは何でそんなモブに転生してるわけ? そのキャラに隠し要素とかあったっけ?」
「いや、そういうのはないけど。シエザはいいポジションにいるし、異世界でスローライフ送るにはもってこいかなって思って」
「はっ、何それウケる。まあいいや。なんの野望もないっていうなら、余計なことしてあたしの邪魔しないでくれる? これから攻略キャラ落としていかなきゃいけないんだから」
「落としてくって……あ。もしかしてヒーシスに手紙出してバックガーデンに呼び出したのあなた?」
「そうよ。王子がふらっとバックガーデンに立ち寄るの待つなんて時間の無駄でしょ。バックガーデンで会えばとりあえずフラグ立つんだから、さっさと済まそうと思って」
うわぁ。たぶん初見プレイでも攻略サイトとか見るタイプの人間だ。
ミリシアはじっと私の顔を見つめたあと、思い出したようにあぁと声を漏らし、急に横柄な態度で腰に手をやる。
「何だ。誰かと思えば悪役令嬢の取り巻きじゃないの。あんた相手なら猫かぶる必要もないか。そのうちツブすし」
「いっそ清々しいほどの二重人格!」
私が顔を引きつらせていると、セレーヌがぽんと手を叩いて話しかけてきた。
「あら。一之瀬奏さんでゃないですか。どうですか? あたらしい人生を満喫されていますか?」
「その節はどうも。ぼちぼちやってるわ」
「それは良かったです。せっかく手に入れた第二の人生。とことん楽しんでくださいね」
そんな私たちのやりとりに、ミリシアが目を瞠って会話に入ってくる。
「何それ!? あんたも転生してきたわけ!?」
「まあ、そういうことになるかな」
「冗談じゃないわ。あたしだけ攻略法を知ってると思ってたのに……って、それじゃ攻略キャラが特殊スキル扱えてるのあんたのせい!?」
「いやそういうわけでは……」
……ないとも言い難いなぁ。
よくわかんないけど、ブラドたちは私の目の前でスキル使えるようになってたし。
私が言いよどんでいると、それを肯定のサインと受け取ったらしい。ミリシアは敵意をむき出しにして私を睨みつけてきた。
(うーん。参ったなぁ。できれば協力関係を築きたいんだけど)
私は助けを求めるようにセレーヌへと視線をやった。しかしセレーヌは我関せずといった様子で言う。
「異世界で同郷の人間と出会えたのです。お互い積もる話もあるでしょうし、わたしはこれで失礼しますね」
「えっ、ちょっと待ってよ。私もセレーヌに聞きたいことが……」
「すみませんがプレイヤーとマッチングしたので。最終日ですしランク回さないと」
「FPSゲームの合間にこっち来てない!? なんかこの世界の扱い雑なんだけど!」
私の不平を無視し、セレーヌがこの場からかき消えた。後に残るのは居心地の悪い沈黙だけだ。
さてどうしたものかと様子をうかがっていると、ミリシアが機先を制するように口を開く。
「あんたは何でそんなモブに転生してるわけ? そのキャラに隠し要素とかあったっけ?」
「いや、そういうのはないけど。シエザはいいポジションにいるし、異世界でスローライフ送るにはもってこいかなって思って」
「はっ、何それウケる。まあいいや。なんの野望もないっていうなら、余計なことしてあたしの邪魔しないでくれる? これから攻略キャラ落としていかなきゃいけないんだから」
「落としてくって……あ。もしかしてヒーシスに手紙出してバックガーデンに呼び出したのあなた?」
「そうよ。王子がふらっとバックガーデンに立ち寄るの待つなんて時間の無駄でしょ。バックガーデンで会えばとりあえずフラグ立つんだから、さっさと済まそうと思って」
うわぁ。たぶん初見プレイでも攻略サイトとか見るタイプの人間だ。
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