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第二十三話 ヒロイン襲来②
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「それで来てみたらミリシアがいたと」
「ああ。しかし手紙の主は彼女ではないらしい。それで、きっとシエザに違いないと、こうして待っていたんだ」
「え? 何でそこで私の名前が出てくるの?」
「いや、それはそのぉ……」
言い淀むヒーシスを訝りつつも、差出人が現れなかったのなら、手紙は単なる悪戯だろうと私は判断した。そうと気付かずいつまでも待っているとは、育ちの良さゆえか、あるいはぼっちの性か。
何にせよイベント発生のタイミングが不規則になっているのなら、ここでのんびりしている場合ではない。
「私ちょっと急ぎの用事あるから! それじゃ!」
そう言うと、待ちぼうけを食っているヒーシスをその場に残して駆け出した。
(ええと、ミリシアってお昼休みに道場にふらりと立ち寄って、ブラドと初めて二人きりで話すのよね)
『王立学園の聖女』では、ブラドは当初、ミリシアにいい感情を抱いていない。日々の研鑽によって剣の腕を磨いているブラドにとっては、聖女は神が気まぐれに神聖魔法というギフトを与えた、ツキがいいだけの人物と映るからだ。
しかし、道場で交流を持ったブラドは、ミリシアという人物に徐々に興味を持っていく。
(そうはさせないわ。クラスメイトだし、どこかのタイミングで会話くらいはするだろうけど、道場でのイベントがなければ単なるクラスメイトの域は出ないはず)
ミリシアがブラドと結ばれるルートに入った場合もキュロットの破滅フラグは立ってしまう。
ミリシアが近衛騎士団長夫人となれば、王宮でも顔を合わせる間柄になってしまうからと、何かと暗躍した挙げ句に島流しとなるのだ。
器ちっさ!
でもそういうところもキュロットの愛嬌!
私が道場に辿り着くと、中ではブラドが剣の素振りをしていた。ホームルームが終わったあと、ブラドも私と同様、すぐに教室を出て、日課の鍛錬をしていたらしい。
ブラドは私の姿を認めると、笑顔を浮かべて言った。
「シエザ! 俺様に会いに来てくれたのか!?」
「ああいや、ここにミリシアが来るかもと思って」
私の返答を聞いたブラドは明らかに気落ちし、しょんぼりと肩を落とす。
「何だ、聖女に用事か。一足遅かったな。ついさっきまでここにいたんだが」
「はあ!? ミリシア、こっちのイベントも消化したの!?」
「イベント?」
まずい。非常にまずい。
キュロットが何をしても悪役令嬢としての評価しか得られないように、ミリシアはヒロイン補正でもかかっているのかもしれない。
(だとしたら、ブラドはもうミリシアに興味津々だったり……?)
私は恐る恐るブラドに問いかける。
「ミリシアとはどんなこと話したの? あと、印象というか。可愛い子だなーとか、そんなこと思った?」
ブラドは最初、キョトンとした様子で私を見返してきたが、何かに気付いたかのようにハッとした表情になる。
ブラドはぶんぶんと勢いよく首を振ると、手にしている剣を横に寝かせた状態で突き出してきた。
「俺様はシエザに剣を捧げたんだ! 他の女性にうつつを抜かしたりはしない!」
「へ? それってどういう関係が……ああそうか。今は剣の修行が大事だから、他のことなんて考えてられないって意味ね」
「うっ……まあいい。変な誤解を受けるよりはマシだ。それに、会話も何も、ミリシアはすぐに出ていったぞ」
「そうなの?」
「ああ。その時はちょうどフレイムソードを使って剣舞をしていたんたが、ミリシアは道場に入ってくるなり、『何でこの時点でフレイムソード扱えるようになってんの!?』とか何とか叫んで、そのまま出ていった」
ブラドの言葉に私は眉をひそめる。
「ああ。しかし手紙の主は彼女ではないらしい。それで、きっとシエザに違いないと、こうして待っていたんだ」
「え? 何でそこで私の名前が出てくるの?」
「いや、それはそのぉ……」
言い淀むヒーシスを訝りつつも、差出人が現れなかったのなら、手紙は単なる悪戯だろうと私は判断した。そうと気付かずいつまでも待っているとは、育ちの良さゆえか、あるいはぼっちの性か。
何にせよイベント発生のタイミングが不規則になっているのなら、ここでのんびりしている場合ではない。
「私ちょっと急ぎの用事あるから! それじゃ!」
そう言うと、待ちぼうけを食っているヒーシスをその場に残して駆け出した。
(ええと、ミリシアってお昼休みに道場にふらりと立ち寄って、ブラドと初めて二人きりで話すのよね)
『王立学園の聖女』では、ブラドは当初、ミリシアにいい感情を抱いていない。日々の研鑽によって剣の腕を磨いているブラドにとっては、聖女は神が気まぐれに神聖魔法というギフトを与えた、ツキがいいだけの人物と映るからだ。
しかし、道場で交流を持ったブラドは、ミリシアという人物に徐々に興味を持っていく。
(そうはさせないわ。クラスメイトだし、どこかのタイミングで会話くらいはするだろうけど、道場でのイベントがなければ単なるクラスメイトの域は出ないはず)
ミリシアがブラドと結ばれるルートに入った場合もキュロットの破滅フラグは立ってしまう。
ミリシアが近衛騎士団長夫人となれば、王宮でも顔を合わせる間柄になってしまうからと、何かと暗躍した挙げ句に島流しとなるのだ。
器ちっさ!
でもそういうところもキュロットの愛嬌!
私が道場に辿り着くと、中ではブラドが剣の素振りをしていた。ホームルームが終わったあと、ブラドも私と同様、すぐに教室を出て、日課の鍛錬をしていたらしい。
ブラドは私の姿を認めると、笑顔を浮かべて言った。
「シエザ! 俺様に会いに来てくれたのか!?」
「ああいや、ここにミリシアが来るかもと思って」
私の返答を聞いたブラドは明らかに気落ちし、しょんぼりと肩を落とす。
「何だ、聖女に用事か。一足遅かったな。ついさっきまでここにいたんだが」
「はあ!? ミリシア、こっちのイベントも消化したの!?」
「イベント?」
まずい。非常にまずい。
キュロットが何をしても悪役令嬢としての評価しか得られないように、ミリシアはヒロイン補正でもかかっているのかもしれない。
(だとしたら、ブラドはもうミリシアに興味津々だったり……?)
私は恐る恐るブラドに問いかける。
「ミリシアとはどんなこと話したの? あと、印象というか。可愛い子だなーとか、そんなこと思った?」
ブラドは最初、キョトンとした様子で私を見返してきたが、何かに気付いたかのようにハッとした表情になる。
ブラドはぶんぶんと勢いよく首を振ると、手にしている剣を横に寝かせた状態で突き出してきた。
「俺様はシエザに剣を捧げたんだ! 他の女性にうつつを抜かしたりはしない!」
「へ? それってどういう関係が……ああそうか。今は剣の修行が大事だから、他のことなんて考えてられないって意味ね」
「うっ……まあいい。変な誤解を受けるよりはマシだ。それに、会話も何も、ミリシアはすぐに出ていったぞ」
「そうなの?」
「ああ。その時はちょうどフレイムソードを使って剣舞をしていたんたが、ミリシアは道場に入ってくるなり、『何でこの時点でフレイムソード扱えるようになってんの!?』とか何とか叫んで、そのまま出ていった」
ブラドの言葉に私は眉をひそめる。
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