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第十六話 高笑い⑤
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私は握りしめていたルフォートの手をぶんぶんと上下に振って感謝の意を示した。しかしルフォートは、何となく釈然としない面持ちだ。
「どうかしたの?」
「そうだな。少しばかり自信喪失かもな。ラブソングを歌い上げた直後だったし、シエザが思いも寄らない情熱的な面を見せて、皆の前で愛の告白をしてくれるとばかり思っていたのに」
「へ……?」
ルフォートに愛の告白をする場面をまざまざと想像してしまい、全身がカアッと熱くなった。何の気なしに握っていたルフォートの手を慌てて離し、どもりながら言う。
「あ、いや、ルフォートはすごく素敵よ。歌ってる姿も天使みたいで聞き惚れちゃったし。だから自信喪失なんて」
私の反応がお気に召したのだろうか。ルフォートは悪戯っぽい笑みを浮かべて問いかけてくる。
「ふーん、そうなのか。それじゃあどうして愛を囁いてくれないのかな? シエザみたいな子が相手なら、俺だって……」
「ふへ? いやいやそんな! だって私は単なる取り巻きのモブで、メインキャラ相手にそういうのなんて!」
「言ってることがよくわからないな。ただね、シエザ」
ルフォートが不意に手を伸ばしてきて、私の頬にそっと触れた。そして優しい声音で、教え諭すように告げる。
「シエザはもっと、自分自身が輝くことを考えてもいいんじゃないかな? 何に遠慮しているかは知らないけれど、君はとても魅力的な女性なのだから……」
ルフォートは女たらしのキャラになっているし、これは単なるリップ・サービスに違いない。
そうは思うものの、心臓は舞い上がるようにバクバクと鼓動を打った。頬に当てられた掌から心音が伝わるのではと気が気でない。
私は反応に窮し、ルフォートをただただ見つめ返した。
そのまま二人して見つめ合っていると、不意に人影が私達の間に割って入り、両腕を左右に突っ張るようにして引き離す。
驚いて見やると、人影の主はキュロットだった。キュロットはなぜだか責めるような眼差しを私に送ったあと、頬を引きつらせながらルフォートに言う。
「歌のレッスンをしてくださるのよね? 善は急げと申しますし、早速お願いいたしますわ」
「ああ、構わないよ。それじゃあ場所を移そうか。快音を出しても……じゃなかった。大きな声を出しても迷惑にならない場所があればいいんだが」
「それならバックガーデンとかどうかしら? あそこなら人もめったに来ないだろうし」
私がそう提案すると、ルフォートは頷いて言う。
「そんな場所があるとは知らなかったな。それじゃあ案内を頼もうか。せっかくだし、シエザにも手取り足取り愛の歌を教えてあげるよ」
ルフォートが再び手を伸ばしてくる。どうやら頭をぽんぽんと撫でるつもりのようだ。
普通なら身構えるところだろうが、イケメンからの頭ぽんぽんとなると話は別だ。
ちょっといいかも、と心なしか待ち構えていると、ルフォートの腕を横からガシッと絡め取る人物がいた。笑顔を浮かべてはいるものの、こめかみ辺りに怒りマークをつけているブラドである。
「面白そうだから俺様もレッスンに参加しよう。文句ないよな?」
ルフォートの肩がギュウッと掴まれた。顔をしかめたルフォートが振り返ると、そこにはヒーシスの姿がある。
「ふむ、それならば私も仲間に入れてもらおう」
二人がフッフッフッと、何やら警告じみた笑みでルフォートを取り囲んでいる。
私は小首を傾げながらも、この三人は本当に仲がいいなぁと、安穏とした感想を抱くのだった。
「どうかしたの?」
「そうだな。少しばかり自信喪失かもな。ラブソングを歌い上げた直後だったし、シエザが思いも寄らない情熱的な面を見せて、皆の前で愛の告白をしてくれるとばかり思っていたのに」
「へ……?」
ルフォートに愛の告白をする場面をまざまざと想像してしまい、全身がカアッと熱くなった。何の気なしに握っていたルフォートの手を慌てて離し、どもりながら言う。
「あ、いや、ルフォートはすごく素敵よ。歌ってる姿も天使みたいで聞き惚れちゃったし。だから自信喪失なんて」
私の反応がお気に召したのだろうか。ルフォートは悪戯っぽい笑みを浮かべて問いかけてくる。
「ふーん、そうなのか。それじゃあどうして愛を囁いてくれないのかな? シエザみたいな子が相手なら、俺だって……」
「ふへ? いやいやそんな! だって私は単なる取り巻きのモブで、メインキャラ相手にそういうのなんて!」
「言ってることがよくわからないな。ただね、シエザ」
ルフォートが不意に手を伸ばしてきて、私の頬にそっと触れた。そして優しい声音で、教え諭すように告げる。
「シエザはもっと、自分自身が輝くことを考えてもいいんじゃないかな? 何に遠慮しているかは知らないけれど、君はとても魅力的な女性なのだから……」
ルフォートは女たらしのキャラになっているし、これは単なるリップ・サービスに違いない。
そうは思うものの、心臓は舞い上がるようにバクバクと鼓動を打った。頬に当てられた掌から心音が伝わるのではと気が気でない。
私は反応に窮し、ルフォートをただただ見つめ返した。
そのまま二人して見つめ合っていると、不意に人影が私達の間に割って入り、両腕を左右に突っ張るようにして引き離す。
驚いて見やると、人影の主はキュロットだった。キュロットはなぜだか責めるような眼差しを私に送ったあと、頬を引きつらせながらルフォートに言う。
「歌のレッスンをしてくださるのよね? 善は急げと申しますし、早速お願いいたしますわ」
「ああ、構わないよ。それじゃあ場所を移そうか。快音を出しても……じゃなかった。大きな声を出しても迷惑にならない場所があればいいんだが」
「それならバックガーデンとかどうかしら? あそこなら人もめったに来ないだろうし」
私がそう提案すると、ルフォートは頷いて言う。
「そんな場所があるとは知らなかったな。それじゃあ案内を頼もうか。せっかくだし、シエザにも手取り足取り愛の歌を教えてあげるよ」
ルフォートが再び手を伸ばしてくる。どうやら頭をぽんぽんと撫でるつもりのようだ。
普通なら身構えるところだろうが、イケメンからの頭ぽんぽんとなると話は別だ。
ちょっといいかも、と心なしか待ち構えていると、ルフォートの腕を横からガシッと絡め取る人物がいた。笑顔を浮かべてはいるものの、こめかみ辺りに怒りマークをつけているブラドである。
「面白そうだから俺様もレッスンに参加しよう。文句ないよな?」
ルフォートの肩がギュウッと掴まれた。顔をしかめたルフォートが振り返ると、そこにはヒーシスの姿がある。
「ふむ、それならば私も仲間に入れてもらおう」
二人がフッフッフッと、何やら警告じみた笑みでルフォートを取り囲んでいる。
私は小首を傾げながらも、この三人は本当に仲がいいなぁと、安穏とした感想を抱くのだった。
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