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第十四話 ブラド・シュター③
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このまま一休みしたい欲求を振り払い、ブラドはシエザの元へと駆け寄った。
シエザは朦朧とした様子ながらも、ブラドに微笑みかけてくる。
「……ほらね。やっぱりできたじゃない」
「うん。シエザのおかげだよ。ありがとう。傷は大丈夫? ちょっと見せて」
「ああ、平気平気。少し切れただけだから。それよりも魔力切れのほうがキツくて……ごめん、少しだけ眠らせて……」
そう言うなり、シエザはへたり込むようにして地面に横たわり目を閉じる。
が、ふと思い出したように唇だけ動かした。
「そうそう、言い忘れてた。すごく……カッコよかったよ、ブラド……」
全身がカァッと熱くなった。カッコイイなんてとんでもないと否定しようとしたが、シエザは既に意識を手放しており、すうすうと心地よさげに寝息が聞こえてくる。
その寝顔を食い入るように眺めていたブラドは、やがてシエザへそっと手を伸ばした。
いったい自分は何をしようとしているのか。その答えもわからぬまま、吸い寄せられるように伸ばした指先が、今まさにシエザの頬に触れる――
と、その時だ。
「ブラド! シエザ! いるなら返事をしてくれ!」
そんな声が不意に洞窟の奥から響いた。
ブラドはハッとなり、慌てて手を引っ込める。
聞こえてくる声はヒーシスのものだ。複数の足音もするので、先生たちの元へ戻ったのち、救援隊を組んで二層へと降りてきてくれたのだろう。
これだけ早く駆けつけるということは、どうやらシエザは本当に第二層の構造を熟知しており、一層へと繋がる最短ルートを選んでいたのだと思われる。
心底安堵する場面のはずだが、少しだけ残念に思う気持ちが胸をかすめた。その理由はきっと、側で心地よさそうに眠るシエザの存在だろう。
(もう少しだけ、二人きりでいたかったな)
ブラドは一つ苦笑を零したあと、自分たちの生存を伝えるため、大きな声を上げてヒーシスたちを呼んだ。
シエザは朦朧とした様子ながらも、ブラドに微笑みかけてくる。
「……ほらね。やっぱりできたじゃない」
「うん。シエザのおかげだよ。ありがとう。傷は大丈夫? ちょっと見せて」
「ああ、平気平気。少し切れただけだから。それよりも魔力切れのほうがキツくて……ごめん、少しだけ眠らせて……」
そう言うなり、シエザはへたり込むようにして地面に横たわり目を閉じる。
が、ふと思い出したように唇だけ動かした。
「そうそう、言い忘れてた。すごく……カッコよかったよ、ブラド……」
全身がカァッと熱くなった。カッコイイなんてとんでもないと否定しようとしたが、シエザは既に意識を手放しており、すうすうと心地よさげに寝息が聞こえてくる。
その寝顔を食い入るように眺めていたブラドは、やがてシエザへそっと手を伸ばした。
いったい自分は何をしようとしているのか。その答えもわからぬまま、吸い寄せられるように伸ばした指先が、今まさにシエザの頬に触れる――
と、その時だ。
「ブラド! シエザ! いるなら返事をしてくれ!」
そんな声が不意に洞窟の奥から響いた。
ブラドはハッとなり、慌てて手を引っ込める。
聞こえてくる声はヒーシスのものだ。複数の足音もするので、先生たちの元へ戻ったのち、救援隊を組んで二層へと降りてきてくれたのだろう。
これだけ早く駆けつけるということは、どうやらシエザは本当に第二層の構造を熟知しており、一層へと繋がる最短ルートを選んでいたのだと思われる。
心底安堵する場面のはずだが、少しだけ残念に思う気持ちが胸をかすめた。その理由はきっと、側で心地よさそうに眠るシエザの存在だろう。
(もう少しだけ、二人きりでいたかったな)
ブラドは一つ苦笑を零したあと、自分たちの生存を伝えるため、大きな声を上げてヒーシスたちを呼んだ。
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