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第十二話 バトります②
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「とりあえず片付いたわね。キュロット、みんなの魔力回復をお願い。怪我の有無もチェックね」
そう言い置いて、私は魔素や魔鉱石の採集のため、さっさと辺りの探索に移った。
キュロットが何か言いかけたが、諦めたように口を噤み、近くにいたブラドの魔力回復に注力する。
ここに至るまでの道程でも、私は戦闘が終わればすぐさま魔素回収に入り、回復は一番最後にしてもらっている。そのがめつさ――もとい、熱意に打たれ、キュロットも余計な口は挟まず、魔素回収に専念させてくれているのだろう。
私は鼻歌まじりに魔物たちの成れの果て、魔素を拾い集めていく。
デスワームが掘り進んできたのであろう横穴には、魔鉱石の輝きもみえた。ゲームではアイテムを使って岩を砕かなければならないが、どうやらその手間も省けそうだ。
(おお、大漁大漁。きっちり五等分しても王都で一年は暮らせるだけの額になるんじゃない?)
頬を緩めながら魔素を拾い集めていくが、頭の片隅でかすかな違和感も覚えた。
リグルの洞窟が学生の鍛錬場としても開放されている理由の一つとして、魔物の生息数が低いことが挙げられる。ゲームでも一、二体の魔物と会敵するような戦闘が散発するだけだったので、私も楽勝だと思って意気揚々と進んでいたわけなのだが。
(うーん。やっぱり実際やってみるとゲームみたいに簡単にはいかないのかな。
キュロットたちの性格もゲームとは違うし、ヒロインが転入してきたらさらに一悶着ありそう。気を引き締めていかないとね)
そんなことを考えつつ、地面に転がっている魔素を拾い上げようとした時だ。横合いから伸びてきた手が、魔素を恐る恐るといった風に摘む。
ふと顔を上げれば、ブラドの気弱な笑みが目にとまった。
「あれ? もう魔力回復すんだの?」
「僕はほとんど魔力使わなかったから。むしろ足手まといになっただけだね……」
「そんなことはないと思うけど」
「いいんだ。僕自身が一番良くわかってるから。せめて魔素の回収、手伝うよ」
ブラドはそう言うと、辺りに散乱する魔素を拾い始める。しかしその表情は曇ったままで、何だか今にも泣き出してしまいそうだ。
心配になってブラドの様子を窺っていると、彼の口からため息まじりの声が漏れる。
「みんなすごいよね。魔物に臆することもないし、ほとんど初めての実戦のはずなのに、戦闘も危なげない」
「まあ、キュロットとヒーシスがいるから、だいぶ余裕を持って戦えてはいるわよね」
キュロットが先ほど唱えたソウルイーターは、相手の魔力だけでなく、魂さえも奪い去る即死魔法だ。
魔法耐性の強い相手には効かないだろうが、雑魚モンスターなら一瞬にして狩り尽くすことのできる中等魔法。本来ならばゲームの中盤以降にお目見えするものである。
(新たな魔法回路の組み立てを勉強するみたいなこと前に言ってたし、きっと屋敷に帰っても魔法書読み漁ったりしてんだろうな)
ヒーシスが披露した魔法はグラビティノア。こちらも中等魔物だ。
『王立学園の聖女』では、王太子という立場柄、ヒーシスは模擬戦闘や洞窟探索に参加することはなく、時折イベントバトルに顔を出すだけ。
そのため彼のポテンシャルは未知数だったのだが、そこは王族であるメインキャラ。悪役令嬢のキュロット同様、チート級の実力者であるらしい。
そう言い置いて、私は魔素や魔鉱石の採集のため、さっさと辺りの探索に移った。
キュロットが何か言いかけたが、諦めたように口を噤み、近くにいたブラドの魔力回復に注力する。
ここに至るまでの道程でも、私は戦闘が終わればすぐさま魔素回収に入り、回復は一番最後にしてもらっている。そのがめつさ――もとい、熱意に打たれ、キュロットも余計な口は挟まず、魔素回収に専念させてくれているのだろう。
私は鼻歌まじりに魔物たちの成れの果て、魔素を拾い集めていく。
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(おお、大漁大漁。きっちり五等分しても王都で一年は暮らせるだけの額になるんじゃない?)
頬を緩めながら魔素を拾い集めていくが、頭の片隅でかすかな違和感も覚えた。
リグルの洞窟が学生の鍛錬場としても開放されている理由の一つとして、魔物の生息数が低いことが挙げられる。ゲームでも一、二体の魔物と会敵するような戦闘が散発するだけだったので、私も楽勝だと思って意気揚々と進んでいたわけなのだが。
(うーん。やっぱり実際やってみるとゲームみたいに簡単にはいかないのかな。
キュロットたちの性格もゲームとは違うし、ヒロインが転入してきたらさらに一悶着ありそう。気を引き締めていかないとね)
そんなことを考えつつ、地面に転がっている魔素を拾い上げようとした時だ。横合いから伸びてきた手が、魔素を恐る恐るといった風に摘む。
ふと顔を上げれば、ブラドの気弱な笑みが目にとまった。
「あれ? もう魔力回復すんだの?」
「僕はほとんど魔力使わなかったから。むしろ足手まといになっただけだね……」
「そんなことはないと思うけど」
「いいんだ。僕自身が一番良くわかってるから。せめて魔素の回収、手伝うよ」
ブラドはそう言うと、辺りに散乱する魔素を拾い始める。しかしその表情は曇ったままで、何だか今にも泣き出してしまいそうだ。
心配になってブラドの様子を窺っていると、彼の口からため息まじりの声が漏れる。
「みんなすごいよね。魔物に臆することもないし、ほとんど初めての実戦のはずなのに、戦闘も危なげない」
「まあ、キュロットとヒーシスがいるから、だいぶ余裕を持って戦えてはいるわよね」
キュロットが先ほど唱えたソウルイーターは、相手の魔力だけでなく、魂さえも奪い去る即死魔法だ。
魔法耐性の強い相手には効かないだろうが、雑魚モンスターなら一瞬にして狩り尽くすことのできる中等魔法。本来ならばゲームの中盤以降にお目見えするものである。
(新たな魔法回路の組み立てを勉強するみたいなこと前に言ってたし、きっと屋敷に帰っても魔法書読み漁ったりしてんだろうな)
ヒーシスが披露した魔法はグラビティノア。こちらも中等魔物だ。
『王立学園の聖女』では、王太子という立場柄、ヒーシスは模擬戦闘や洞窟探索に参加することはなく、時折イベントバトルに顔を出すだけ。
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