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第五話 王太子殿下①
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「はぁ。これ一体どうなってんのよ」
キュロットだけでなく、ブラドやルフォートまであの変わり様とは。
(いや待てよ。『王立学園の聖女』って、ヒロインが転入するとこからスタートなわけだし。むしろこれから数ヶ月で、キュロットたちが変貌するってこと?)
それはそれで信じられない事態である。何せあの三人は、私の知るキャラクターとは似ても似つかない。たった数ヶ月で、いったい何が彼女らを変貌させるというのか。
頭を悩ませながら学園内をさまよっていた私は、やがて敷地の奥まった場所で、寂れたガーデンアーチを見つけた。
「あ、ここ見たことある」
ガーデンアーチを潜って奥へ進むと、予想通りのバックガーデンへと出た。本来ならば色彩豊かな花が咲き誇るのだろうが、ここは久しく人の手が入っていないようで、庭園というよりも荒れ地という風情でうら寂しい。
なぜこんな場所が王立学園に存在するのか。
ゲーム内で描かれている話によれば、ここは学園の創立者であり、稀代の聖魔法の使い手であった大賢者のプライベートガーデンであったらしい。
花の精霊にも慕われた大賢者がこの世を去ると、このバックガーデンに宿る精霊たちも生気をなくしてしまい、以降、いくら庭を整備しても植物が一向に花を咲かせなくなってしまったという。
そのため今では人気のない、忘れ去られた庭園となっているのだ。
(……といっても、ヒロインがここを訪れるようになったら一変するんだけどね)
私は辺りを散策し、やがてお目当ての場所に至った。そこには大理石の小さな噴水と、その周りを囲うように造られた花壇がある。
伸び放題の雑草に埋もれるように見えるのは、もはや自生しているといってもいい、花をつけていない茨の群生。大賢者が存命の頃には、ホワイトローズが咲き誇っていた花壇である。
「転入してきたヒロインが、何かに導かれるようにここにやって来るのよね。そして聖魔法の力を草花に注ぎ込んで、このバックガーデンを昔の美しい庭園の姿に戻す」
それはゲームの強制イベントの一つだ。ここから物語が動き出すといっても過言ではない重要な場所。
「まあ、悪役令嬢の取り巻きである私には関係ない話だけど。聖魔法なんて使えないし」
というか、そもそも魔法ってどうやって扱うのだろうか。
シエザは学園でも随一の氷魔法の使い手……という設定だ。今の私でも多少の魔法は扱えるはずなのだが。
(せっかくだし、ちょっと試してみるか)
こちとらゲーマーであり、『王立学園の聖女』のチュートリアルも体験済みだ。魔法を扱う際には己の身体を巡る魔力を感じ取り、それを具現化するためのイマジネーションが大切なはず。
そう考えた私は、目を瞑って呼吸を整えていった。すると全身に通う血液を感じ取るように、体内に何か緩やかな流れがあるのを知覚する。
これが魔力と呼ばれるものだろうと直感した私は、次に胸元に小さな氷の結晶が生み出されていく様をイメージし、それが顕現するよう、体内から魔力を放出して編み込んでいく。
(……こんなもんかな)
手応えを感じた私は胸元に両手をやり、ゆっくりと瞼を開いてみる。すると掌の上に、私がイメージした通りの、ダイヤモンドのように光り輝く氷のクリスタルが出現していた。
「おお。これはちょっとした感動ものだ」
キュロットだけでなく、ブラドやルフォートまであの変わり様とは。
(いや待てよ。『王立学園の聖女』って、ヒロインが転入するとこからスタートなわけだし。むしろこれから数ヶ月で、キュロットたちが変貌するってこと?)
それはそれで信じられない事態である。何せあの三人は、私の知るキャラクターとは似ても似つかない。たった数ヶ月で、いったい何が彼女らを変貌させるというのか。
頭を悩ませながら学園内をさまよっていた私は、やがて敷地の奥まった場所で、寂れたガーデンアーチを見つけた。
「あ、ここ見たことある」
ガーデンアーチを潜って奥へ進むと、予想通りのバックガーデンへと出た。本来ならば色彩豊かな花が咲き誇るのだろうが、ここは久しく人の手が入っていないようで、庭園というよりも荒れ地という風情でうら寂しい。
なぜこんな場所が王立学園に存在するのか。
ゲーム内で描かれている話によれば、ここは学園の創立者であり、稀代の聖魔法の使い手であった大賢者のプライベートガーデンであったらしい。
花の精霊にも慕われた大賢者がこの世を去ると、このバックガーデンに宿る精霊たちも生気をなくしてしまい、以降、いくら庭を整備しても植物が一向に花を咲かせなくなってしまったという。
そのため今では人気のない、忘れ去られた庭園となっているのだ。
(……といっても、ヒロインがここを訪れるようになったら一変するんだけどね)
私は辺りを散策し、やがてお目当ての場所に至った。そこには大理石の小さな噴水と、その周りを囲うように造られた花壇がある。
伸び放題の雑草に埋もれるように見えるのは、もはや自生しているといってもいい、花をつけていない茨の群生。大賢者が存命の頃には、ホワイトローズが咲き誇っていた花壇である。
「転入してきたヒロインが、何かに導かれるようにここにやって来るのよね。そして聖魔法の力を草花に注ぎ込んで、このバックガーデンを昔の美しい庭園の姿に戻す」
それはゲームの強制イベントの一つだ。ここから物語が動き出すといっても過言ではない重要な場所。
「まあ、悪役令嬢の取り巻きである私には関係ない話だけど。聖魔法なんて使えないし」
というか、そもそも魔法ってどうやって扱うのだろうか。
シエザは学園でも随一の氷魔法の使い手……という設定だ。今の私でも多少の魔法は扱えるはずなのだが。
(せっかくだし、ちょっと試してみるか)
こちとらゲーマーであり、『王立学園の聖女』のチュートリアルも体験済みだ。魔法を扱う際には己の身体を巡る魔力を感じ取り、それを具現化するためのイマジネーションが大切なはず。
そう考えた私は、目を瞑って呼吸を整えていった。すると全身に通う血液を感じ取るように、体内に何か緩やかな流れがあるのを知覚する。
これが魔力と呼ばれるものだろうと直感した私は、次に胸元に小さな氷の結晶が生み出されていく様をイメージし、それが顕現するよう、体内から魔力を放出して編み込んでいく。
(……こんなもんかな)
手応えを感じた私は胸元に両手をやり、ゆっくりと瞼を開いてみる。すると掌の上に、私がイメージした通りの、ダイヤモンドのように光り輝く氷のクリスタルが出現していた。
「おお。これはちょっとした感動ものだ」
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