魔物になった四人の臣下を人間に戻すため王様は抱かれて魔王になる

くろなが

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【二章】四人の魔術師

十八話 王 エダム視点

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「私達は貴方の臣下です」


 クワルクが誰よりも早く毅然とした態度で言った。皆が動揺する中で見習うべき対応の早さだ。
 しかし、ルーシャンはその言葉に唇を噛んだ。


「……そんなものは、いない……」
「どうして? 君がルーシャンだからかい?」


 まさかの否定に、僕は咄嗟にそう聞いていた。
 ルーシャンは王ではないから、臣下を必要としていないのかもしれない、という思いは前々からあった。それならそれで構わない。僕達はただ側にいられれば良いのだ。
 だが、ルーシャンの反応は想像と違った。


「ルーシャン……とは、誰だ」


 その言葉に僕達は息を呑む。冗談である可能性も考えたが、ルーシャンの怪訝そうに眉を寄せる顔を見る限り、ふざけているとは思えなかった。
 ウルダがハッとした表情をした後に、その場で跪いた。


「ルービン、様?」
「ああ……俺は、ルービンだが……」


 ルーシャンは自らがルービンであると確かに言った。
 つまり、今のルーシャンは、ルーシャンである事を忘れ、ルービン様の意識だけがあるという事なのだろうか。
 それならば、何故僕達を覚えていてくださらないのだ。王ならば僕達を忘れるはずがない。
 勝手に内側から溢れ出そうになる言葉を必死に押しとどめた。そうしなければ、みっともなく喚いてしまいそうだった。その想いはリヴァロも同じだったらしく、絞り出すような声で叫んでいた。


「じゃあ……絶対、俺達の事わかるはずだよ、ルービン様なら……!」


 リヴァロの悲痛な声に、ルーシャンも傷付いた表情をした。
 何かを言おうとするが、ルーシャンは声を発せずに口を動かすだけだ。胸元の服をグシャリと掴み、苦し気に俯いたが、それでもルーシャンは必死に言葉を吐き出した。


「わからない……わからない……いや、昔はいたんだ……そう、昔は……いた。大切な、臣下が……」


 うわ言のようにそう呟くルーシャンを、僕達はただ静かに見つめていた。
 少しの間を置きルーシャンは弱々しく首を横に振り、顔を上げる。そして諦めたように笑った。


「でも、もういない……俺が……手放したから……」


 記憶が混濁していようと、王はずっと自らの選択を後悔し、己を常に責めている。それが痛い程に伝わってきた。そこまで想われている僕達は幸せ者だ。
 王という立場の命令だからではなく、僕達は貴方だからこの道を選んだのだ。たとえ貴方が王などでなくても従うだろう。だから王が責任を感じるのは間違っている。
 何より貴方は僕達を諦めなかった。だからこうして再び出会えたのだ。もう自らを責める必要はない。そう伝えなければと、僕はルーシャンの両手を強く握った。


「手放してなんていない。ルービン様は常に僕達の事だけを考えていた。そして、貴方は再び臣下との再会を果たしたんだ」
「……俺は、臣下と……会えるのか……?」


 そう言ったルーシャンの瞳には少しだけ希望の光が宿っていた。
 王は転生なんて夢物語でしかないものに縋り、なんの確証のない未来に全てを託さなければいけなかった。
 僕達を助けるという約束を守れるのか、不安で仕方なかっただろう。その不安を取り除こうとでもするように、クワルクが更に手を重ねてきた。


「会えます、貴方が諦めなければ必ず」
「本当に……? 臣下たちは……俺の事、憎んでいないだろうか……嫌っては、いないだろうか……」


 僕達に嫌われる事を恐れ、怯えて縮こまっている姿になんとも言えない愛しさが込み上げてくる。
 どれだけ強くても、王だってただの人だ。やはり僕達でお守りしなければならない。珍しく素早い動きでウルダも手を重ね、ハッキリと告げた。


「嫌うなんて、あり得ません。ずっと、ずっと、貴方を愛しています」


 ウルダの力強い言葉にルーシャンは驚いて目を開いたが、すぐに照れたように微笑んだ。


「生まれ変わっても……王でなくなっても、愛してくれるのだろうか……」
「当たり前だろ! むしろ立場の差が無くなったからこそ、もっともっと愛せますよ!!」


 すでに三人もいてギチギチになっているルーシャンの視界に、リヴァロが無理矢理入ってきて手を重ねる。あまりの必死さにルーシャンが笑い出した。


「ふふ、あはは! そうか、ならば安心だな……俺も、愛してると……伝え……なけれ……ば……」
「ルービン様!?」


 ルーシャンはボスッと枕に吸い込まれるように倒れ、そのままスースーと寝息を立て始めてしまう。
 さっきまでの休眠状態ではなく、今は疲れてただ眠っただけのようだ。いずれ自然と目覚めるだろう。僕達は安堵の微笑みを浮かべたが、まだ問題はある。
 無事にルーシャンを発掘できたが、村長の家にある大部屋は4つしか寝床がない。
 ルーシャンだけ別の御宅で寝かせてもらう事になるだろうが、それは嫌だった。もう王と片時も離れたくない。だから僕は皆に提案した。


「……とりあえず、急ごしらえでもいいから僕達の拠点を造らないかい?」
「そうですね」
「賛成」
「五人の、お城、欲しい」


 他の三人も同じ考えだったようだ。僕達はすぐに行動を開始した。ひとまず現状を村に報告にいくクワルクと、瓦礫のブロックで簡易的な壁を造るリヴァロ。ウルダは森の木から急ぎ全員分のベッドを作ったり床板を用意している。
 地下の施設まではルーシャンも破壊していなかったから、すぐに水回りの設備は作る事ができそうだ。僕は風呂などを担当することにした。

 人魔になったお陰か作業は想像よりスムーズに進み、一晩でそこそこ見栄えの良い石造りの家を完成させることができた。

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