45 / 125
【二章】四人の魔術師
十九話 現王 ウルダ視点
しおりを挟む地下の肉虫飼育部屋は改装してそのままルーシャンの部屋にした。
ひとまずは中央に円形の大きな天蓋付きベッドを作り寝かせてある。ルーシャンが起きたら要望を聞いて色々揃えよう。
現状、この土地を勝手に使って良いのかもわからないのだ。すぐ退去しなきゃいけない事も考えたらあまり凝った事はできなかった。
村人にも塔や土地の権利の事を聞いてみたが、誰もルーシャンから言付けは預かってないそうだ。
だが、伝承の魔物四天王がわたし達である事は村人全員が知っていたらしい。
近寄ってはいけない土地と言われている所に住むのだから、真実を知っておくべきだろうとルーシャンがある程度の塔の成り立ちを説明していたのだ。
いくらルーシャンに恩があっても、わたし達に親切過ぎると思っていたが、ようやく納得がいった。
村人には本当にお世話になったから、ルーシャンの掘り出しに協力してくれていた者達には、眠っているルーシャンとの面会もしてもらった。
頭に角が生えているくらいでは本当に誰も驚いてなかったので安心した。健康に問題が無さそうなルーシャンを見て喜んでくれ、その様子にこちらも嬉しくなる。
◇◇◇
あとはルーシャンの目覚めを待つだけ、という時。
ルーシャン発見から二日後の事だった。
夜、急ごしらえの新居のリビングで四人一緒に村名産の酒を飲んでいると、外から複数の気配を感じた。
村人でもない。魔物でもない。わたし達が知らない気配だった。わたし達は気配に集中し、一気に警戒を強める。
「俺がいく」
リヴァロが席を立って、出入口の扉の前に移動した。私達が少し距離を取り、臨戦態勢に入るとすぐにコンコンと木の扉がノックされた。いきなり扉を壊して突入、なんて手荒な真似をする相手じゃないのはありがたい。
「はーい、どちらさま~?」
警戒は解かずに、リヴァロは軽い調子で返事をした。扉の向こうの相手も想像より明るい声で答えた。
「シャウルス・リンド・ブルーミーと言えばわかるかな」
その名前にわたし達四人は顔を見合わせる。その名前は、現代初心者のわたし達でもここ最近の勉強で知っていた。
今、わたし達がいるこの国の王だ。何故シャウルス王がこんな所に。
さすがに現王を待たせる訳にもいかず、リヴァロは扉を開けた。
「突然の訪問すまないね。四人の魔術師達よ」
そこに立っていたのは十代後半と思しき若い男だ。
ふわりと柔らかそうな清潔感のある短めの金髪。顔は良いと思う。背はルーシャンくらい。姿勢が良く自信に溢れていて人を惹きつけそうだ。
目的がわからないうちに不興を買うわけにはいかない。わたし達はその場で跪いて頭を下げた。
「ふっ……流石はルーシャンが気に掛ける存在だ。立場を良く理解している」
ルーシャンと知り合いならば敵という事は無さそうだ。だが、目上の者に対して許しもなく発言する事はできないため、わたし達はそのままの姿勢を崩さない。
するとシャウルスがパンパンと両手を叩いた。
「形式的な事はここまででいいよ。余は一応忍んで来たからなぁ。公式な場ではないから立場は互いに忘れようじゃないか。今からは対等に話してくれると嬉しいな。あ、さすがに数人の護衛が同席することだけは許して欲しい」
思ったよりも気さくな王だ。それはこちらとしても普通に喋る事ができるのはありがたい。まあ、わたしは普段からあまり話さないから関係ないかもしれないが。
スッと立ち上がったクワルクは一礼し、酒を片付けてお茶を淹れ始める。わたしは新しい椅子を用意し、リヴァロとエダムは護衛の人間を招き入れた。お茶の席が整うとシャウルスが本題を切り出す。
「余の事は気軽にシャウルスと呼んでくれ。余はルーシャンの依頼で、そなたら四人の保護に来たんだ。絶対に悪いようにはしないよ」
20
お気に入りに追加
1,702
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる