魔物になった四人の臣下を人間に戻すため王様は抱かれて魔王になる

くろなが

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【二章】四人の魔術師

十九話 現王 ウルダ視点

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 地下の肉虫飼育部屋は改装してそのままルーシャンの部屋にした。
 ひとまずは中央に円形の大きな天蓋付きベッドを作り寝かせてある。ルーシャンが起きたら要望を聞いて色々揃えよう。
 現状、この土地を勝手に使って良いのかもわからないのだ。すぐ退去しなきゃいけない事も考えたらあまり凝った事はできなかった。

 村人にも塔や土地の権利の事を聞いてみたが、誰もルーシャンから言付けは預かってないそうだ。
 だが、伝承の魔物四天王がわたし達である事は村人全員が知っていたらしい。
 近寄ってはいけない土地と言われている所に住むのだから、真実を知っておくべきだろうとルーシャンがある程度の塔の成り立ちを説明していたのだ。
 いくらルーシャンに恩があっても、わたし達に親切過ぎると思っていたが、ようやく納得がいった。

 村人には本当にお世話になったから、ルーシャンの掘り出しに協力してくれていた者達には、眠っているルーシャンとの面会もしてもらった。
 頭に角が生えているくらいでは本当に誰も驚いてなかったので安心した。健康に問題が無さそうなルーシャンを見て喜んでくれ、その様子にこちらも嬉しくなる。



◇◇◇


 あとはルーシャンの目覚めを待つだけ、という時。
 ルーシャン発見から二日後の事だった。

 夜、急ごしらえの新居のリビングで四人一緒に村名産の酒を飲んでいると、外から複数の気配を感じた。
 村人でもない。魔物でもない。わたし達が知らない気配だった。わたし達は気配に集中し、一気に警戒を強める。


「俺がいく」


 リヴァロが席を立って、出入口の扉の前に移動した。私達が少し距離を取り、臨戦態勢に入るとすぐにコンコンと木の扉がノックされた。いきなり扉を壊して突入、なんて手荒な真似をする相手じゃないのはありがたい。


「はーい、どちらさま~?」


 警戒は解かずに、リヴァロは軽い調子で返事をした。扉の向こうの相手も想像より明るい声で答えた。


「シャウルス・リンド・ブルーミーと言えばわかるかな」


 その名前にわたし達四人は顔を見合わせる。その名前は、現代初心者のわたし達でもここ最近の勉強で知っていた。
 今、わたし達がいるこの国の王だ。何故シャウルス王がこんな所に。
 さすがに現王を待たせる訳にもいかず、リヴァロは扉を開けた。


「突然の訪問すまないね。四人の魔術師達よ」


 そこに立っていたのは十代後半と思しき若い男だ。
 ふわりと柔らかそうな清潔感のある短めの金髪。顔は良いと思う。背はルーシャンくらい。姿勢が良く自信に溢れていて人を惹きつけそうだ。
 目的がわからないうちに不興を買うわけにはいかない。わたし達はその場で跪いて頭を下げた。


「ふっ……流石はルーシャンが気に掛ける存在だ。立場を良く理解している」


 ルーシャンと知り合いならば敵という事は無さそうだ。だが、目上の者に対して許しもなく発言する事はできないため、わたし達はそのままの姿勢を崩さない。
 するとシャウルスがパンパンと両手を叩いた。


「形式的な事はここまででいいよ。余は一応忍んで来たからなぁ。公式な場ではないから立場は互いに忘れようじゃないか。今からは対等に話してくれると嬉しいな。あ、さすがに数人の護衛が同席することだけは許して欲しい」


 思ったよりも気さくな王だ。それはこちらとしても普通に喋る事ができるのはありがたい。まあ、わたしは普段からあまり話さないから関係ないかもしれないが。
 スッと立ち上がったクワルクは一礼し、酒を片付けてお茶を淹れ始める。わたしは新しい椅子を用意し、リヴァロとエダムは護衛の人間を招き入れた。お茶の席が整うとシャウルスが本題を切り出す。


「余の事は気軽にシャウルスと呼んでくれ。余はルーシャンの依頼で、そなたら四人の保護に来たんだ。絶対に悪いようにはしないよ」


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