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第五章
最終話:空白の時間
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エレナの世界での十日間。
色々あったが、無事にこの世界へ戻ってこられた。
下着姿でノエルとベッドを共にしていたことには驚いたけれど……。
それはさておき、間に合って本当によかったと思う。
壁の壊し方もわかったし、エレナの母にも会えた。
我ながら頑張ったと思うわ。
そういえば今回は時空の狭間に飛ばされず、直接体に戻ってきてしまった。
あちらの世界について報告をしたかったんだけれど……。
まぁそれは……魔女に会ってエレナを戻せるか確認してからにしましょう。
手には白い鍵の片割れ。
これで条件が整った。
私は服を着て落ち着きを取り戻すと、ノエルが温かい紅茶を用意してくれた。
ほっとするような香りに深く息を吸い込むと、湯気立つコップへ口を寄せる。
小さな木製のテーブルへ腰かけると、彼はコップを持ったまま向かいの席へやってきた。
紅茶を一口すすると、私がいない間の事を話し始めたのだった。
どうやら私がいなくなってから、こちらの世界では3か月と少しが経過していたようだ。
10倍時間の速度が違うのだから単純計算して100日が経過していれば終わっていた。
本当にギリギリだったようだ。
その間、エレナはずっと彼とここで一緒に暮らしていたらしい。
最初にその話を聞き、思い浮かんだのは二人がどう過ごしていたのかだった。
「えっ、あの……もしかして……」
私は赤面すると、モゴモゴと言葉を濁す。
愛し合う者同士が3か月も一緒に暮らして……それにベッドも同じ。
何もないわけがないわよね……。
自分の体を見つめると、何とも言えない気持ちが込み上げる。
魔力も十分すぎるほどあるみたいだし……。
貸すと言ったのは私だけど、ここまでは想定していなかった。
10日間だしとの思いもあったけど、3か月……長すぎる。
言い淀む私の姿にノエルはニッコリ笑みを深めると、こちらへゆっくりと顔を寄せる、
「もちろん、300年ずっと彼女を探していたからね~。愛するエレナを前にして我慢できるはずなんてない」
ノエルは耳元へ唇を寄せ耳たぶを甘く噛むと、ぞわぞわとした感覚と共に変な声が漏れる。
「ちょっ、ひゃっん」
「君の体は隅から隅まで知っているよ。耳が弱いこともね」
私は耳を抑えると、椅子から立ち上がり慌てて飛びのいた。
「なっ、何するの!」
「はははっ、ごめんごめん、可愛い反応に少しからかいたくなってね。何度かは君の体を味わったけれど、無茶はしていないよ。エレナが大切な体だと強情でね。それでえーと、どこまで話したかな」
私はむむむと唇を噛むと、クスクスと笑う彼を睨みつける。
彼は気にした様子はなく、そうだそうだ、と一人納得すると、また話し始めたのだった。
私と入れ替わったエレナは、崩れかけた地下で魔力切れを起こし死の淵にいたノエルを見つけ、夢の中へ入り彼を救った。
そのことで私の体は数週間程魔力が補充できなくなってしまったようだ。
そこでノエルがエレナを抱き、魔力を補充していたらしい。
まぁ……魔力を補充するだけの理由じゃないと思うけれど……。
ノエルを救った直後、大きな魔力を使った反動で地下は崩れ、九死に一生を得で二人は逃げ延びた。
ノエルはエレナと共に森の中へ逃げ込むと、暮らしてたこの家を魔法で作り上げ、ここで生活を始めたらしい。
ざっくり大まかな話を聞き終えると、当初の目的は達成されたようでほっと息をつく。
数百年の時を経て再会した二人。
ノエルはともかくエレナの力になれたことは嬉しい。
それにしても地下が崩れ落ちたって……ッッ。
「ちょっと待って、カミールとシナンはどうなったの?」
彼はニッコリ笑みを深めると、カップをテーブルへ置いた。
「二人なら無事だよ。逃げ延びて城へ戻ったのを確認済みだ」
無事との知らせに安心したが、そこでまた疑問が浮かぶ。
「うん?エレナはずっとここに居たのよね?ということは……私が生きていることを誰も知らないの?」
「大丈夫、伝えてあるから安心するといい。エレナにここで暮らす条件として、君の安否を知らせるように言われたんだ。君に迷惑をかけたくないんだと。一緒に暮らすとの説得も大変だったんだ。体を預かっている身として~どうのこうのってね。そこで妥協点を見つけたんだ。さすがに僕が行くと殺し合いになるだろうから、セドリックを使って知らせてある」
セドリックも無事なのね。
だけど彼が行っても同じじゃないのかしら。
「それで素直に納得してくれたの?」
「あぁもちろんさ。君を探し出そうとすれば殺すと伝えてあるからね」
あぁもうなんてことなの……。
私は頭を抱えると、ノエルを睨みつけたのだった。
*********************************************
おまけ(エレナとノエル)
昔二人が暮らしていたあの場所で。
10日間との約束で甘い生活が始まった。
日が昇った早朝。
ベッドには二人の影が浮かび上がった。
まだ日が昇ったばかりだというのに、なぜか騒々しい。
窓が勢いよく開くと、カーテンが大きくたなびいた。
「アカンってノエル、魔力は十分や」
窓を開けるエレナを邪魔するノエル。
後ろから抱きつき、どうやらベッドへ戻そうとしているようだ。
「そんなことないよ」
ノエルはエレナの太ももへ触れると股の間へと手を伸ばす。
クチュッと水音が響くと、エレナの顔がみるみる赤く染まった。
「もうノエル!これはちゃう、てか人様の体やで!」
「わかっているよ、だけどようやく会えたんだ。300年ずっと求めていた。それなのにたった10日間しか一緒にいられない。欲しいと思うのは当然だろう?君は思わないのかな……?」
ノエルはシュンっと眉を下げると、エレナの表情が変わった。
「えっ、いや、うちもそうや!けどなそれとこれとは……ッッ」
「同じ気持ちなら問題ないね。さぁベッドへ戻ろう。日が昇りきるにはまだ時間がかかる」
ノエルはエレナを軽々と抱き上げると、戸惑う彼女の額へキスを落とした。
「ノエルッッ、うぅ……」
「可愛い、ずっとずっと愛しているよ」
二人は唇を重ねると、ベッドへと沈んでいった。
色々あったが、無事にこの世界へ戻ってこられた。
下着姿でノエルとベッドを共にしていたことには驚いたけれど……。
それはさておき、間に合って本当によかったと思う。
壁の壊し方もわかったし、エレナの母にも会えた。
我ながら頑張ったと思うわ。
そういえば今回は時空の狭間に飛ばされず、直接体に戻ってきてしまった。
あちらの世界について報告をしたかったんだけれど……。
まぁそれは……魔女に会ってエレナを戻せるか確認してからにしましょう。
手には白い鍵の片割れ。
これで条件が整った。
私は服を着て落ち着きを取り戻すと、ノエルが温かい紅茶を用意してくれた。
ほっとするような香りに深く息を吸い込むと、湯気立つコップへ口を寄せる。
小さな木製のテーブルへ腰かけると、彼はコップを持ったまま向かいの席へやってきた。
紅茶を一口すすると、私がいない間の事を話し始めたのだった。
どうやら私がいなくなってから、こちらの世界では3か月と少しが経過していたようだ。
10倍時間の速度が違うのだから単純計算して100日が経過していれば終わっていた。
本当にギリギリだったようだ。
その間、エレナはずっと彼とここで一緒に暮らしていたらしい。
最初にその話を聞き、思い浮かんだのは二人がどう過ごしていたのかだった。
「えっ、あの……もしかして……」
私は赤面すると、モゴモゴと言葉を濁す。
愛し合う者同士が3か月も一緒に暮らして……それにベッドも同じ。
何もないわけがないわよね……。
自分の体を見つめると、何とも言えない気持ちが込み上げる。
魔力も十分すぎるほどあるみたいだし……。
貸すと言ったのは私だけど、ここまでは想定していなかった。
10日間だしとの思いもあったけど、3か月……長すぎる。
言い淀む私の姿にノエルはニッコリ笑みを深めると、こちらへゆっくりと顔を寄せる、
「もちろん、300年ずっと彼女を探していたからね~。愛するエレナを前にして我慢できるはずなんてない」
ノエルは耳元へ唇を寄せ耳たぶを甘く噛むと、ぞわぞわとした感覚と共に変な声が漏れる。
「ちょっ、ひゃっん」
「君の体は隅から隅まで知っているよ。耳が弱いこともね」
私は耳を抑えると、椅子から立ち上がり慌てて飛びのいた。
「なっ、何するの!」
「はははっ、ごめんごめん、可愛い反応に少しからかいたくなってね。何度かは君の体を味わったけれど、無茶はしていないよ。エレナが大切な体だと強情でね。それでえーと、どこまで話したかな」
私はむむむと唇を噛むと、クスクスと笑う彼を睨みつける。
彼は気にした様子はなく、そうだそうだ、と一人納得すると、また話し始めたのだった。
私と入れ替わったエレナは、崩れかけた地下で魔力切れを起こし死の淵にいたノエルを見つけ、夢の中へ入り彼を救った。
そのことで私の体は数週間程魔力が補充できなくなってしまったようだ。
そこでノエルがエレナを抱き、魔力を補充していたらしい。
まぁ……魔力を補充するだけの理由じゃないと思うけれど……。
ノエルを救った直後、大きな魔力を使った反動で地下は崩れ、九死に一生を得で二人は逃げ延びた。
ノエルはエレナと共に森の中へ逃げ込むと、暮らしてたこの家を魔法で作り上げ、ここで生活を始めたらしい。
ざっくり大まかな話を聞き終えると、当初の目的は達成されたようでほっと息をつく。
数百年の時を経て再会した二人。
ノエルはともかくエレナの力になれたことは嬉しい。
それにしても地下が崩れ落ちたって……ッッ。
「ちょっと待って、カミールとシナンはどうなったの?」
彼はニッコリ笑みを深めると、カップをテーブルへ置いた。
「二人なら無事だよ。逃げ延びて城へ戻ったのを確認済みだ」
無事との知らせに安心したが、そこでまた疑問が浮かぶ。
「うん?エレナはずっとここに居たのよね?ということは……私が生きていることを誰も知らないの?」
「大丈夫、伝えてあるから安心するといい。エレナにここで暮らす条件として、君の安否を知らせるように言われたんだ。君に迷惑をかけたくないんだと。一緒に暮らすとの説得も大変だったんだ。体を預かっている身として~どうのこうのってね。そこで妥協点を見つけたんだ。さすがに僕が行くと殺し合いになるだろうから、セドリックを使って知らせてある」
セドリックも無事なのね。
だけど彼が行っても同じじゃないのかしら。
「それで素直に納得してくれたの?」
「あぁもちろんさ。君を探し出そうとすれば殺すと伝えてあるからね」
あぁもうなんてことなの……。
私は頭を抱えると、ノエルを睨みつけたのだった。
*********************************************
おまけ(エレナとノエル)
昔二人が暮らしていたあの場所で。
10日間との約束で甘い生活が始まった。
日が昇った早朝。
ベッドには二人の影が浮かび上がった。
まだ日が昇ったばかりだというのに、なぜか騒々しい。
窓が勢いよく開くと、カーテンが大きくたなびいた。
「アカンってノエル、魔力は十分や」
窓を開けるエレナを邪魔するノエル。
後ろから抱きつき、どうやらベッドへ戻そうとしているようだ。
「そんなことないよ」
ノエルはエレナの太ももへ触れると股の間へと手を伸ばす。
クチュッと水音が響くと、エレナの顔がみるみる赤く染まった。
「もうノエル!これはちゃう、てか人様の体やで!」
「わかっているよ、だけどようやく会えたんだ。300年ずっと求めていた。それなのにたった10日間しか一緒にいられない。欲しいと思うのは当然だろう?君は思わないのかな……?」
ノエルはシュンっと眉を下げると、エレナの表情が変わった。
「えっ、いや、うちもそうや!けどなそれとこれとは……ッッ」
「同じ気持ちなら問題ないね。さぁベッドへ戻ろう。日が昇りきるにはまだ時間がかかる」
ノエルはエレナを軽々と抱き上げると、戸惑う彼女の額へキスを落とした。
「ノエルッッ、うぅ……」
「可愛い、ずっとずっと愛しているよ」
二人は唇を重ねると、ベッドへと沈んでいった。
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