[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

新章5:立ちはだかる壁

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私は意識を集中し、手のひらに魔力を集めると、空中にある水分をイメージしながらに水の玉を作り上げていく。
魔力が抜けていくのを感じながらに、丸く小さな水の玉が手に平に浮かび上がると、女王は興味深げに覗き込んだ。

「あら、素晴らしいわね~。何もないところから、水を作り上げるなんて。触れてみていいかしら?」

「女王陛下!!」

水の玉に触れようとする女王の手を、パトリシアは慌てて静止する。

「私が先に触れます、女王陛下はお待ちください」

「あらあら、ふふふ、心配性ねぇ」

パトリシアは私の前にやってくると、見上げるように視線を向けた。
探るように水の玉を見つめる姿に、私は空いている手で、水の玉へ触れて見せる。

「これはただの水です。安心して下さい」

彼女は恐る恐るといった様子で浮かび上がる水の玉に指先を伸ばすと、ポチャンと小さな音を立てた。
女王はその姿を楽しそうに眺めると、真似るように指先を近づける。
プルプルと浮かび水にピチャンとまた音が響くと、女王は嬉しそうに笑って見せた。

「これはすごいわね。本物の水だわ。もっと色々見せて頂きたいところだけれど……先にお願いしたいことがあるの」

女王は水の玉から指先を抜くと、そこから雫がポタポタ落ちていく。
私は慌てて風を彼女の指先へ集めると、水分を吹き飛ばした。

「あら、こんなことも出来るのね。魔法とは素晴らしいわ」

指先にまだ風が残っているのだろうか……女王はうっとりとした様子で指先を見つめる中、私は深く礼をみせる。
顔を上げ、透き通るようなブラウンの瞳に、私の姿が映り込むと、空気が張り詰めた。

「魔法使いさん、あなたもご存じでしょう?数百年前、愚かな私たちは東の国と争っていた。そうして戦いを終戦させたのはあの壁。それ以来あの壁は劣化する事なく、あり続けているの。でもね、このままじゃいけないわ。西の国は東の国と手を取り合って国を豊かに導いていきたいと考えているのよ。でもその為には、あの壁が邪魔なの。そこであなたのその特別な力で、壁を壊す手助けをして頂けないかしら?報酬は弾むわ。必要な物があれば、何でもおっしゃって。全てこちらで手配するわ。それに生活の場も城で用意させる。どうかしら?もちろん彼らもご一緒に」

女王は後ろで膝をつくシナンとカミールへ視線を向けると、ニッコリと笑みを深めた。
東の国と西の国、……戦いを終わらせたのはあの壁なのね……。
でも今は壁あり行き来が出来ない。
でもまた壁がなくなり陸がつながれば、すぐにとは言わないが……争いが始まるかもしれない……?

戦争がどんな目的で始まったのかはわからないけれど、きっと領土問題よね。
宗教戦争の可能性もあるけれど、数か月西の国で生活して、宗教らしきものに出会った事はない。
いえ、そんな事いまはどうでもいいわ。
私も女王と目的は同じ。
壁を壊したい、そして北の国へ帰りたい。
まだ壁を遠目でしか見ていないからわからないけれど……きっと魔法で簡単にというわけにはいかないはず。
なら国の援助はとても役に立つはずよ。
私は真っすぐに女王の瞳を見つめ返すと、わかりましたと深く頷いて見せた。

そうして無事に女王との謁見が終わると、私は用意された一室へと案内された。
シナンとカミールとは別れ、緊張の糸が切れると、部屋で一人、深く息を吐き出した。
とりあえず壁を一度見てみないと、何も始まらないわ。
先ほどの謁見で、壁の傍へ一週間後、視察に向かう事が決まった。
後はどうやって西の国と東の国で物を送りあっているのか……それはまた追々ね。
それまで城でゆっくりしていてほしいと言われたけれど……。

私は用意された部屋を見渡してみると、北の国で暮らしていた部屋とは違い、シンプルな部屋だった。
ベッドと机、クローゼットそれ以外は何もない。
私はとりあえずベッドへ腰を下ろすと、そっとミサンガへ視線を向けた。
船を降りてすぐにここへ連れてこられ、外そうとする暇もなかったわ。
王宮に居ると知られてしまったが、さすがにここへ簡単に来ることは出来ないでしょう。

私は改めて指先へ魔力を集めながらに、腕へ触れミサンガを引っ張ってみると、また鉄のように固くなった。
カンカンと音がするほどに固まると、私は無造作に腕を振り回してみせる。
鉄が肉に食い込み鈍い痛みを感じると、早々にあきらめた。

痛みが引いてくると、私は指先に氷の刃を作りミサンガへ突き刺してみる。
すると氷柱はあっさりと折れてしまった。
硬いわね……一体これは何なのかしら……。
観察するようにじっとミサンガを眺める中、何もしなければ……本当に只の紐のようだ。
紐をなぞるように指先を進めてみると、ふにゃふにゃと柔らかいままだ。
こうやってミサンガへ触れるだけなら、何も変わらないのに……。
でも外そうとすると……なぜか鉄のように固くなる。
こうなったら……。

私は指先に小さな炎を作り上げると、ミサンガへと近づけていく。
手首がチリチリと熱さを感じる中、炎がミサンガに触れた瞬間に、またカキンッと固くなってしまった。
う~ん、やっぱり外そうとすると反応してしまうのね。
そうやって四苦八苦ミサンガを外そうと挑戦していると、あっと言う間に時間は過ぎ去っていった。
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