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第五章
新章4:立ちはだかる壁
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車内はフカフカのクッションが敷かれ、思ったよりも静かだった。
また揺れも少なく、なかなか快適だ。
時々どこかから小さな魔力を感じるから、きっとこの車の動力も魔石で動いているのだろう。
暫く道なりに進んでいくと、道と並行するように街の向こう側には、壁が果てしなく続いている。
体を起こし窓の外を覗き込んでみると、道の先には、大きな城が目に映った。
西洋風の城ではなく、アジアン風な王宮のようだ。
白を基調とした宮殿だが、ところどころに不思議な装飾が施されている。
それはトラックの外装で見た模様と同じだった。
だんだんと大きくなっていく城を茫然と眺めていると、車は無事に王宮へと辿り着いた。
王宮へと真っすぐに続く道、宮殿の中央には立派な噴水が太陽の光を浴びながらにキラキラと輝いてる。
立派な噴水を見上げる中。私たちは城の中へと案内されると、豪華な一室へと通された。
パトリシアはそこでようやく私の手を離すと、準備が整うまでここで待っていてください~と、軽い言葉を残しながら、騎士やワリッド達と一緒に部屋を去って行った。
部屋は応接室のようで、絨毯の上には、木製の長テーブルにソファーが左右に置かれていた。
日当たりの良い部屋で、あちらこちらに、よくわからない置物や、宝石をあしらったオブジェ。
窓際には美しい花が飾られ、日光に反射し瑞々しい。
興味深げにあちらこちらに目を向けていると、カミールはドサッとソファーへと座り込んだ。
シナンは不安げな様子で、私の傍から離れない。
私はシナンを連れながらにソファーへ向かうと、カミールの前へ腰かけた。
沈黙が部屋を包むか中、私は窺うようにカミールへ視線を向けた。
彼は大きな欠伸を見せながらに、つまらなそうに窓の外をじっと眺めている
女王と会うというのに、どうして彼はこれほどまでに落ち着いているのかしら。
こんな立派な王宮に呼ばれるなんて、一体に何を言われるのか……。
不安と緊張で気持ち悪さを感じる中、シナンへ視線を向けてみると、キョロキョロと興味津々な様子で部屋の中を眺めている。
普通こういう反応よね……落ち着かない感じ……。
それに比べカミールはなんと言うか……慣れているそんな様子に見えた。
「ねぇ、あなたはここへ来たことがあるの?」
「……なんだ突然」
「いえ、なんだかすごく落ち着ていると思ったから、聞いてみただけよ」
そう答えてみると、カミールは話す気がないのか……私から視線を逸らせながらに、口を閉ざす。
その姿に私は話すことをあきらめると、心を落ち着かせるため、外から聞こえる鳥のさえずりに耳を傾けた。
そうして待つこと数十分ほどだろうか……トントントンとノックの音が響くと、パトリシアが部屋へとやってきた。
後ろには先ほどの騎士とは違う、別の騎士が付き添っている。
私たちはパトリシアの案内で部屋を出て、どこまでも続きそうな廊下を進んでいくと、その先に大きな扉が目に映った。
扉の傍には騎士だろう男たちが数人佇んでいる。
きっとここが玉座の間。
私は今から女王と会うのね……。
緊張に胸が激しく波打つ中、前に佇む騎士たちはパトリシアの合図で扉を開けると、その先には真っ赤な絨毯が広がっていた。
絨毯を目で追いながらに視線を上げていくと、数段の段差があり、その上にストレートなブロンドの長い髪にブラウンの瞳で、真っ赤なドレスを着た、妙齢な女性が、私たちの姿をじっと見下ろしていた。
この女性が、この西の国のトップ。
堂々たるその姿、目を惹く美しい容姿をじっと見つめていると、彼女は何かの合図を送るように軽く手をあげる。
すると部屋に待機していた騎士たちはゾロゾロと部屋を後にしていく中、パトリシアは私たちを連れながら、段差の前へ向かうと、静かに膝を下した。
その姿にカミールやシナンも膝をつくと、私も慌てて膝をつき、真似をするように頭を下げる。
「女王陛下、お連れ致しました」
先ほどの気の抜けた話し方ではなく、しっかりとした口調に緊張が走る。
目線だけを持ち上げてみると、女王はニッコリと妖麗な笑みを浮かべ、どこからかキラキラと輝く扇子を取り出した。
扇子をゆっくりと開き、口元を隠すように添えると、見定めるような鋭い視線に、威圧感を感じる。
「ふふっ、お顔をあげて頂戴。ようこそ、西の国へ。あなたたちを歓迎するわ。ふふっ、あなたが有名な魔法使いさん?お噂通り、珍しい黒髪に……真っ黒な瞳、美しいわ。お名前は?」
女王は語り掛けるような優しい口調に、私はまた無言のまま頭を下げると、緊張で手に汗をかいていた。
「申し訳ございません、名前は……その……」
「あら、何か事情がおありなのかしら。……ならいいわ。早速なんだけれど、ここで魔法を見せて頂けないかしら?」
「どっ、どのような魔法が宜しいでしょうか?」
どもりながらに何とかそう言葉にすると、パトリシアが私の腕を取り立ち上がらせる。
「ふふっ、う~ん、そうねぇ~、何でも良いのだけれど……」
女王はパトリシアへ視線を向けると、何かを伝えるかのように、小さく頷いて見せた。
「では魔法使い様、水の玉を見せて頂けませんか?先日ランギの街で使われたと噂を耳にしましたの」
パトリシアは可愛らしく笑みを浮かべる姿に、私は深く頷いた。
水の玉ね……。
それよりもこんな地まで噂が広がって、有名になっているとは思わなかったわ……。
あまりの衝撃に頭痛がする中、私は大きく息を吸い込むと、魔力を感じるため、徐に瞳を閉じた。
また揺れも少なく、なかなか快適だ。
時々どこかから小さな魔力を感じるから、きっとこの車の動力も魔石で動いているのだろう。
暫く道なりに進んでいくと、道と並行するように街の向こう側には、壁が果てしなく続いている。
体を起こし窓の外を覗き込んでみると、道の先には、大きな城が目に映った。
西洋風の城ではなく、アジアン風な王宮のようだ。
白を基調とした宮殿だが、ところどころに不思議な装飾が施されている。
それはトラックの外装で見た模様と同じだった。
だんだんと大きくなっていく城を茫然と眺めていると、車は無事に王宮へと辿り着いた。
王宮へと真っすぐに続く道、宮殿の中央には立派な噴水が太陽の光を浴びながらにキラキラと輝いてる。
立派な噴水を見上げる中。私たちは城の中へと案内されると、豪華な一室へと通された。
パトリシアはそこでようやく私の手を離すと、準備が整うまでここで待っていてください~と、軽い言葉を残しながら、騎士やワリッド達と一緒に部屋を去って行った。
部屋は応接室のようで、絨毯の上には、木製の長テーブルにソファーが左右に置かれていた。
日当たりの良い部屋で、あちらこちらに、よくわからない置物や、宝石をあしらったオブジェ。
窓際には美しい花が飾られ、日光に反射し瑞々しい。
興味深げにあちらこちらに目を向けていると、カミールはドサッとソファーへと座り込んだ。
シナンは不安げな様子で、私の傍から離れない。
私はシナンを連れながらにソファーへ向かうと、カミールの前へ腰かけた。
沈黙が部屋を包むか中、私は窺うようにカミールへ視線を向けた。
彼は大きな欠伸を見せながらに、つまらなそうに窓の外をじっと眺めている
女王と会うというのに、どうして彼はこれほどまでに落ち着いているのかしら。
こんな立派な王宮に呼ばれるなんて、一体に何を言われるのか……。
不安と緊張で気持ち悪さを感じる中、シナンへ視線を向けてみると、キョロキョロと興味津々な様子で部屋の中を眺めている。
普通こういう反応よね……落ち着かない感じ……。
それに比べカミールはなんと言うか……慣れているそんな様子に見えた。
「ねぇ、あなたはここへ来たことがあるの?」
「……なんだ突然」
「いえ、なんだかすごく落ち着ていると思ったから、聞いてみただけよ」
そう答えてみると、カミールは話す気がないのか……私から視線を逸らせながらに、口を閉ざす。
その姿に私は話すことをあきらめると、心を落ち着かせるため、外から聞こえる鳥のさえずりに耳を傾けた。
そうして待つこと数十分ほどだろうか……トントントンとノックの音が響くと、パトリシアが部屋へとやってきた。
後ろには先ほどの騎士とは違う、別の騎士が付き添っている。
私たちはパトリシアの案内で部屋を出て、どこまでも続きそうな廊下を進んでいくと、その先に大きな扉が目に映った。
扉の傍には騎士だろう男たちが数人佇んでいる。
きっとここが玉座の間。
私は今から女王と会うのね……。
緊張に胸が激しく波打つ中、前に佇む騎士たちはパトリシアの合図で扉を開けると、その先には真っ赤な絨毯が広がっていた。
絨毯を目で追いながらに視線を上げていくと、数段の段差があり、その上にストレートなブロンドの長い髪にブラウンの瞳で、真っ赤なドレスを着た、妙齢な女性が、私たちの姿をじっと見下ろしていた。
この女性が、この西の国のトップ。
堂々たるその姿、目を惹く美しい容姿をじっと見つめていると、彼女は何かの合図を送るように軽く手をあげる。
すると部屋に待機していた騎士たちはゾロゾロと部屋を後にしていく中、パトリシアは私たちを連れながら、段差の前へ向かうと、静かに膝を下した。
その姿にカミールやシナンも膝をつくと、私も慌てて膝をつき、真似をするように頭を下げる。
「女王陛下、お連れ致しました」
先ほどの気の抜けた話し方ではなく、しっかりとした口調に緊張が走る。
目線だけを持ち上げてみると、女王はニッコリと妖麗な笑みを浮かべ、どこからかキラキラと輝く扇子を取り出した。
扇子をゆっくりと開き、口元を隠すように添えると、見定めるような鋭い視線に、威圧感を感じる。
「ふふっ、お顔をあげて頂戴。ようこそ、西の国へ。あなたたちを歓迎するわ。ふふっ、あなたが有名な魔法使いさん?お噂通り、珍しい黒髪に……真っ黒な瞳、美しいわ。お名前は?」
女王は語り掛けるような優しい口調に、私はまた無言のまま頭を下げると、緊張で手に汗をかいていた。
「申し訳ございません、名前は……その……」
「あら、何か事情がおありなのかしら。……ならいいわ。早速なんだけれど、ここで魔法を見せて頂けないかしら?」
「どっ、どのような魔法が宜しいでしょうか?」
どもりながらに何とかそう言葉にすると、パトリシアが私の腕を取り立ち上がらせる。
「ふふっ、う~ん、そうねぇ~、何でも良いのだけれど……」
女王はパトリシアへ視線を向けると、何かを伝えるかのように、小さく頷いて見せた。
「では魔法使い様、水の玉を見せて頂けませんか?先日ランギの街で使われたと噂を耳にしましたの」
パトリシアは可愛らしく笑みを浮かべる姿に、私は深く頷いた。
水の玉ね……。
それよりもこんな地まで噂が広がって、有名になっているとは思わなかったわ……。
あまりの衝撃に頭痛がする中、私は大きく息を吸い込むと、魔力を感じるため、徐に瞳を閉じた。
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