[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

文字の大きさ
上 下
283 / 358
第五章

クリスマス企画(エヴァン&レックス):前編

しおりを挟む
本編はお休みです。



※これはまだ北の国で生活している前提のお話です※

「ジングルベル~ジングルベル~♪、~~~♪♪」

小さなアパートでタクミと二人、ケーキを用意して、雰囲気作りにクリスマスソングをスマホから流してみる。
豪華な食事ではないけれど、この日の為、スーパーで特売で売っていた七面鳥とケーキをテーブルの真ん中へ置いて、小さなツリーを飾った。
そうして部屋の明かりを消し、ケーキに蝋燭を灯して、キスを交わす。
サンタの赤い帽子をお互いに被り、プレゼントを渡しあうと、私はギュッとタクミへと抱きついた。
そのまませがむように深く深くキスを繰り返すと、重なるように体をあわせていった。

これは……12月24日、元の世界でタクミと過ごしたクリスマスの記憶。
彼の世界には……クリスマスなんてものはなく、恋人とクリスマスを過ごすのだと教えた時、彼は目を輝かせながらにツリーを飾り付けていたわ。
その姿は今でもはっきりと覚えている。
毎年彼と過ごせるのだと……そう信じていたあの頃。
でもそれは……突然になくなってしまった。

幸せな映像が薄れていく中、ハッと目覚め体を起こすと、そこは私に用意された豪華な部屋だった。
そっと辺りへ目を向けると、先ほど夢で見た私が暮らしていたアパートとは比べ物にならないほどに大きい。
どうして今更こんな夢を……?
彼との記憶が蘇るたびに、胸が張り裂けそうに苦しくなる。
楽しかった彼との思い出。
愛しい彼の姿……でももう彼はどこにもいない。
先ほど見た夢がまだ頭の中に残る中、私はその幸せな余韻に浸っていた。

暫くすると、トントンとノックの音に私は怠惰に体を起こすと、魔石へ触れ訪問者を確認する。
そこに映し出されたのは、ローブを着たエヴァンの姿だった。
あれ……魔法の訓練は今日お休みじゃなかったかしら……?
そんな疑問を抱きながらに私はとりあえず扉を開けてみると、彼は爽やかな笑みを浮かべていた。

「おはようございます。今日が何日かご存知ですか?」

「えっ、どうしたの突然!?……わからないわ。えーと、ここへきて数か月だから……あれ私いつ来たのかしら……」

ここへつなぎとめられるまで色々な事があったせいか……なかなか思い出せない。

「わからないのであれば構いません。それよりも今日のご予定は?」

「今日は……部屋にこもって魔法の練習をしようかと思っていたけれど……。何かあるのかしら?」

「いえ。では日没後、少しお時間を頂けませんか?」

エヴァンはそうにこやかに話すと、私はおずおずといった様子で頷いて見せた。
何だか……今日のエヴァンいつもと違うわ。
なんと言えばいいのか……。
恐る恐るにエヴァンの顔を見上げてみると、彼は笑みを浮かべたままに深く礼を見せる。

「それではまた日没後に迎えにきますね」

よくわからないままにコクリと頷くと、エヴァンは踵を返し、王宮の廊下を進んでいった。

一体どうしたのかしら……。
日没後に何が始まるの……?
そんな事を考えながらに魔法の訓練開始してみるが、集中できるはずもない。

私……何かやらかしたかしらね。
何だかエヴァンの様子がいつもと違ったし、また怒られるのかしら……。
恐ろしいわね……。
うんうんと頭を悩ませる中、気が付けばあっという間に日没になっていた。

ドキドキしながらに扉の前で待機していると、トンットンッとノックの音が部屋に響く。
私は慌てて扉を開けると、エヴァンは眉を顰めて私を見つめた。

「はぁ……いけません。どんな時でも外はちゃんと確認してください。私でなければどうするんですか?」

強い口調にビクッと肩を跳ねさせる中、ごめんなさいと頭を下げると、エヴァンは呆れた様子でため息をつく。

「とりあえず気を付けて下さいね。では行きましょうか」

「えっと……どこへ行くのかしら?」

そう恐る恐るに問いかけてみると、彼はニッコリと笑みを深めながらに私の手を取る。
そのまま導かれるように手を引かれると、私は口を閉ざし、彼の背を見つめる事しかできなかった。

王宮の廊下を進み、庭へと出るとそのままレックスの研究室へと進んでいく。
レックスのところへいくのかしら……?
でももしそうなら……どうして移転魔法を使わないのかしらね?
そんな事を考えながらにレックスの部屋の前へやってくると、エヴァンは私から手をサッと離した。

「ここで待っていて下さい」

エヴァンはそっと扉を開けると、そそくさと中へ入っていく。
その姿に首を傾げる中、暫くすると中から何やら話し声が耳に届いた。
何を言っているかはわからないけれど……どうやら揉めているようだ。
言い争う声に心配になりながらもじっと佇んでいると、ガチャと音と共に少しだけ扉が開く。
その隙間からエヴァンは手を差し出すと、私の手を握りしめた。

「目を閉じてください」

エヴァンの言葉に従うようにそっと瞼を下すと、暗闇が私を包んでいく。
何が起こるのか……ドキドキしながらにエヴァンの手を握り返すと、彼の温もりが伝わってきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

処理中です...