[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

クリスマス企画(エヴァン&レックス):後編

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熱を感じながらにエヴァンの導く先へ足を進めていくと、耳元に熱い息がかかる。
くすぐったさに身をよじらせる中、彼の大きな手が私の肩へ触れると、立ち止まらせるように強く掴んだ。

「ゆっくり……目を開けて下さい」

その言葉に目を開けると、目の前には大きな木が映った。
よく見てみると、その木には色々な飾り付けが施され、天辺には星形の飾りが付けられている。
キラキラと光るその木はまるで……クリスマスツリーの様だった。

「これは一体……?」

そうぼそりと呟くと、木の陰から真っ赤な服を着たレックスがひょっこりと現れる。
手には白く大きな袋を持ち、恥ずかしいのだろうか……顔を真っ赤に私を見つめた。

「メッ、メリークリスマス!!!……これであってるよな……?」

そう恥ずかし気に笑って見せる彼の姿に、驚きのあまり目が点になる。
どっ、どうして……?
この世界にはクリスマスを祝う習慣なんてなかったはず……。
だってタクミはクリスマスを知らなかったわ。
茫然とする中、エヴァンは急ぎ足で隣の部屋へ向かうと、何かを運んでくる。
よく見てみると、お皿を手にしその皿には模型のような小さな木がのせられていた。
その木の周りには蝋燭が並び、炎をゆらゆらと揺れている。

「メリークリスマス……?えっ、あれ、どうしてクリスマスを知っているの?この世界ではクリスマスはなかったはずじゃ……?」

そう問いかけてみると、エヴァンはニッコリを笑みを浮かべながらに私の前にお皿を差し出した。

「えぇ、この世界にクリスマスはありません。ですが師匠から話を聞いたことがあったんです。あなたの世界では12月24日こうやって祝うのですよね?無理やりこの世界へ引き込んでしまったので……何か出来ればと考えていたんです。ですが……すみません、大分前の事でしたので、はっきりとは覚えておりませんでした。ですので、レックス殿に協力してもらったのですよ」

「いや、俺もうろ覚えだったんだが……。間違っていたら教えてくれ」

わざわざ私の為に……クリスマスを……?
固まる私の様子に、二人は不安げな表情を見せる中、あまりの嬉しさに涙腺が緩む。
もうクリスマスなんて祝う事はないと思っていた。
でも……。
ポロポロと自然に涙が溢れだすと、レックスとエヴァンはオロオロと焦った様子をみせる。

「すみません、いけませんでしたか……?」

「悪い……おぃ、エヴァンどうするんだよ」

「……ッッ、ごめんなさい。違うの……ッッ。嬉しくて……二人とも本当にありがとう。もうクリスマスなんて祝う事はないと思っていたわ。だから……うぅッッ、ありがとう」

涙を拭きとりながらにそう何とか言葉にすると、二人はほっと胸をなでおろしながらに柔らかい笑みを浮かべて見せる。
そうして用意されたテーブルにお皿を置き、部屋の明かりを消すと、私たちは静かにテーブルを囲んだ。

「ところで……これは一体なにかしら……?」

そう皿に飾られた小さな木を見ながらに問いかけてみると、エヴァンは困った様子で笑って見せる。

「これは砂糖菓子ですよ。師匠から木をモチーフにしたお菓子を用意して、その周りに蝋燭を立てると伺っていたもので……、違いましたか?」

そういえばタクミとクリスマスを祝うときは、いつもブッシュドノエルを用意していた気がする。
まぁ……木をイメージしたケーキではあるが、ここまで忠実に木を再現したものではない。
そんな事実に自然と笑みがこぼれ落ちると、私はエヴァンへと微笑みかけた。

「ううん、これであっているわ。わざわざ用意してくれてありがとう」

そうしてそっと蝋燭の炎を吹き消すと、蝋燭の臭いが鼻を掠める。

「それで、これだ!」

レックスはゴソゴソと大きな袋を漁り始めると、中から小さな箱を取り出した。
それを私へと差し出すと、箱に付けられた紐を解いていく。

「俺たちサンタクロースからのプレゼントだ」

「ふふっ、レックスはサンタクロースだったのね。嬉しいわ、ありがとう。開けていいかしら……?」

そう問いかけてみると、レックスは箱の蓋を持ち上げた。
するとそこには、魔法で作られたのだろう……見惚れるほどに美しい小さなスノーボールが現れた。
透明な球体に包まれ、中に真っ白な雪をイメージしているのだろう……キラキラと光が舞っている。
その中心には名も知らぬ真っ赤な花が浮かんでいた。

「綺麗、スノードームね。大切にするわ」

そう満面の笑みを浮かべながらに顔を上げると、二人はなぜか慌てた様子で視線を逸らせた。

(可愛すぎだろう……)
(これは……なかなか見れませんね……)

コソコソと話す二人の様子にそっと視線を落とすと、私はじっとスノードームを見つめていた。

「あっ、そうだわ……。ごめんなさい、私からもお返しをしないといけないわね。何が良いかしら?」

そう問いかけてみると、レックスは驚いた様子を見せたかと思うと、私の腕を強く引き寄せた。
そうして耳元へ唇を寄せると、熱い息が首筋へかかる。

「プレゼントか……何でもいいのか?」

「えぇ、もちろんよ。あっ、高価な物は難しいかもしれないわ……。でっ、でも出来るだけ用意する」

「いや、物なんていらない。先生から聞いたことがある。この日は恋人と夜を過ごすんだろ。だから……あんたの今晩を俺にくれないか?」

甘く囁かれた言葉に一気に熱が高まると、私は慌ててレックスから飛び退いた。
タクミなんてことまで話しているのよ!?

「ちょっ、何を言っているのよ!!!」

頬の火照りが引かない事に、私は顔を腕で覆ってみせると、その腕が後ろから捕らえられた。
顔は赤いままだろう……そのままそっと顔を上げると、エヴァンがニッコリと笑みを浮かべながらに顔を寄せる。

「そういう事であれば……私も参加させて頂きたいですね。どっちがあなたとの相性がいいか、試してみましょうか?」

エヴァンは意地悪な笑みを浮かべながらに耳元で囁くと、湿った舌が耳たぶへ触れた。

「ひゃっ、……ッッちょっと待って、なっ、何なのよ!とっ、とりあえず……プレゼントの話は後で!先にお菓子をみんなで食べてしまいましょう」

そう早口で話してみると、エヴァンとレックスは顔を見合わせながらに肩を揺らし笑っていた。

「もう!!からかったわね!!!」

そんな二人の様子に叫ぶと、部屋に笑い声が響き渡った。




****************

今回の特別企画にて、またまた玉子様@tamagokikaku様(Twitter)にイラストを頂く事が出来ました(*'▽')
しかもカラーイラスト!
初めての企画でしたが、こんな素晴らしいイラストを頂けて、感動しました。
本当にありがとうございましたm(__)m

****************
またコメントを頂いている事に気が付かず……正直間に合うか不安でしたが、何とか間に合わせることが出来ました。
(ほっとしました(;'∀'))
この後3P展開も有りか……と考えたのですが、そんなの見たくない!との読者様がおられるかもしれないので、とりあえず和やかに完結させております。
もし希望の方がおられましたら……コッソリ教えて頂けると嬉しいです。

それでは最後までお読み頂きまして、ありがとうございました!
次回は(カミール&シナン編)です。
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