[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

閑話:追う二人:前編(シナン視点)

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***********その頃彼らは************

時は少しさかのぼる。

「おぃ、止まれ!待ちなさい!!!」

突然の光に目が眩む中、男の怒鳴り声が響くと、彼女の軽い足音が扉の向こうへと消えていく。
その音に押さえつけていた男は腕を振り上げると、僕の体は後ろへと吹き飛んだ。
自由になった男はそのまま船艇へ続く扉を押すと、走り去っていく。
まずいっ、追いかけないと……ッッ

慌てて立ち上がると、目を細めながら僕は男の姿を追いかけていく。
お姉さんの足じゃ……きっとすぐに追いつかれてしまう。
速度を上げるように地面を強く蹴り上げた瞬間、ふともう一つの足音に振り返ると、そこにはカミールの姿があった。

「シナンあいつは俺に任せろ。先に女を追え」

「えっ、でも……ッッ、わかりました」

有無を言わせない様子に僕は慌てて頷くと、足を速めていく。
そっと後ろを振り振り返ってみると、カミールさんが相手していた騎士は追いかけてくる様子がない。
騎士の姿を探す様に目を凝らしてみると、扉の向こうには頭を抱えながら座り込む騎士の姿が目に映った。
どうしてあいつは追いかけてこないんだろう。
そんな疑問が頭に掠める中、狭い通路を駆け抜けようやく前を走る男に追い付くと、カミールが男の首根っこを捕らえた。

「止まれ」

僕は騎士の隣をすり抜け通路を抜けようとすると、捕らえられた騎士はカミールの腕を振りほどきながらに抜刀し、僕の行く手を阻んだ。
騎士は態勢を低くしながらに僕たちを睨みつけると、緊迫した空気が流れ始める。

「言葉では伝わらないようだな。ここは立ち入り禁止区域だ。お前たちもさっさと戻れ」

騎士は剣先を向けると、カミールは僕の前へと回り込んだ。

「一つ聞きたい……お前も城に属する騎士か?」

お前も……?
追いかけてこない男も城の騎士なのかな……?
それよりもカミールさんはどうしてそんな事を聞くのだろうか?
騎士は答える気がないのか……そのままカミールへ剣を振りぬくと、彼はそれを軽々と避けた。

「はぁ……全く鬱陶しい……」

そうぼやきながらにカミールは剣を持つ腕へ蹴りを入れると、ガラン、カランッと剣が床へと転がり落ちた。
騎士は痛みに顔を歪めると、慌てて剣を拾おうと手を伸ばすが……、その前にカミールの足が剣を踏みつける。
そのまま見下ろす様に騎士を睨みつけると、カミールは懐へ手を忍ば一枚の紙を取り出した。
その紙は普通の用紙とは違い、しっかりとした物で出来ている。
目を凝らしてみてみると……どうやら誰かからの書状のようだ。
カミールは取り出した紙を男の前に掲げて見せると、男は目を見開きながらに動きを止めた。

「なっ、それは!?」

「城の騎士ならこれが何かわかるだろう。これは任務だ、さっさと下がれ」

任務……?
何の事だろう……?
よくわからないその言葉に首を傾げる中、騎士は慌てた様子で姿勢を正すと、カミール向けて敬礼を見せる。

「……っっ、失礼致しました。すぐに下がります。助けが必要でしたらお呼び下さい」

騎士は逃げるようにその場から立ち去ると、カミールはやれやれと言った様子で首を鳴らした。

「あの……カミールさん今のは何ですか……?」

そう恐る恐るに問いかけてみると、カミールは鼻で笑って見せながらに歩き始めた。

「何でもない、だが今の事はあの女には黙っていろ」

「あっ、……はい、わかりました」

チラッと見えたあの書状には王都のマークが書かれていた。
カミールさんは城に属する騎士なのだろうか……。
でもどうしてそのことを、お姉さんに知られたくないのかな……。
城の騎士なんてそうそうなれるものじゃないし、名誉な事のはず。

そういえば……この紙を持っていたのならどうして無理矢理突破する方法を選んだろう。
あっ、そっか……お姉さんが居たから……わざわざ紙を見せずに、戦闘することを選んだ。
紙が一体何なのか気にはなるが、カミールさんの様子を覗う限り教えてくれそうにない。
僕ははぁ……と小さく息を吐き出すと、先へ進んでいくカミールの背を慌てて追っていった。

そうして道なりに進む中、やっとお姉さんの姿が見えると、僕は急いで走り寄った。
だがお姉さんの前へやってくると僕たちの間に見えない壁が立ちはだる。
何もないように見えるが……触ると頑丈な壁が手に伝わってきた。

試しに全力で殴ってみたが……壁はビクともしない。
どうやっても壊れないその壁に阻まれる中、彼女は僕へニッコリと笑みを浮かべると、背を向け奥へと進んでいく。
その姿に必死で引き留めてみるも……彼女が止まることない。
どんどん彼女の背が小さくなっていくその様に何度も叫んでみるが……彼女は振り返ることもない。
そのまま奥に見える階段を下りて行くと、彼女の姿は見えなくなってしまった。
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