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何で来るのよ……
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ふつふつと怒りがこみ上げると、思わずキッと縦ロールの令嬢を睨みつけ唇をかむ。
「なっ、何なのよその目。本当に生意気だわ。立場をわかっていないようね?」
令嬢は手にしていた扇子を振り上げた刹那、後ろから声が響いた。
「おやめなさい。貴族の恥さらしですわよ」
そこにいたのは、凛とした御令嬢。
ブロンドの長い髪に、透き通るような真っ白な肌。
女性の私でも見惚れてしまいそうな美しいその様に、口が半開きになってしまった。
「スッ、ステイシー様!?あっ、あの……その、これはッッ、みっ、皆さま行きましょう」
この人がステイシー様?
我に返り改めて彼女を見つめると、優し気な瞳にぷっくりとした赤い唇。
キュッと引き締まった腰に、制服の上からでもわかる胸の膨らみ。
想像していたよりも数倍美しい令嬢だった。
こんな非の打ち所がない婚約者がいて……あの王子は何を考えているの?
彼女を呆然と見つめていると、縦ロールの令嬢はじりじりと私から離れ、ステイシーから逃げるように、取り巻きたちと共に校舎の方へと戻っていった。
ステイシーは優雅に近づいてくると、こちらへ手を差し伸べる。
「大丈夫?ケガはない?あら、肩に葉っぱが……」
彼女は手で葉っぱを払うと、私は慌てて飛びのいた。
「だっ、大丈夫です!ステイシー様の手が汚れてしまいます」
彼女は勢いよく跳ねた私の動きに驚いた様子で目を見開いたかと思うと、すぐに優しい笑みを浮かべる。
「ふふふっ、そんなことありませんわ。私の手は別の意味で汚れておりますし……」
別の意味?
寂しげに笑う彼女の姿に首を傾げていると、校庭の方からすごい速さで人影が近づいてきた。
「ステイシー、何をしている!」
良く知る声に顔を向けると、ジェシー王子がこちらへ駆け寄ってきた。
その後ろには彼のお目付け役であるハンク。
ゲームでは彼について詳しく書かれていなかったが、王子に関わったことで知ることが出来た。
どうも彼は宰相の息子で王子の補佐役となった生粋のお貴族様のようだ。
爵位も申し分なし氏、良識があって真面目、見目も王子には劣るが十分整っている。
彼が攻略対象者だったらな……。
チラッと彼へ視線を向けると、プラチナの長い髪を後ろで縛り、切れ長の瞳。
いつも王子の傍に佇み、言葉を発している姿はあまり見たことがない。
「あら、ジェシー」
彼女は振り返ると、スッと私の後ろへ下がった。
「こいつに何をした!」
王子は責めるようにステイシーを睨みつける。
その姿に違うのだと否定しようとすると、その前にステイシーが後ろから私の口を塞いだ。
「ちっ、……むむむんん」
「ふふふ、まだ何も。お早いご到着ですこと」
王子はすかさず私の腕を掴みステイシーから引きはがすと、キッと彼女を睨みつける。
「お前の取り巻きが彼女を連れて行くのをみた、何をしようとしていたんだ!」
「彼女が目障りだったのですわ。だからお灸を据えようと……ですがその前に白馬の王子様が助けにきてしまったようですわね」
彼女の言葉に目を丸くすると、口を半開きのまま固まった。
「なっ、何なのよその目。本当に生意気だわ。立場をわかっていないようね?」
令嬢は手にしていた扇子を振り上げた刹那、後ろから声が響いた。
「おやめなさい。貴族の恥さらしですわよ」
そこにいたのは、凛とした御令嬢。
ブロンドの長い髪に、透き通るような真っ白な肌。
女性の私でも見惚れてしまいそうな美しいその様に、口が半開きになってしまった。
「スッ、ステイシー様!?あっ、あの……その、これはッッ、みっ、皆さま行きましょう」
この人がステイシー様?
我に返り改めて彼女を見つめると、優し気な瞳にぷっくりとした赤い唇。
キュッと引き締まった腰に、制服の上からでもわかる胸の膨らみ。
想像していたよりも数倍美しい令嬢だった。
こんな非の打ち所がない婚約者がいて……あの王子は何を考えているの?
彼女を呆然と見つめていると、縦ロールの令嬢はじりじりと私から離れ、ステイシーから逃げるように、取り巻きたちと共に校舎の方へと戻っていった。
ステイシーは優雅に近づいてくると、こちらへ手を差し伸べる。
「大丈夫?ケガはない?あら、肩に葉っぱが……」
彼女は手で葉っぱを払うと、私は慌てて飛びのいた。
「だっ、大丈夫です!ステイシー様の手が汚れてしまいます」
彼女は勢いよく跳ねた私の動きに驚いた様子で目を見開いたかと思うと、すぐに優しい笑みを浮かべる。
「ふふふっ、そんなことありませんわ。私の手は別の意味で汚れておりますし……」
別の意味?
寂しげに笑う彼女の姿に首を傾げていると、校庭の方からすごい速さで人影が近づいてきた。
「ステイシー、何をしている!」
良く知る声に顔を向けると、ジェシー王子がこちらへ駆け寄ってきた。
その後ろには彼のお目付け役であるハンク。
ゲームでは彼について詳しく書かれていなかったが、王子に関わったことで知ることが出来た。
どうも彼は宰相の息子で王子の補佐役となった生粋のお貴族様のようだ。
爵位も申し分なし氏、良識があって真面目、見目も王子には劣るが十分整っている。
彼が攻略対象者だったらな……。
チラッと彼へ視線を向けると、プラチナの長い髪を後ろで縛り、切れ長の瞳。
いつも王子の傍に佇み、言葉を発している姿はあまり見たことがない。
「あら、ジェシー」
彼女は振り返ると、スッと私の後ろへ下がった。
「こいつに何をした!」
王子は責めるようにステイシーを睨みつける。
その姿に違うのだと否定しようとすると、その前にステイシーが後ろから私の口を塞いだ。
「ちっ、……むむむんん」
「ふふふ、まだ何も。お早いご到着ですこと」
王子はすかさず私の腕を掴みステイシーから引きはがすと、キッと彼女を睨みつける。
「お前の取り巻きが彼女を連れて行くのをみた、何をしようとしていたんだ!」
「彼女が目障りだったのですわ。だからお灸を据えようと……ですがその前に白馬の王子様が助けにきてしまったようですわね」
彼女の言葉に目を丸くすると、口を半開きのまま固まった。
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