婚約破棄の茶番に巻き込まれました。

あみにあ

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どうしてこうなるの……

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王子のストーリーを思い出そうとするが、プレイ中の苛立つ自分の姿しか思い出せない。
何度ゲーム機を投げそうになったことか……。
まぁでも好きかどうかはさておき普通に考えて、王子が平民にちょっかいをかけている現状、令嬢のプライドは刺激されるだろう。
私に何かこう意地悪みたいな?よくある悪役令嬢のような展開になってもおかしくないような……。
クルリと辺りを見渡してみるが、私を敵視する視線は感じられない。
寧ろ我関せずと素通りする貴族ばかりだ。

確か王子の婚約者は、公爵家のステイシー様。
学園を休みがちで会ったことはないけれど、噂で聞く限りとても優秀な令嬢のようだ。
学園では一目置かれる存在で、爵位はもちろん容姿端麗、品行方正、頭脳明晰とあの王子にはもったいない。
だけど将来王妃になるだろう女性なのだから当然なのか。

それにしてもどうして皆が羨む婚約者が居ながら、他の女にちょっかいを出そうと思えるのか、全くもって理解できない。
休みがちなのは家の事情らしいけれど……何はともあれ、この男を何とかしないとね。
私は痛む頭を抱えると、隣を歩く王子から逃れる方法を模索したのだった。

しかしなんの対策も思い浮かばないまま数か月が過ぎた。
最近では拒絶することも諦め、開き直ることにした。
もちろん彼の誘いは断固拒否し続けている。

愛人になるつもりなどさらさらないが、イケメンの顔を拝めるのはいいことだ。
それに思っていたよりも女癖が悪くない彼に、最初程嫌悪感は抱かなくなっていた。
むしろ貴族の話は興味深いし、べっ、別に好きとかではないけどね!

今日も授業が終わり、そろそろ王子がやってくるのかと廊下へ顔を向けると、そこに貴族令嬢数人が集まっていた。
彼女たちはおもむろに教室へやってくると、私の机の前で立ち止まる。
それはまさに当初想像していた最悪のシチュエーション。
令嬢たちを見て固まる私を一瞥すると、私は人気のない中庭へと連行されたのだった。

彼女たちに囲まれ狼狽していると、ドンっと肩を突き飛ばされる。
太い木に背中をぶつけると、鈍い痛みに顔を歪めた。
ぃたぁっ、何なのよッッ。
おもむろに顔を上げると、縦ロールで化粧が濃い気の強そうな令嬢が一歩前へと進み出た。

「王子に取り入っているという平民はあなたのことよね?」

とんでもない言葉に目が点になると、激しく首を横へ振った。
今まで我関せずだったくせに、なぜ今になってこんなことに。

「はぁ!?ちっ、違います!王子が勝手に寄ってくるんです!ひどく迷惑していて……ッッ」

令嬢はスッと目を細めると、冷ややかな視線で私を見下ろした。

「……勝手に寄ってくるですって?嘘おっしゃい!」

令嬢は私の言葉を遮りパチンッと扇子を鳴らすと、威圧的に睨みつける。

「ジェシー王子はステイシー様の婚約者なのですわよ。それなのに平民ごときが何様なのかしら。暇があれば王子を追いかけまわし付きまとっているのあなたでしょう!」

どこをどうみたらそんな勘違いが出来るのか。
付きまとわれているのはどう見ても私でしょ!!!
私がはっきりきっぱりと誘いを断っている姿を見ていないの?
公衆の面前で何度も王子へ苦言を言っていたと思うんだけれど。
てか楽しそうに話しているように見えた?
言いたいことは山ほどあるが、立場上言葉を濁す。

「いえ、そのですから、私は王子に取り入ってませんし、好きでもありません」

「ふーん、ご自身を過大評価されているのですわね。王子が平民であるあなたを追いかけまわしているなんて……。高貴なステイシー様を差し置いて、平民のあなたなんかを?」

おっしゃる通り、その理由はこっちが聞きたい。
あぁもう、鬱陶しい!
王子のせいでなんで私がこんな目にあわなきゃいけないのよ。
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