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第一章 始まり
第六話
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~東の森~
「この森は本当に美しい」
「えぇ、しかしこの森も以前からこうだった訳ではないのですよ?」
穏やかに、しかし何処か悲しげにセオドールは続けた
「以前は他の森と変わらず…いぇ、他の森よりも……ほんの数ヵ月前までこの森は枯れかけていたんです」
目的の場所に向かいながらセオドールは話し出す
「この森には精霊が他よりも多く、上位精霊ばかりがおりました。しかし、人間の傲慢な欲望に利用される事で森は少しずつ枯れていきました。それは精霊が居なくなる、という現象によってです」
「森は精霊によって枯れたりするものなのか?」
「いいぇ、多少影響は受けますが枯れたりはいたしません。この森は特別なのです」
「特別…?」
「はい…この森は精霊にとってとても特別な場所なのです」
「精霊にとって特別…か」
「精霊から多大に影響を受けてしまう。良いのか悪いのか、定かではありませんが」
「だが、今この森はこんなに美しい…良いのではないか?」
「ふふ…えぇ、精霊がとても喜んでいる証です」
セオドールはそう言うとシェリを見つめた
シェリはラシードに繋がれた手に気をとられセオドールの視線に気付いていない
(孤独から、それに負けず生き抜いて…我らと共にあってくださっている。我らの愛し子、感謝致します。そして、あなたは我らが必ずお守り致しますゆえ…どうか幸せになってください)
セオドールはシェリの存在をシェリが誕生したその時から知っていた。だからこそ、シェリを見た瞬間言いようもない愛しさと必ず守る、その気持ちで一杯だった。流した涙よりも幸せを、感じた悲しみよりも沢山の愛情を、抱いてきた恐怖よりも満開の笑顔で
どうかシェリに幸せを…
~ラシード~
セオドールがシェリを見つめている
見たことのない穏やかな顔で、セオドールをよく知っているラシードは何処か安堵していた
ふとシェリを見ると繋がれた手を見ては戸惑い、外さねばと試みるが断念し落ち込む。これを何度も繰り返していた
ラシード自身も、他人に対してこんなに愛しいと思った事は一度もなく戸惑っていたのだ
だが、繋いだ手を離す事は出来なかった
ずっとこのままでいたい。そう思ったのだ
「シェリ、よくこの森にくるのか?」
距離を縮めようと先程までの言葉とは逆に砕けた言葉を使うようにした
「えっ…あっきょ今日が初めてです…」
急に話しかけられビクッとするが何とか答える
「そうか。今日は何をしに森へ?」
「あっ…と、友達がこの森の木の実や果物を持って来てくれて…それで…」
「来てみたくなった?」
「はい…」
「ふ、そう畏まらないでくれ。来てくれて感謝している」
「え…?」
「いや、こっちの話だ」
シェリは困惑するばかりだった
「殿下、此方です」
目的の場所に着いたのか、セオドールが一本の大木の根本を指差す
そこは黒く変色しており、ラシードは慌てた様子で近寄る
「…このままでは不味いな…長くは持つまい」
もっと早く動いていればと後悔ばかりが先にたつ
根本から『竜の子』を取り出したセオドール
『竜の子』は酷く腐敗が進んでおり、まだ存在している事の方が不思議な位だ
ラシードにはなすすべが無かった
「かわいそうに…もう、大丈夫だよ」
隣にいたシェリが『竜の子』に触れた瞬間、辺りは暖かな光に包まれた。ほんの数秒の間だったが、数時間に思えた
光が徐々に収まり『竜の子』が露になったとき、ラシードは自身の目を疑った。セオドールが持っていた『竜の子』があった場所には小さな漆黒の竜がいたのだ
(これはいったい…)
目覚めようとしている力
その力は何の為に目覚めようとしているのか
「この森は本当に美しい」
「えぇ、しかしこの森も以前からこうだった訳ではないのですよ?」
穏やかに、しかし何処か悲しげにセオドールは続けた
「以前は他の森と変わらず…いぇ、他の森よりも……ほんの数ヵ月前までこの森は枯れかけていたんです」
目的の場所に向かいながらセオドールは話し出す
「この森には精霊が他よりも多く、上位精霊ばかりがおりました。しかし、人間の傲慢な欲望に利用される事で森は少しずつ枯れていきました。それは精霊が居なくなる、という現象によってです」
「森は精霊によって枯れたりするものなのか?」
「いいぇ、多少影響は受けますが枯れたりはいたしません。この森は特別なのです」
「特別…?」
「はい…この森は精霊にとってとても特別な場所なのです」
「精霊にとって特別…か」
「精霊から多大に影響を受けてしまう。良いのか悪いのか、定かではありませんが」
「だが、今この森はこんなに美しい…良いのではないか?」
「ふふ…えぇ、精霊がとても喜んでいる証です」
セオドールはそう言うとシェリを見つめた
シェリはラシードに繋がれた手に気をとられセオドールの視線に気付いていない
(孤独から、それに負けず生き抜いて…我らと共にあってくださっている。我らの愛し子、感謝致します。そして、あなたは我らが必ずお守り致しますゆえ…どうか幸せになってください)
セオドールはシェリの存在をシェリが誕生したその時から知っていた。だからこそ、シェリを見た瞬間言いようもない愛しさと必ず守る、その気持ちで一杯だった。流した涙よりも幸せを、感じた悲しみよりも沢山の愛情を、抱いてきた恐怖よりも満開の笑顔で
どうかシェリに幸せを…
~ラシード~
セオドールがシェリを見つめている
見たことのない穏やかな顔で、セオドールをよく知っているラシードは何処か安堵していた
ふとシェリを見ると繋がれた手を見ては戸惑い、外さねばと試みるが断念し落ち込む。これを何度も繰り返していた
ラシード自身も、他人に対してこんなに愛しいと思った事は一度もなく戸惑っていたのだ
だが、繋いだ手を離す事は出来なかった
ずっとこのままでいたい。そう思ったのだ
「シェリ、よくこの森にくるのか?」
距離を縮めようと先程までの言葉とは逆に砕けた言葉を使うようにした
「えっ…あっきょ今日が初めてです…」
急に話しかけられビクッとするが何とか答える
「そうか。今日は何をしに森へ?」
「あっ…と、友達がこの森の木の実や果物を持って来てくれて…それで…」
「来てみたくなった?」
「はい…」
「ふ、そう畏まらないでくれ。来てくれて感謝している」
「え…?」
「いや、こっちの話だ」
シェリは困惑するばかりだった
「殿下、此方です」
目的の場所に着いたのか、セオドールが一本の大木の根本を指差す
そこは黒く変色しており、ラシードは慌てた様子で近寄る
「…このままでは不味いな…長くは持つまい」
もっと早く動いていればと後悔ばかりが先にたつ
根本から『竜の子』を取り出したセオドール
『竜の子』は酷く腐敗が進んでおり、まだ存在している事の方が不思議な位だ
ラシードにはなすすべが無かった
「かわいそうに…もう、大丈夫だよ」
隣にいたシェリが『竜の子』に触れた瞬間、辺りは暖かな光に包まれた。ほんの数秒の間だったが、数時間に思えた
光が徐々に収まり『竜の子』が露になったとき、ラシードは自身の目を疑った。セオドールが持っていた『竜の子』があった場所には小さな漆黒の竜がいたのだ
(これはいったい…)
目覚めようとしている力
その力は何の為に目覚めようとしているのか
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