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第一章 始まり
第五話
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何とか場所を聞き出したラシードはサルマンを護送用の馬車に乗せ幾重にも厳重な魔法をかけ帝国へと送り出す
ーーーーーーーー
「長い間ご苦労だった。」
穏やかな表情で労いの言葉をかける
「とんでもございません。ラシード様の命とあらば私はいつでも従いますゆえ」
セオドールの従順過ぎる態度にラシードは苦笑いをするしかない
「殿下がおっしゃっていた方はセオドール殿でしたか。」
「お久しぶりですね、ユアン」
「えぇ、久しくお会いしていませんでした。サルマンに一時でも使えるのは苦痛でしたでしょうに…」
まるで自分が使えていたかのように苦虫を噛み潰したように顔をしかめるユアン
「ふふっ、そんな事はないですよ?私にも目的がありましたので」
「目的…ですか?」
「えぇ…」
ひどく穏やかな表情で一点を見詰めるセオドールの視線を辿ると子供が怯えた様子で立っていた。ユアンは子供の容姿に言葉が出ないほど衝撃を受ける
髪は例えようのない綺麗な白銀、絹糸のように美しく腰の辺りまで無造作に伸ばされている。瞳は一見紫のようにも思えるが、見る角度によって様々に変わっているようだ
目や唇、鼻そのどれもが収まる所に収まっていてまさに美とゆう言葉以外相応しいものは無いだろう
ユアンは思考停止状態から回復しふとジェラルドが一言も喋っていない事に気付き隣を見る
ジェラルドはシェリを凝視したまま固まっていた
どうやらサルマンを問い詰める為に書斎に入った時点で子供に気づいていたみたいだ。未だ衝撃を受けたまま戻っていない
ユアンは分からないでもないと思いつつラシードを見る。ラシードは子供の存在に気づいておらず、未だサルマンが去った方を見つめていた
「セオドール殿、彼女は…?」
「彼女?…シェリは男の子だよ。シェリが南の森にいることはずっと前から知っていたんだけど…まさか東の森に来てるなんて。運悪くサルマンと会ってしまってね…悪戯しようと企んでいたから保護したんだよ。」
「…おっ男の子なんですか!?信じられない…」
「男だとっ!?信じられん…」
ユアンとジェラルドの声が重なる
「大きな声を上げてどうしたんだ?」
ラシードが2人の声にようやくこちらに歩いてくる
「殿下、連れて帰りたい方が居るのですが宜しいでしょうか?」
「…珍しいな、セオドールが興味を持つ者がいるとは」
「ふふ…シェリ、こちらへ」
セオドールは優しい仕草でシェリを呼ぶ
シェリは少し戸惑ったがセオドールの側まで近づいていった
「シェリです」
ラシードはシェリに視線を移すとユアン達と同様に衝撃を受ける
そしてラシードの心に『やっと出会えた』この言葉だけが浮かんでいた
ラシードはシェリの視線に合わせ
「お初にお目にかかります、私はラシード・アルドロ・ヴァンディーニと申します。どうぞラシードお呼びください」
どこぞの妃にするような挨拶だった。ラシードのこの態度にユアンとジェラルドは開いた口が塞がらない
「お名前をお聞かせ頂けますか?」
「…あっ僕はしぇっシェリと言います」
「…シェリ、美しい名だ」
「…あのっ…えっと…」
シェリはラシードに対し不思議と恐怖は感じなかった。セオドールとはまた違う安心感と心地よさを感じていた。
しかしながらまるで女性に接しているようなラシードの対応にシェリは気恥ずかしさを隠せず頬がほんのり赤く染まっている
「ぼっ僕は男ですっ!」
きっと女性と勘違いしているんだと思ったシェリは勇気を出してラシードに言った
「あぁ…先程セオドールが言っていましたよ?」
「えっ!……あっだから…」
「可愛らしい人だ」
「ふふ…殿下、シェリが困っていますよ?」
ラシードの暴走に困り果てていたシェリを見兼ねてセオドールが声をかける
「…セオドール、サルマンの屋敷にシェリがいたのか?」
「えぇ、ですが今日来たばかりで私も側にいましたのでご安心を」
「そうか…それを聞いて安心した。連れて行くのはシェリの事で間違いはないな?」
「間違いございません」
「シェリならば構わん……それよりも、『竜の子』の在り処に案内してくれ」
「畏まりました、こちらへ」
スタスタと森へ入って行くラシードの手はしっかりとシェリの手を握りしめていた
((あれは一体誰だ……殿下のあんな姿は見たことがない…))
ユアンとジェラルドはラシードの変わりようにただ驚きを隠せないでいた
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「長い間ご苦労だった。」
穏やかな表情で労いの言葉をかける
「とんでもございません。ラシード様の命とあらば私はいつでも従いますゆえ」
セオドールの従順過ぎる態度にラシードは苦笑いをするしかない
「殿下がおっしゃっていた方はセオドール殿でしたか。」
「お久しぶりですね、ユアン」
「えぇ、久しくお会いしていませんでした。サルマンに一時でも使えるのは苦痛でしたでしょうに…」
まるで自分が使えていたかのように苦虫を噛み潰したように顔をしかめるユアン
「ふふっ、そんな事はないですよ?私にも目的がありましたので」
「目的…ですか?」
「えぇ…」
ひどく穏やかな表情で一点を見詰めるセオドールの視線を辿ると子供が怯えた様子で立っていた。ユアンは子供の容姿に言葉が出ないほど衝撃を受ける
髪は例えようのない綺麗な白銀、絹糸のように美しく腰の辺りまで無造作に伸ばされている。瞳は一見紫のようにも思えるが、見る角度によって様々に変わっているようだ
目や唇、鼻そのどれもが収まる所に収まっていてまさに美とゆう言葉以外相応しいものは無いだろう
ユアンは思考停止状態から回復しふとジェラルドが一言も喋っていない事に気付き隣を見る
ジェラルドはシェリを凝視したまま固まっていた
どうやらサルマンを問い詰める為に書斎に入った時点で子供に気づいていたみたいだ。未だ衝撃を受けたまま戻っていない
ユアンは分からないでもないと思いつつラシードを見る。ラシードは子供の存在に気づいておらず、未だサルマンが去った方を見つめていた
「セオドール殿、彼女は…?」
「彼女?…シェリは男の子だよ。シェリが南の森にいることはずっと前から知っていたんだけど…まさか東の森に来てるなんて。運悪くサルマンと会ってしまってね…悪戯しようと企んでいたから保護したんだよ。」
「…おっ男の子なんですか!?信じられない…」
「男だとっ!?信じられん…」
ユアンとジェラルドの声が重なる
「大きな声を上げてどうしたんだ?」
ラシードが2人の声にようやくこちらに歩いてくる
「殿下、連れて帰りたい方が居るのですが宜しいでしょうか?」
「…珍しいな、セオドールが興味を持つ者がいるとは」
「ふふ…シェリ、こちらへ」
セオドールは優しい仕草でシェリを呼ぶ
シェリは少し戸惑ったがセオドールの側まで近づいていった
「シェリです」
ラシードはシェリに視線を移すとユアン達と同様に衝撃を受ける
そしてラシードの心に『やっと出会えた』この言葉だけが浮かんでいた
ラシードはシェリの視線に合わせ
「お初にお目にかかります、私はラシード・アルドロ・ヴァンディーニと申します。どうぞラシードお呼びください」
どこぞの妃にするような挨拶だった。ラシードのこの態度にユアンとジェラルドは開いた口が塞がらない
「お名前をお聞かせ頂けますか?」
「…あっ僕はしぇっシェリと言います」
「…シェリ、美しい名だ」
「…あのっ…えっと…」
シェリはラシードに対し不思議と恐怖は感じなかった。セオドールとはまた違う安心感と心地よさを感じていた。
しかしながらまるで女性に接しているようなラシードの対応にシェリは気恥ずかしさを隠せず頬がほんのり赤く染まっている
「ぼっ僕は男ですっ!」
きっと女性と勘違いしているんだと思ったシェリは勇気を出してラシードに言った
「あぁ…先程セオドールが言っていましたよ?」
「えっ!……あっだから…」
「可愛らしい人だ」
「ふふ…殿下、シェリが困っていますよ?」
ラシードの暴走に困り果てていたシェリを見兼ねてセオドールが声をかける
「…セオドール、サルマンの屋敷にシェリがいたのか?」
「えぇ、ですが今日来たばかりで私も側にいましたのでご安心を」
「そうか…それを聞いて安心した。連れて行くのはシェリの事で間違いはないな?」
「間違いございません」
「シェリならば構わん……それよりも、『竜の子』の在り処に案内してくれ」
「畏まりました、こちらへ」
スタスタと森へ入って行くラシードの手はしっかりとシェリの手を握りしめていた
((あれは一体誰だ……殿下のあんな姿は見たことがない…))
ユアンとジェラルドはラシードの変わりようにただ驚きを隠せないでいた
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