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第一章  始まり

第七話

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~ユアン~



何が起こっているのですか…

殿下はシェリ様を見た瞬間、人が変わったようでした。今までどんなに綺麗な御令嬢であっても軽くあしらっていらしたのに…

ましてやご自分から名前を名乗るなどあり得ませんでした。それだけはありません……手です、手

シェリ様のお手を放そうとしません。殿下が手を握っている所など見たことも聞いたこともありませんよ

衝撃的過ぎてしばらく固まってしまいました。ジェラルドも同じ気持ちだったみたいです…

セオドール殿が立ち止まった場所には大きな大木があり、根本は黒く変色しておりました

根元から『竜の子』を取り出したとき、私は愕然としました…遅すぎたのだと

殿下は何もおっしゃっておりませんでしたが、『竜の子』と聞いて分かったのです。あの古狸共が企んでいることが。もし……『竜の子』に何かあれば、わが帝国どころか……この世界が滅んでしまう。それほど重要で、我等人間が干渉して良い物ではないのです



古の書物に 

『竜の子』すなわち神の使者なり、神の子の守り人にして均衡を保つもの。その公正なる者いかなる者も不可侵と心得るべし、これを侵すもの神の怒りの裁きを受けるであろう。

神の子は父である神に願うた。我らは満たされている、神に愛され『竜の子』に守られているがゆえに。さすれば我等もこの受けた愛を返したいのだと。

神はとても歓喜した。さすればその受けた愛を注ぎたい者達に注ぐがよかろう、こうして、人間が魔力を持ち魔法を使うようになっていった。

神の子らは注いだ愛が広がり全ての者に届いた時、とても歓喜していた。だが、満ち足りてはいなかった。受けた愛をまだ返せていないと思っていたからだ。どうすれば良いか考えた神の子らは、たった一人に愛を注ぐ事に決めたのだ。

『精霊の愛し子』が生まれた瞬間だった。神の子らは神に願い出た、子が愛しい我らの子をどうか共に守ってはくれないかと。神は言った、なれば『竜の子』を与えようと。

神の子らは神に感謝した『竜の子』が傍にあれば何も心配はいらないと言う事を身を以て知っていたがゆえに  



こうして『竜の子』現るる時すなわち『精霊の愛し子』現るる時と人間の中で語られる事となったと父からずっと聞かされていました

それがゆえに『竜の子』の存在は我らにとっては重要な事なのです。決して人間が手を出してはいけない

しかし、いつの時代も傲慢で自分の事しか考えない者はいるもの、度々『竜の子』が現れたと耳にしては駆けつけた時の惨状は酷い物だったとも伝えられてきました

『竜の子』と聞いて歓喜していた数十分前の自分を殴りたい気持ちです

もっと私が殿下を支えていればと後悔ばかりで…




~ジェラルド~




数歩程前にいるユアンをみた

(ユアンの奴…)

血が滲むほどに両の手を強く握りしめている

俺だって、後悔してる。もっとラシードを手伝って、支えていればこんな事にはならなかったんじゃないかって

『竜の子』が現れた時、『精霊の愛し子』が現れる。それは国の繁栄を意味している。それなのにこんなの…

ジェラルドはユアンの方にそっと手を置くとお前のせいじゃないとお前だけじゃないとユアンに伝える

皆が諦めていた時、シェリちゃんが何かに動かされるようにラシードの手をそっと離してその手を『竜の子』に向けていた

手が触れた瞬間、光があたり一面に広がった。光の中は暖かくて負の感情が消えていくのを感じたんだ

光がおさまっていく。ふとシェリちゃんを見ると服の隙間から文様が浮かんでいるのが見えた

「…あれは」
「…?なんですか?」

もう一度見てみると文様は消えていた。

「…いや」

この光に包まれた時、不思議と『竜の子』は助かったんだと理解していた

それぞれの思いは少しずつ、同じ光の元へ集う

バラバラな思いを一つにする光は暖かく穏やかである

光を中心にまとまってい行く思いは次第に広がって行きやがて大きなものへと変わっていく

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