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アデリッサの焦り2
しおりを挟む――どうして……!?
“魅了の魔法”を使い、愛しいレーヴの心を虜にしたのに、彼は自分よりもミルティーとヴェルデを優先した。愛している女の頼みを断るなんてどうしてと憤るアデリッサは、屋敷に戻っても鎮まらなかった。
大股で私室に向かい、マティアスを呼べと通り過ぎた使用人に頼んだ。
すると。
「あの、マティアスは旦那様と今朝から登城してまだ戻っていません」
「何ですってっ!!?」
寝耳に水。
ライトカラー男爵からの要請を断れきれなかった父ナイジェル公爵が愛娘に無断で従者を魔法研究所に連れて行った。
登城したと言われただけで魔法研究所とは一言も告げられてないが、前に父がマティアスを連れて行きたいと申してきたから、行くとしたらそこしかない。
私室に戻ったアデリッサは、ソファーに座って頭を抱えた。手入れを欠かさないピンク色の髪を両手で鷲掴んだ。
「ど、どうしよう……マティアスを連れて行かれた……! い、いえ、きっと大丈夫よ。ライトカラー男爵令嬢をわたくしの取り巻きに虐められたくなかったら、言うことを聞けと脅してあるもの。下手なことは言わないわ絶対」
男爵は、優秀な魔法使いの手を借りたいと常にボヤいていると父は言っていた。マティアスは“魅了の魔法”や自分が気に入るだけあり魔法の才能に関しては優秀だ。
戻ったら、マティアスが余計なことを口走ってないかの確認と勝手に彼を連れて出た父に文句を言わないと気が済まない。
アデリッサはそう考えるだけでやっと感情が落ち着かせた。呼び鈴を鳴らし、飲み物を持って来るよう命じると可愛らしいクッションを抱いた。
「そうよ、大丈夫よ。ミエーレ様とシェリにバレていると言えど、証拠がないもの」
ヴァンシュタインの秘宝を瞳に宿すミエーレにかかれば、どんな魔法も見抜かれてしまうが王族相手に“魅了の魔法”をアデリッサが使ったなどという証拠はない。
あくまで魔法を作ったのはマティアス。
シェリに“魅了の魔法”を使う計画と共に、公に事が露見した場合の言い訳もきちんと作っている。
従者が主人の恋心を叶える為に暴走した結果だと告げたらいい。アデリッサ自身は、言われた通りの方法でレーヴと接していただけと。
身分の低いマティアスと公爵令嬢のアデリッサなら、誰もが高位貴族の令嬢である自分の言い分を信じる。
何より、父ナイジェル公爵は国王からの信頼も篤い。
破滅するのはマティアスだけ。
自分は好意を利用され、騙されただけの被害者。
「ええ。わたくしは罪に問われないわ。……ふふ、でもやっぱり、公になる前に何としてもシェリに“魅了の魔法”をかけて、レーヴ様には足蹴りにしてもらわないと」
そうすれば、この苛々も更に消化され、またレーヴと結ばれた時と同様の天国を味わえる。
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