行動あるのみです!

文字の大きさ
52 / 81

アデリッサの昏い企み2

しおりを挟む

 

 良案が浮かんだアデリッサが両手を叩いた。
 
 
「マティアス。“魅了の魔法”をもう1度作りなさい」
「一体誰を……」
「決まっているじゃない。シェリに使うのよ」
 
 
 シナリオはこう。
 “魅了の魔法”をかけたシェリが好きになる相手をレーヴに設定する。蛇蝎の如く嫌われている今のシェリが擦り寄れば、愛しいアデリッサ自分を傷付けた相手を許さないレーヴが足蹴りにする。拒否され続けたシェリは最後心を壊し、真っ当に暮らせなくなる。
 
 
「そんな……」
 
 
 シナリオを聞かされたマティアスは顔を青ざめる。残酷な計画を苦労せず思い付くアデリッサに得体の知れない恐怖を抱いた。
 第2王子に魅了を使えと命令された時は冗談じゃないと反対した。バレれば、魔法使用者であるマティアスも無事では済まない。禁忌指定される魔法は使用しようとした時点で重罪だ。
 父である公爵に溺愛され、大変我儘に育ったアデリッサから暴力と暴言の嵐を受け、渋々引き受けた。
 自身に魔法の才能があって良かったと感謝した日はない。
 極めて緻密な魔力操作コントロールを必要とする“転換の魔法”は、相手の気持ちの方向を変える。対象はレーヴとシェリ。長年婚約している2人の仲の悪さは毎日アデリッサから聞かされていた。レーヴのシェリへの嫌いな感情をアデリッサに向けさせ、更に性質“増幅”を付加することで世界で最も第2王子に嫌われる女が誕生する。
 ……筈だったのに、思惑は木っ端微塵となった。
 
 前提だったレーヴのシェリへの気持ち。嫌いどころか、人が変わる熱愛を秘めていたと誰が想像する。魔法実行日、戻ったアデリッサに凄まじい罵倒と暴力を覚悟していたマティアスは恋する乙女の顔で褒められ鳥肌が立った。
 シェリへの愛情は“転換の魔法”によってアデリッサへと向けられ、効果を“増幅”させたせいで初日から恋人同士になってしまった……。
 
 ――ああ……ぼくは……なんてことを……
 
 “転換の魔法”に解除方法はない。
 レーヴがアデリッサを嫌う日は来ない。
 レーヴがシェリを再び好きになる日は来ない。

 遠目でしか見たことのないシェリ・オーンジュ。亡きオーンジュ公爵夫人譲りの波打つシルバーブロンドに妖艶な紫水晶の瞳の、美の女神が創り上げた最高傑作の美少女。
 
 
「……わかり、ました。お嬢様の命に従います」
「ふん、最初から素直に従っていればいいのよ」
 
 
 力なく項垂れるマティアスを見下ろす栗色の瞳に激情はもう宿っていない。下がりなさい、と命じられ退室した。力ない足取りでマティアスは願う。遠くない日に必ず露見する。あのヴァンシュタインの秘宝を目に宿すミエーレが逃す筈がない。
 そうなったら抵抗はせず、積極的に捜査に協力する。命令されたといえど、魔法の使用者は自分なのだから。
 
 
 ――ごめん……マリー……
 
 
 犯罪者の烙印を押されるであろうマティアスには、もう最愛の人と会える機会は……訪れないだろう。
 
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

今更ですか?結構です。

みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。 エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。 え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。 相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました

蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。 だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています

処理中です...