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その瞳に映すのは1

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 ミエーレとの仲をレ―ヴに見せ付ける作戦と題した、昼食タイム。蜂蜜ミエーレという甘い響きの通り、彼自身も甘味が大の好物。ヴァンシュタイン公爵家が営むスイーツショップの商品の幾つかは、ミエーレ発案の物がある。
 最近は快晴が続いていたのに、今日は生憎の曇り空。これからの状況が悪くなると天候が語っているようで憂鬱な気分となる。


「シェリ」
「うん?」
「手が止まってる」


 食堂内のテーブル席。4人席を利用し、向かい合って座るシェリとミエーレ。
 シェリは焼きたて苺ジャムパン10個。昨日のミルティーを真似てみた。
 ミエーレはパンケーキ10枚重ね。トッピングは蜂蜜と生クリーム。
 2人共に飲み物はカフェモカ。どちらも生クリームたっぷり。甘味好きという部分において、2人の意見はとても合う。ミエーレの作る試作品を食べられるのも身内以外だとシェリだけ。


「今日は天気が悪いと思っただけよ」
「暫く、お日様は顔を出さないよ。明日くらいからは雨が降る」
「まあ……はあ、憂鬱な気持ちからは逃げられそうにないわね」
「はは。だったら、殿下達の空気を分けてもらえば?」


 あっち、とミエーレがナイフで示した先には、隣合って昼食を摂るレ―ヴとアデリッサがいた。距離が近過ぎる。
 レ―ヴがアデリッサに引っ付き、頬を赤らめ満更でもない様子のアデリッサ。
 何なのだあれは。


「昨日のシェリの態度が余程堪えたらしいね」
「どういうこと?」
「言っただろう。元々あるシェリへの好意をアデリッサに向けられただけって。シェリに昨日みたいに冷たくされると、相手に嫌われたと錯覚するんだ」

 レ―ヴの本心はシェリにあった。だが、矢印を強制的にアデリッサに変えられたせいで、シェリに突き放されると気持ちが揺らぐ。
 好意を抱かれていて嬉しいのに、他の女――それも、今まで散々な嫌がらせをしてきた相手との恋仲を何度も見せ付けられると心の痛みは増すばかり。


「……落ち着くまで、あの2人は見たくないわ」
「だったら――」


 途中で言葉を切ったミエーレを瞳に映した。


「おれを見てれば? 見慣れた顔を見てた方がシェリも気を遣わなくていいだろう」
「逆に、隈が濃くなっていって心配だわ」
「寝れないんだよなあ……そうだ。シェリ、この後授業サボろうよ」

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