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転換された好意3
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結果を楽しみに待っていたヴェルデには、まず1番早く話した。手放しで喜んでくれたのも束の間、アデリッサと昼食を摂ると約束すると彼は笑顔のまま固まった。
1人、時間停止を食らったみたいに。笑顔を保ったまま、口元を引き攣らせた友人は『何故……アデリッサ様なのですか……?』と分からないことを問うた。昨日の今日なら、裏庭に彼女がいると教えた本人が何を言う。アデリッサが好きだからに決まっている、兄やヴェルデのお陰でやっと前進したと言った。
『オーンジュ嬢はどうしたのですっ』
『オーンジュ? ああ、シェリのことか。何故? 彼女はずっとアデリッサに嫌がらせをしていた最低な女性なんだぞ? 僕が彼女を嫌っているとヴェルデも知っているだろう』
『何を言っているのですか殿下は!』
逆に言い返したい。
ヴェルデこそ何を言っているのだと。
何を言っても可笑しい、アデリッサに何かされたのかとまで責められる始末。いい加減嫌になって会話を強制的に終わらせた。
あの時から、皆何故か様子が変だ。
兄も父も母も友人も、誰1人祝福してくれない。
皆、頻りにシェリはどうしたと言うだけ。
形だけの婚約者。愛するアデリッサに陰湿な嫌がらせをする最低な女性。
アデリッサとも話していたが同じ公爵令嬢なら、ナイジェル公爵家の婿になっても問題ない。
……だが、どうしてだろう。
『おはようございます、第2王子殿下』
『呼ばないでいただけますか?
第2王子殿下。いくらあなたでも、婚約者でもない令嬢を名前で呼ばないでいただけますか?』
『第2王子殿下。今度こそ失礼しますわ』
『嫌ですわ。何でしたら、第2王子殿下が慰められては?』
シェリに突き放す口調で、声で、第2王子殿下と呼ばれるだけで胸が張り裂けそうになった。嫌だ、嫌だ、シェリ、冷たくしないで、僕を見捨てないで……! 無意識に手を伸ばして叫びくなりそうだったのを必死で抑えた。
「シェリ……」
愛する人と結ばれ、幸せだったのに……婚約者に冷たくされるだけで絶望に落とされる真実を……レーヴが来る日はーー
1人、時間停止を食らったみたいに。笑顔を保ったまま、口元を引き攣らせた友人は『何故……アデリッサ様なのですか……?』と分からないことを問うた。昨日の今日なら、裏庭に彼女がいると教えた本人が何を言う。アデリッサが好きだからに決まっている、兄やヴェルデのお陰でやっと前進したと言った。
『オーンジュ嬢はどうしたのですっ』
『オーンジュ? ああ、シェリのことか。何故? 彼女はずっとアデリッサに嫌がらせをしていた最低な女性なんだぞ? 僕が彼女を嫌っているとヴェルデも知っているだろう』
『何を言っているのですか殿下は!』
逆に言い返したい。
ヴェルデこそ何を言っているのだと。
何を言っても可笑しい、アデリッサに何かされたのかとまで責められる始末。いい加減嫌になって会話を強制的に終わらせた。
あの時から、皆何故か様子が変だ。
兄も父も母も友人も、誰1人祝福してくれない。
皆、頻りにシェリはどうしたと言うだけ。
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アデリッサとも話していたが同じ公爵令嬢なら、ナイジェル公爵家の婿になっても問題ない。
……だが、どうしてだろう。
『おはようございます、第2王子殿下』
『呼ばないでいただけますか?
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『第2王子殿下。今度こそ失礼しますわ』
『嫌ですわ。何でしたら、第2王子殿下が慰められては?』
シェリに突き放す口調で、声で、第2王子殿下と呼ばれるだけで胸が張り裂けそうになった。嫌だ、嫌だ、シェリ、冷たくしないで、僕を見捨てないで……! 無意識に手を伸ばして叫びくなりそうだったのを必死で抑えた。
「シェリ……」
愛する人と結ばれ、幸せだったのに……婚約者に冷たくされるだけで絶望に落とされる真実を……レーヴが来る日はーー
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