私の担任は元世界的スター

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試練

夏祭り

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私が勇気を出して「祭りに行く」と言えば、着いて来てくれたレグリー。マスコミ避ける為いつもお家デートなのに凄く心配してくれて…合流する迄に事故に合わないか不安だと言う。大丈夫って言いたかったけど、確かにボーッとする癖でよく怒られるから何も言えなかった。

祭りが行われる神社へ向かうと、葵は大きく手を振って私の名前を呼んだ。

「本当に来てくれた!」
「遅ぇよ、待ちくたびれて腹減った」
「健人さっきフランク食べたじゃん!」

普段と変わらず接してくれる健人と葵。私が「心配掛けてゴメン」と謝ると、溜息を着いたのは隼人だった。

「本当だよ、家に行くって言うから引き止めるのが大変だったんだから」
「ありがとう隼人」
「うん。俺は別に…ってそれより、隣の人ってもしかして…」

隼人の言葉に葵もレグリーの存在に気付くと、驚いた様子で健人の腕を叩き続ける。

「ちょ、えっえッ!?レグリーさんッ!!?!?」
「ちょ葵ッ痛ェ!」
「あッごめん」
「葵、驚き過ぎ」
「だってレグリーさんって、あのレオ・グリシヤさんでしょッ!?え、何で一緒に?マスコミとか良いんですか?」

興奮が冷めない葵に事情を説明すると、今度は隼人が目を輝かせ何やらソワソワしていた。まぁ隼人、レグリーの大ファンって言ってたもんな…綾城だけど。

「あ、あのっ!」
「ん?」
「迷惑で無ければ、サイン貰えませんかッ!?」
「サイン?」
「ほら、隼人は映画オタクだから」
「あぁそうだったな。何に書きゃ良い?」
「あ、えっとではコレにッ」

隼人が差し出したのは新品のノート。
まさか学校で使うやつ?

「隼人、何でノートなんて持ってるの?」
「ここに来る前に買ったんだ。数学のノート買わないとだったし」

…これ数学のノートになるんだ。

「これで良いか?」
「ありがとうございます!」

「よし、莉緒も彼氏連れて来た事だし屋台回ろうぜ!」
「私りんご飴食べたぁい!」

レグリーからサインを貰って上機嫌な隼人は「俺は綿菓子!」なんて元気に答え歩き始める。

「隼人、レグリーからサイン貰ってテンション上がったね」
「当然!」

りんご飴と綿あめを目指して歩いていると、前を歩いていた健人は突然振り返って「あーぁ」なんて声を出し私を見た。

「俺も誰かと手を繋いでデートしてぇ!」

へ?…あっ私ッ!?
私、無意識にレグリーの手を繋いでたッ!?

「ここに空いてる手有るよ~」
「葵かよ!」
「ひっど!今日は健人の奢りねッ!」
「はァッ!?何でだよ!」
「ほらほら先ずはお面から!」

そう言って健人の手を引っ張り、人混みの中へ消えて行く二人。あの二人は何時になればペアになるんだろう…

「アイツら本当に仲良いな」
「え?レグリーさん、2人を知ってるんですか?」
「あぁ、コイツから聞いた」

レグリー誤魔化すの下手じゃない?

「ねェ隼人、金魚すくいしない?」
「お、良いね!おじさん3人分お願いします!」
「俺もやるのか?」
「まさか出来ないんですか?14年前、everLoveの主役として見せたあの腕は偽物だと?」

隼人の煽りヤバっ、てかeverLoveって何、映画の話?14年前の映画とかよく知ってるなぁ…流石、映画オタク…夏休み明けて煽り返されなきゃいいけど…

「出来ないわけねェだろ」

あッ煽りに乗るんだ、負けず嫌い可愛い…

「ほらボーッとしてないで莉緒も!」
「あ、うん」

3人で並んで金魚すくいを始めたけど、コレなかなか難しいっ…私が金魚とにらめっこしていると、隣で隼人が叫び声を上げ2本目に突入していた。

「おじさんもう一本!」
「何だ、煽ってきた割に早いな」
「レグリー凄い、もう5匹?」
「コツが分かれば簡単だ」
「あぁぁぁ…また破けた」

肩を落として落ち込む隼人。
なぜ煽ったのか謎だ

「坂島、頭から狙え。こうして…」
「…こう?あっ取れた!」
「隼人凄い!1匹目!」
「莉緒、最後の要らない」
「そ?」

勝負はレグリーの圧勝で終わり、後は私だけとなった。金魚を取ろうと水面に近付けると、隼人は真面目な顔をして私に声をかけてきた。

「なぁ…」
「ん?」
「レグリーさんは何で俺の苗字を知ってたんだ?みんな名前で呼ぶのに」
「あ…」
「ねぇレグリー、隼人には話しておきたいかも…幼馴染だし」
「あぁ…まぁそうだな」
「あのね隼人…」

私が説明しようとした時、屋台のおじちゃんが「破けてるよ」と声を掛けてくれる。

「あぁぁぁ!!!最後の1個だったのに!」
「ドンマイだな」
「隼人のせいだ」
「えぇ俺?」
「まぁいっか、隼人綿あめ買いに行こ?」
「だね」

綿あめを2つGETすると、道の外れた近くの川辺で休憩する事にした。

「綿あめ、久しぶりに食べると美味しい」
「中学の時は莉緒、忙しかったし一緒に祭りとか来なかったもんな」
「だいぶん荒れてたらしいな」
「まぁね…」
「そうだレグリーさん、聞きそびれたんですが何故、僕の苗字を?それに葵や健人の事も知ってるみたいでしたし…」

やっぱ気になるよねぇ…

「あのね隼人、レグリーが綾城だから」
「え?その話は前に違うって」
「私も初めはそんな訳ないと思ってたけど、綾城の名前は?」
「あー…何だっけ」
「お前らなぁ…」
「レグリー髪縛ったら?前髪も上げてさ」
「…はぁ仕方ねぇな…これで良いか?」

レグリーが髪を後ろで纏めて見せると、いつもの気だるげな綾城だと分かるくらい見慣れた顔になる。私も初めて目の前で見たけど、人って前髪があるとかだけで、随分と雰囲気が変わるもんだ。

「わお…綾城だ」
「因みに名前はレオな?毎日顔合わせてたろ、教師の名前を忘れんな」
「えっ待って…俺、数学のノートに…」
「提出の度に落書き足してやろうか?」
「是非ッ!!!」
「嫌がれよ…莉緒、髪下ろして良いか?誰かに見られたら面倒だ」
「うん」

その後、レグリーの正体は葵達に話してない事や学校では綾城として接するというと何故か隼人は少し嬉しそうにしていた。

綿あめを食べ終え三人で祭りに戻ろうと立ち上がると、ヒューッと音が響き空が一気に明るくなる。

…花火だ!

「お、花火が始まったな」
「見に行こっか」
「けど人多いし見えるかな?」

建物の端から見え隠れする花火はごく一部で、きっとスポットへ行っても人で溢れ、木々が邪魔になる様な所しか空いて無いかもしれない…そんな不安を口にすると、レグリーは「いい所がある」と言って私達を人気の無い高台へと案内した。

「空き地?」
「あっ見て!花火よく見える!」
「本当だ!」
「レグリー、よく此処を知ってたね?」
「日本の花火は結構好きだからな。ここは見晴らしも良いし、日本に来た時に買い取ったんだ」
「か、買い取った?」
「ここ、綾城先生の土地なんですか!?」
「おう」

流石、元大物俳優…すごっ






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