私の担任は元世界的スター

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新生活

一目惚れした相手は先生でした

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「着いたのは良いが、ちょっと早過ぎたな」


イヤホンから聞こえたラジオの会話の後、少し走ると直ぐに聞こえた隼人の声。立ち止まった彼の隣へ行くと私は大きな校舎を見上げ「あれ?本当だ」と呟いた。

「いつの間に…」
「莉緒、またボーッと走ってたんだろ?危ないから辞めろってば」
「あぁうん大丈夫。風を感じてただけ」
「風?なんだそれ」

ランニング中にボーッとするのは、私の悪い癖。ラジオや流れる風景に身を任せ、走る動作すら意識なく継続して何も考える事の無い時間…まぁ、それで何度か電柱や車にぶつかって怪我をしたわけで、隼人の注意も耳にタコだ。

「それより先にクラス確認しとこ?」
「あぁ!話流したろッ!?」
「知らなーい。ほら行くよー」

私が校内に入って行くと慌てて追い掛けて来る隼人。心配は有難いが長い説教はゴメンなのだから、こうして話を逸らすしか方法は無い。




事前に聞いた案内の通りに進むと、校舎に入る手前に置かれた掲示板には、新入生のクラス分けの表がズラリと並んでいた。私と隼人は直ぐに自分の番号を見つけ、お互いの番号を探し始めた。

「あ…」
「えええぇえッ!!」

丁度、同じタイミングで相手の番号を見つけたのだろう。冷静な私と大違いな隼人は、分かりやすく驚いた声を上げれば、肩を落として落ち込んでいた。

お互いクラスが別だったのだ。

なるほど、今年は私…ぼっち確定です。


「俺、D組で莉緒はB組…離れてる」
「そうだね」
「はぁぁ、莉緒一人じゃ不安だ」
「なんでよ」
「だって、莉緒がキレたら何するか分からないだろ?もしキレたら誰が止めに入るんだ?」
「その時はその時。ってか怒らせる方が悪い」

そっか…中学じゃ喧嘩ばかりだったもんね。
いつもやり過ぎて隼人が止めてくれてたっけ…もう高校生なんだし、隼人の心配も減らせる様に頑張らないと。


そんな事を考えながら掲示板を眺めていると、背後から教師と思われるスーツ姿の男性に声を掛けられた。

「ん?お前ら早いな、新入生か?」

その声に振り向くと、目の前に立っていたのは肩まで伸びたボサボサの髪を適当に1つに縛り、だらしなく大きな欠伸をして見せた背の高い男性。

パッと見ただけでも180は超えていそうだ…
私が160だから、かなり大きく見える。

着ているスーツは着こなせているのに、凄く気だるそうで教師という事すら疑いたくなったレベル…。
けど、顔は良い。

日本人には見えない彫りの深い顔は、まさに私のどストライクだった。

そんなイケメン教師に言葉を忘れていると、隣で礼儀正しく「おはようございます!」なんて挨拶する隼人。

「まだ7時過ぎだぞ、御両親は?」
「式に合わせて来るそうです!俺らは毎朝ランニングしてて、今日は早く出過ぎちゃいました」

「ランニングねぇ…まぁそこの案内通りに行けば教室に行けっから、あんま朝から騒ぐなよ?」
「はい!ありがとうございます!」

隼人が元気に答えると、再び大きな欠伸をしてその場を去って行く男性教師。

私は遠ざかる彼の背中を見詰めながら、隼人の袖を少し引っ張った。

「…ねぇ隼人…」
「ん?」
「さっきの…先生だよね?」
「だと思うけど?あ、名前聞いてないな」

「…どうしよ」
「何が?名前なら別に後でーー」
「じゃ無くて凄くどストライク」
「あぁ顔?」
「うん」
「確かに莉緒、好きそう」

今日は話せなかったけど、次会ったら絶対に名前聞いてみようッ!!頑張れ私!!




時間も余っていた私達は掲示板から離れ、学校内を見て回る事にした。そして分かった事が1つ…この学校、無駄に大き過ぎる!!

何故か二つあるプールは御丁寧に外プールと内プールで別れ、球技と陸上用に体育館も二つ。更に裏庭には畑や田んぼも……

ここは本当におバカ高校なのだろうか?
ケチ臭い父親が選んだ学校なのだから、私立の様に高くて良い学校…な訳が無いのだが…

学校見学に来なかった私の驚く様子に、隼人が終始楽しげだったのは癪だが、これを驚かない奴がいるなら見てみたいものだ。



暫くすると人も増え始め、隼人の母親から学校に着いたと連絡を受けた私と隼人は、校門に戻り隼人ママと合流する事にした。

「隼人ォ~莉緒ちゃん~!」
「おはよ、隼人ママ」
「まぁ莉緒ちゃん制服似合ってるわ!」
「ありがと」

この親にしてこの子あり…と言うべきか
隼人と同じく元気いっぱいの隼人ママ。
しかし少し変わっていて…

「ええっと今日のスケジュールは?」

「俺らは今から8時半のクラス会だから、母さんは体育館で待機してて。んで9時に入学式開始、11時に終わって少しクラス会したら俺らも解散。昼には合流出来ると思うよ…ってこれ昨日も話したろ」
「さっすが隼人ぉ!かっしこーぃ♡」

もう一度言う。
隼人ママは変わった人だ。

不良と思われる私を受け入れて、家の事なんて聞いてこない。けどただ少し…いや、かなり抜けていて語尾に♡でも付けそうなくらい何時も機嫌よく、言ってしまえば能天気な人だ。

幼い頃からお世話になってるけど、未だにこの人の事は理解が出来ていない。


「じゃ俺らクラス会あるから」
「えぇ、二人ともしっかりね!」

私もペコッと隼人ママにお辞儀すれば、隼人と共に校舎内へと戻りそれぞれの教室へと入っていった。





教室の扉を開くと、既に何人かの男女がグループを作り群れ始めていた。私は黒板に書かれた座席表を確認し、自分の席が一番後ろだと知る。さらにラッキーな事に窓側GETだ。

少し嬉しい気分になって居ると、隣に立った一人の男子が「よっしゃ1番後ろ!」と声を上げガッツポーズで喜び始めた。

私は“賑やかな人”という印象を抱いたまま、窓側の1番後ろの席へと腰を下ろす。

すると座るや否や、先程の賑やかな男子が再び私の隣に立ち声を掛けてきた。

「その席に座るって事は俺の隣の人か?」
「…たぶん」
「俺は山崎健人!これからよろしくな!」
「よろしく…」

…この人、人懐っこい?

軽く返事を返して窓に目を向けると、直ぐに担任らしき教師が教室へ入って来る。

「おら全員、席につけぇ」

…あれ…?
男性教師の聞き覚えある声に視線を前へ戻す私。その教壇に立って居たのは今朝、気だるそうに声を掛けてきたイケメン教師だ。

担任の登場に席に戻った生徒はざわつき始める。

「ハーフかな?」
「日本人じゃないよね?」

生徒らの言う通り、スっと通った鼻筋と気だるそうな割りにキリッとした瞳。何度見ても日本人には見えないし、見惚れてしまう程にイケメンだ。

「俺の名前は綾城レオ。今日からお前らの担任なぁ。他諸々は面倒だからパスって事で、取り敢えず入学式行くか。お前らテキトーに背の順とかで廊下に並べぇ」

「先生テキトー過ぎっ」
「先生やる気無いのウケる」
「こっちも朝早くて寝みぃんだよ」
「先生の本音とか笑うんだけどっ」

やる気あるのか無いのか…そんな綾城先生は、あっという間に生徒の緊張を解し廊下へと誘導させる。


あぁ…ホント
良い顔してるなぁ…。




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