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第46話 告白(?)
しおりを挟む二人で探し物を黙々とする。
ただやはり目的のものはなく、俺たちは二人でため息を吐いた。
「俺もこの前シエルと確認したよ。でもサクヤが欲しそうな本はなかったぞ」
「やっぱそうやんなー。うーん……アテが外れてしもうたわ」
「そんなに大事なことなのか? 」
「そりゃ大事よ、何たってうちはこのために生きてきたんやもん」
「そんなにか……」
そして俺が見つけたのはあの絵本。
「神話に関してならこの絵本ぐらいだな。と言っても子ども向けだが」
「ああその本? それなら何度も読んだわ。テゼス様の話やろ? 」
「知ってるのか」
「この世界の人間なら常識よ。ヨリは知らなかったん?
」
「ま、まあな」
まさか異世界の人間だから、とは言えない。
しかしサクヤもそれ以上深くは聞いてこなかった。
ま、色々あるよな、と一人で納得してくれた。
「あー、これからどうしよなぁ。唯一の手がかりだったのに……」
「まあそう諦めるのは早いぞ。ルーナなら何か知ってるかもしれないし」
「だと良いけど」
するとサクヤは近くにあったアルバムに関心を示した。
「ん? なんやこれ」
「それは見たことないな。奥の方に入ってたのかな」
立派な装飾が施されたアルバムだ。
かなり分厚い。
「ふふ、見ちゃお」
「え、良いのか……? 」
構わんやろ、とサクヤは俺の制止も聞かずに、アルバムをパラパラとめくり始めた。
そこに写っていたのはおそらく幼いルーナの姿。母親に抱かれている写真、ピクニックの写真、おままごとをしている写真などなど。かなりの枚数がそこに収められていた。
大きなくるくるとした瞳は今と変わりないようだ。
「ふーん、この女の子がルーナさんか。確かに少し似とるかも」
「かなり愛されて育ったんだなぁ」
サクヤは写真の中のルーナを見つめ、物憂げに睫毛を伏せた。
そして不意にとあるページであ、と小さく声をあげる。
どれどれと覗き込むと、そこには見知らぬ男性が写っていた。年はおそらく30そこそこぐらいだろうか、顎に髭を生やした品の良さそうな男性だ。ルーナと仲良さそうにピースをしている。そしてこうして並んでみると確かにルーナによく似ていた。
「この人がルーナの父親か。確かに似てるな」
「ベルグさん……」
サクヤは男性の名前を小さく呼んだ。
やはりルーナの父親がサクヤが探していたベルグ=レイモンドらしい。
そしてポロポロと涙を流し始めた。
「え、お、おい。サクヤ!? 」
「……すまん。本当にベルグさんは死んでしもうたのかと思うと泣けてきてしまって……」
ごしごしと乱暴に着物の袖で涙を拭くサクヤ。
セイヤが慰めるようにサクヤの周りをぐるぐると回っている。
「ほ、ほらタオル」
泣いている女の子への対応はこれで良いんだっけ? 俺は洗い立てのタオルをサクヤに押し付ける。
するとサクヤはえへへ、と笑うと、俺からタオルを受け取り、涙を拭い始めた。
「ありがと」
「おう」
「やはりこの本の数々はベルグさんが遺したものなんやね。でもうちの欲しい本はないみたいや」
よっこいしょ、とサクヤは立ち上がる。
「邪魔してすまんかったなヨリ。うちは帰るわ」
「ああ」
俺は頷く。
そのとき、サクヤの腕に俺の手が触れた。
そして久しぶりにあの月読の神衣の能力が発動したのだ。
「うっ……」
俺は頭の中に注ぎ込まれる映像に身をよじる。
ーー鎖に繋がれたサクヤ。おそらく囚われているのか……? 汚い牢獄のような場所だ。全身は傷だらけでボロボロだ。
そして傍らにはぐったりとして動かないセイヤの姿があった。
サクヤの死んだような目、焦点が合わないままただ一点を見つめる。
「おい、こうなっちゃざまあねえな竜殺しさんよ」
「……」
「何とか言えよ! 」
ガンと看守らしき男が檻を蹴った。
「悪いがお前に助けなんて来ない。このままゴミクズのように死ぬのがお似合いだ」
サクヤは何も返事をしない。そしてそのまま俺は現実に戻された。
「ヨリ? 」
「……あ、あ」
今見たのは過去か未来か??
過去ならばもうどうしようもない。しかし未来のことならばこのまま放置しておくとサクヤは死んでしまうのだろう。
そしてサクヤに向けられた竜殺しという言葉。
信じられないが、まさかサクヤが噂の……?
「なーに、どうしたん変な顔して」
俺は思わずサクヤの手を取ると、震える声でこう言った。
「頼む、どこにも行かないでくれ!! 」
「はぁ!? 」
流石のサクヤも怪訝そうな顔をする。
「帰るってあのお店にだよな? 手がかりを探しに去るなんてことはないよな? 」
「え、ちょ、ちょっと……」
「お願いだ。俺の前からいなくなるな」
すると、サクヤが照れたように顔を赤らめた。
「あ、あのー、えっとそれってー……」
「ん? 」
「プロポーズなん? ヨリさんってば大胆ねー」
え?
プロポーズ??
そして俺はさっき口にした言葉を冷静になって思い返してみる。
俺の前からいなくなるな、どこにも行かないでくれ……。
急速に顔の熱が上がるのが分かった。
確かにこれじゃあ告白みたいなものだ。
「違う違う違う違う、これはそうじゃなくて!! いや、サクヤがいなくならないで欲しいのは本当だけども! 」
「そう否定されるとうちも傷付くわー」
「いやいやいや、あのえっと! いやなんかごめん……」
二人して慌てているとき、不意に見知った声がした。
「あのー……」
「はい!? 」
そしてそこにはきょとんとした顔でこちらを見つめるルーナ。
「鍵が開いてて声がしたから入ってみたんだけど……もしかして邪魔だった? 」
なんてタイミングだ!! と俺は心のなかで呟いた。
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