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第37話 異変
しおりを挟む金色の緩やかなウェーブを描く長い髪。
桃色の瞳をこれまたつまようじが乗りそうなほど長い睫毛がより引き立てる。
そして豊満な肉体をおしげもなくアピールしたドレスを着た美女がカウンターで微笑を浮かべていた。
「ごめんなさいね、あの子達。いつもこうして新人をからかうのよ」
「い、いや。大丈夫です」
久しぶりに同い年ぐらいの女性と喋ったからか、顔が火照るのが分かる。
しかもこうな超が付く美人、中々いない。
「子連れの冒険者なんて珍しいわね。さぁさぁ、こっちに来なさいな」
「はは……はい」
まずい、治ったと思ったはずのコミュニケーション障害が復活してる気がする。
すると手のひらにつきんと痛みが走った。
思わず身を引くと、シエルが頬を膨らませてこちらを呆れたように見ている。
「……デレデレしてますね」
「してない! してないから! 」
なお疑いの目で俺のことを見つめるシエル。
しかし俺の弁解に耳を貸すことなく、パタパタとカウンターの方へ走っていった。
「あらお嬢ちゃんも冒険者になるの? 」
「うん」
「すいません、ほらシエル。帰るぞ。ほんとにただ観光目的で来ただけなんです。ご迷惑おかけして申し訳ありません」
「あらそうなの? 」
しかし受付嬢は気を悪くすることなく、こう続ける。
「ならせっかく来たんだしステータスだけ鑑定しましょうよ。冒険者登録はしなくて良いですから」
「ええ……でも」
「大丈夫よ。減るもんじゃないんだし。それに娘さんはやる気みたいだけど? 」
ちらりとシエルに視線を移すと、もうやる気満々のようだ。キラキラとした瞳で俺を見ている。
俺はばつが悪くなり、自分の頭を掻き回す。
「……すいません。それじゃこの娘だけお願いします」
「ふふ、任せて」
受付嬢は何やら水晶玉のようなものを取り出すと、シエルの方に向き直る。
「お嬢ちゃん、この玉に触れてみてくれるかな? 大丈夫、痛いことは何もないよ」
「う、うん! 」
恐る恐る水晶玉に触れるシエル。
すると、ぱぁっとその玉が光始めた。
あまりの眩しさに目を細める俺。
シエルも驚いたのか、俺の後ろに隠れた。
「す、凄いわ……!! ここまでの輝き、逸材かもしれないわ」
そのとき
ピシピシと嫌な音がしたかと思うと、その水晶玉がボロボロと崩れ落ちてしまった。
「え? 」
流石の受付嬢も驚きを隠せないのか、口をポカンと開けたまま呆然と立ち尽くす。
「え、ご、ごめんなさい! 」
張本人であるシエルもおろおろと俺を見ている。
水晶玉は跡形もなく砕け散り、ただの砂と化している。もはや直すことは不可能であろう。
「すみませんすみません、これ、大事なものなんですよね? 弁償します」
「えーっと……その。ごめんなさいね、私もこんなことが起きたのは初めてだから驚いちゃって」
すると受付嬢はにっこりと笑顔を浮かべて、シエルと視線を合わせる。
「だいぶ年季の入ったものだからガタが来たのね。お嬢ちゃんのせいじゃないから、気にしないで」
「ごめんなさい……」
ペコペコと頭を下げるシエル。
「それに代わりはいくらでもあるから平気よ、お父さんも気にしないで下さいね」
「本当にすみません」
その言葉通り、受付嬢はまた新たな水晶をどこからともなく取り出した。
「これはこの前買ったばかりだから新しいものなのよ。これならきっと大丈夫よ」
受付嬢の人はこう言ってくれているが……。
もしかしたらシエルが竜族であることが水晶玉を破壊したのかもしれない。
そうするとおそらくこれも壊れてしまうだろう。
「いえ、大丈夫です。これ以上ご迷惑はお掛けできませんから。シエル、帰るぞ」
「……うん」
流石のシエルも堪えたのか、素直に俺の言うことを聞く。
そのときだった
グオオオオオン
と地響きのような音が外から聞こえた。
大地を這うような低い音で、まるで何かの鳴き声のようにも思えた。
「何かしら? 」
受付嬢が窓から外を覗く。
すると、酒を飲んでいた連中の一人が俺、見てきますよ。と立ち上がった。
「あら良いの? 」
「なーに、地震か何かでしょう。ソニアさんはここで待っていてください」
なるほど、この受付嬢はソニアという名前らしい。
男はかなり酔っているらしく、千鳥足で外に出ていった。
「……大丈夫ですか? 」
流石に心配になった俺が声をかけるが、ソニアはくすっと笑う。
「大丈夫よ。あれでも一応名の知れた冒険者なの」
しかし俺たちの予想を吹き飛ばすような男の悲鳴が響き渡る。
「え!? 」
その場にいた全員の顔色が変わった。
おそらく地震などではなかったのだ。
「俺たちも行きます! 」
男の仲間らしき集団が外に駆け出した。
「シエル、行くぞ」
「うん! 」
ソニアの制止も聞かずに、俺たちも外に飛び出したのだった。
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