チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

文字の大きさ
39 / 64

第38話 無双

しおりを挟む
 
「何だこれ!? 」

 空を覆っているのは無数のモンスター。
 鳥と人間を合わせたような姿をしていて、ギラギラとした赤い瞳でこちらを見ている。

「ガ、ガーゴイル……!! 」

 俺たちを追って外に出てきたソニアが声を漏らした。
 ガーゴイル……ゲームで出てくるのあれか。

 確かにどこか爬虫類を思わせるような鱗がぬらぬらと光っている。

「お、おい! 早く逃げろ! 」

「え、あの? って、その怪我は……」

 声をかけてきたのは先ほどギルドにいた男性。腕から血を流し、立っているのもやっとのようだ。

「俺のことは気にするな! 早くソニアさんを連れて逃げろ! 」

「で、でも……」

 このままだとおそらくこの男性は死んでしまうだろう。ガーゴイルという魔物はおそらく強い訳ではないだろうが、いかんせん数が尋常ではない。

 倒しても倒しても次の個体が襲いかかってくるので、キリがなさそうだ。

「このままじゃ町が壊滅する! 援軍が来るまでは持ちこたえなければならねえ! 」

 おそらく目が霞んでよく見えないのだろう、しきりに瞬きをしながら男が声をあげた。

 そしてそのとき、ギャギャギャ!!! と奇妙な鳴き声をあげて、一匹のガーゴイルがこちらに向かってきた。

「お前ら一般人は早く逃げろ! 死にてえのか! 」

 まずい、男は俺たちに話しかけるのに夢中で気が付いていない。

「危ない……!! 」

 俺が声をあげたときにはもう遅い……。
 いや、それより先に少女の小さな体が舞い踊った。

 メキメキメキッと嫌な音を立てて、そのガーゴイルを蹴り飛ばすのは……シエルだ。

 蹴り飛ばされたガーゴイルは壁に叩きつけられ、そのまま絶命した。

「シ、シエル……? 」

「……私が皆を守ります! ヨリは怪我をしている人と女の人を連れて逃げて下さい」

「そんな、駄目だ……!! シエルも逃げよう! 」

 シエルはゆるゆると首を横に振る。

「誰かがここを食い止めなければ皆死んでしまいます。大丈夫です、私は後から追い掛けます」

 さも当たり前のような口調でシエルは続ける。それに現に今も、俺と会話をしながら淡々と向かってくるガーゴイルどもを一発で殴り倒している。

「じゃあ俺もここに残る……!! 」

「見られたくないんです。戦っているとこは。……ヨリには絶対に」

 シエルはふにゃっと笑顔を浮かべてこう続ける。

「絶対に大丈夫ですから。全て倒して、ヨリたちを追い掛けます。嘘なんてつきませんよ? 約束します」

「……分かった」

 シエルは引っ張ったってここに居続けようとするだろう。 俺は重い足取りで踵を返す。
 そして傷ついた男を抱えて、放心状態のソニアにこう言う。

「行きましょう、シエルが食い止めてるうちに」

「あ……あ……は、はい」

 腰が抜けたらしいソニアを起こし、俺たちは逃げ場を求めて走り出したのだった。

◇◇◇

「くっ……数は減ったとは言えまだまだいるな。ソニアさん、どこに逃げるのが安全だ? 」

「城内です! 城の塀は堅牢で、バリアが張られています。そこに向かいましょう」

「城なら直ぐそこだな……。よし、そこにこいつを置いて行こう」

 やはり大の男は重たい。
 俺の貧弱な体では支えて引きずるのが精一杯だ。

「くっ……筋トレでもしとくんだったな」

 傷が深いのか男は気を失っている。そういえばこの人には仲間がいたはずだがどこへ行ってしまったのか?

 ……よそう、考えるのは。
 今は一刻も早く安全な場所に行かなければ。

「危ない! 」

 気をとられている内に、俺に向かってくるガーゴイルが一匹。済んでのところでソニアの放った炎の魔法がそれを防いでくれた。

「ありがとうございます」

「いえ、無事で何よりです。急ぎま……」

 ソニアの動きが止まった。
 顔色を変えて、パクパクと口を動かしている。

「どうしたんですか? 」

 振り返る俺。
 そしてそこには、親玉らしき一際大きな個体が空を悠々と飛び回っている。

「隠れて……!! 」

 ソニアの声につられるようにして、路地裏に身を潜める俺たち。
 今の状態であんなのに見つかれば終わりだ。
 
「……静かにしてくださいね。去るのを待ちましょう」

「あれがガーゴイルの親玉か? 」

 声の音量を下げて問いかける。
 ソニアはおそらく、と小さく頷いた。

「あいつを倒せば、もしかして全て解決するのか? 」

「分かりません、ですが戦力を削ぐことは出来ると思います。あ、一人であれに挑もうなんて馬鹿な考えは無駄ですよ」

「分かってます」

 俺だってそこまで馬鹿じゃない。
 しかし一刻も早くシエルのとこに行きたいのにこれでは身動きが取れないではないか……。

 だからと言ってソニアに男を託してここを離れることも出来ない。

 早くどこかへ行ってくれ、と俺は心の中で祈り続ける。早くシエルと合流しなくては。

 しかし俺の願いも空しく、直ぐそばで親玉は悠々と飛んでいる。俺たちには気がついてなさそうだが、しばらく移動する気もなさそうだ。

 そのとき

 ヒュルルルルと花火のような音がしたかと思うと、大きな火の玉が親玉に直撃した。

 グエエエエと叫び声を上げて地上に落下する親玉ガーゴイル。

「何だ!?  」

 誰がやったのか分からないけどありがたい。
 
「怯んでるぞ! 第二陣、かかれー!! 」

 勇ましい声をあげるのは……ミシェルだ。
 そうか彼女は騎士だったな。

 知らせを聞き付けて、たくさんの部下を従えてガーゴイル討伐に乗り出しているらしい。あまり顔を合わせたくはないが、今の状況では女神のように思える。

「チャンスだ、行きましょう」

 俺はソニアと顔を見合わせて頷いた。
 城門まではあと少し、シエル。頼むから無事でいてくれ。

しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

処理中です...