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第11話 買ってしまおう
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護衛を雇うと言っても、こんなこと誰に頼めば良いのだろうか……。
そもそもあまり人を信用してない俺にとっては誰かを頼るということにイマイチ気がのらない。
当たり前だが家族はいないし、友達もいない。
そもそもまだここに来て一ヶ月もたっていないので当たり前っちゃ当たり前だ。
じゃあ金で誰か護衛を雇うおうかと言っても、その手の人間には俺は偏見がある。
まあお金を持ち逃げされるぐらいなら別に良いのだが、殺されたりしてはもはやどうしようもない。
ルーナという少女は良い子ではあるが、俺の能力のことを話す気にはなれなかった。
「どうしたもんかね……」
自分の身ぐらい自分で守れよと思うかもしれないがそれは無理だ。
大体俺はただの一般人Aなのだ。暴漢どもをサクッと撃退! なんて無理な話だ。
すると、道の端で首輪をつけられ、手を拘束された少女を見掛けた。
その異様な姿に俺は思わず目を奪われる。
日本では漫画や映画でしか見掛けない光景だ。
「おら、早く歩け」
恰幅の良い男に連れられたその少女はただトボトボと歩いていた。その目に光はなく、言われるがままのようだ。
身に付けている服もボロボロで薄汚れている。
「いや、やりましたね旦那様。まさか奴隷がこんなに安く買えるなんて」
恰幅の良い男に付き従う秘書のような細い男がごまをすっている。
「ああ、それもかなりの上玉だ。俺のコレクションに入れたいな」
ニヤリとスケベな笑みを浮かべる男。そうか、この世界には奴隷という文化がまだ残っているのか。
奴隷の少女の末路を皆想像してしまったのだろう、顔を背ける人が多い。
そして俺は彼女の死んだ目と、ブラック企業に勤めていた頃の俺の姿を重ねてしまう。
「なあ」
俺は思わず男に話しかけていた。
「あ? 」
男が不機嫌そうに声を荒げる。
しかし俺は勇気を出してこう言った。
「奴隷というのはどこで手に入るのですか? 」
……クズだと思われるだろう。だが俺はただの一般人だ。貴族みたいな男に反抗して目をつけられたら溜まったもんじゃない。
それに俺は正義の勇者様ではないのだ。
ただこれだけは誤解しないで貰いたい。
俺が奴隷に興味を持ったのも、別にスケベ心からではないということだ。
そして俺は、勇気のない自分に心底嫌悪した。
◇◇◇
男はあの後、気前良く場所を教えてくれた。どうやら路地裏のマンホールから裏市場へと繋がる通路があり、そこで奴隷の売買が行われているらしい。
奴隷という制度はこの世界では違法ではないが、良く思わない者もいるらしく、解放運動など起こす人々もいるらしい。
そのため身の安全のためにこうしてこそこそ取引をしているとあの男が教えてくれた。
「あ、ここか」
俺は男の案内に従って進んでいくと、確かに怪しいマンホールがあるのを確認した。
トントンと蓋を叩くと、ニチャニチャした男の声が返ってきた。
「なんね? 」
「奴隷を買いたい。案内してくれ」
ギイギイと鈍い音を立てて、マンホールの蓋が開いた。そしてそこから枯れ木のように細い腕が飛び出したかと思うと、俺の腕を掴み、引きずり込まれた。
「……っあ!? 」
声を出す暇もなくマンホールに引きずり込まれた俺は、気が付くとスラムのような場所に立っていたのだった。
あまりにも一瞬の出来事で、まるで夢の中のようだ。
これも魔法の力なのだろうか?
「ここは……? 」
辺りには仮面を被った人が行き交っている。そして出ている出店には処女の生き血だの、悪魔の胃袋など、悪趣味なものがズラリと並んでいて、俺は思わず吐き気を催した。
どれもこれも、凝視したら吐き戻してしまいそうな代物ばかりだ。
「奴隷買うなら、これ被る」
案内人らしき男が俺に古ぼけた仮面を押し付けた。鳥を模した仮面には、血みたいな赤い液体がベッタリ付着している。
「うえ……」
しかし付けない訳にもいかない。俺は言われた通りにそれを装備し、ズンズン進んでいく案内人の後ろをただ追ったのであった。
気持ち悪くなるからなるべく出店は見ないように、そして臭いを感じないように口で呼吸をした。
そもそもあまり人を信用してない俺にとっては誰かを頼るということにイマイチ気がのらない。
当たり前だが家族はいないし、友達もいない。
そもそもまだここに来て一ヶ月もたっていないので当たり前っちゃ当たり前だ。
じゃあ金で誰か護衛を雇うおうかと言っても、その手の人間には俺は偏見がある。
まあお金を持ち逃げされるぐらいなら別に良いのだが、殺されたりしてはもはやどうしようもない。
ルーナという少女は良い子ではあるが、俺の能力のことを話す気にはなれなかった。
「どうしたもんかね……」
自分の身ぐらい自分で守れよと思うかもしれないがそれは無理だ。
大体俺はただの一般人Aなのだ。暴漢どもをサクッと撃退! なんて無理な話だ。
すると、道の端で首輪をつけられ、手を拘束された少女を見掛けた。
その異様な姿に俺は思わず目を奪われる。
日本では漫画や映画でしか見掛けない光景だ。
「おら、早く歩け」
恰幅の良い男に連れられたその少女はただトボトボと歩いていた。その目に光はなく、言われるがままのようだ。
身に付けている服もボロボロで薄汚れている。
「いや、やりましたね旦那様。まさか奴隷がこんなに安く買えるなんて」
恰幅の良い男に付き従う秘書のような細い男がごまをすっている。
「ああ、それもかなりの上玉だ。俺のコレクションに入れたいな」
ニヤリとスケベな笑みを浮かべる男。そうか、この世界には奴隷という文化がまだ残っているのか。
奴隷の少女の末路を皆想像してしまったのだろう、顔を背ける人が多い。
そして俺は彼女の死んだ目と、ブラック企業に勤めていた頃の俺の姿を重ねてしまう。
「なあ」
俺は思わず男に話しかけていた。
「あ? 」
男が不機嫌そうに声を荒げる。
しかし俺は勇気を出してこう言った。
「奴隷というのはどこで手に入るのですか? 」
……クズだと思われるだろう。だが俺はただの一般人だ。貴族みたいな男に反抗して目をつけられたら溜まったもんじゃない。
それに俺は正義の勇者様ではないのだ。
ただこれだけは誤解しないで貰いたい。
俺が奴隷に興味を持ったのも、別にスケベ心からではないということだ。
そして俺は、勇気のない自分に心底嫌悪した。
◇◇◇
男はあの後、気前良く場所を教えてくれた。どうやら路地裏のマンホールから裏市場へと繋がる通路があり、そこで奴隷の売買が行われているらしい。
奴隷という制度はこの世界では違法ではないが、良く思わない者もいるらしく、解放運動など起こす人々もいるらしい。
そのため身の安全のためにこうしてこそこそ取引をしているとあの男が教えてくれた。
「あ、ここか」
俺は男の案内に従って進んでいくと、確かに怪しいマンホールがあるのを確認した。
トントンと蓋を叩くと、ニチャニチャした男の声が返ってきた。
「なんね? 」
「奴隷を買いたい。案内してくれ」
ギイギイと鈍い音を立てて、マンホールの蓋が開いた。そしてそこから枯れ木のように細い腕が飛び出したかと思うと、俺の腕を掴み、引きずり込まれた。
「……っあ!? 」
声を出す暇もなくマンホールに引きずり込まれた俺は、気が付くとスラムのような場所に立っていたのだった。
あまりにも一瞬の出来事で、まるで夢の中のようだ。
これも魔法の力なのだろうか?
「ここは……? 」
辺りには仮面を被った人が行き交っている。そして出ている出店には処女の生き血だの、悪魔の胃袋など、悪趣味なものがズラリと並んでいて、俺は思わず吐き気を催した。
どれもこれも、凝視したら吐き戻してしまいそうな代物ばかりだ。
「奴隷買うなら、これ被る」
案内人らしき男が俺に古ぼけた仮面を押し付けた。鳥を模した仮面には、血みたいな赤い液体がベッタリ付着している。
「うえ……」
しかし付けない訳にもいかない。俺は言われた通りにそれを装備し、ズンズン進んでいく案内人の後ろをただ追ったのであった。
気持ち悪くなるからなるべく出店は見ないように、そして臭いを感じないように口で呼吸をした。
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